第 1 回 底値売りと高値掴みをしない方法とは

投資をするなら、個別銘柄に投資をしたいと考える方も多いはず。
個別銘柄投資をするなら、知っておきたい、業種別アプローチの考え方を紹介します。業種別に見るべき視点や考え方などをご紹介します。
コラム執筆:『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』の著者 長谷部 翔太郎氏(現在は更新しておりません)

第 1 回 底値売りと高値掴みをしない方法とは

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』の著者の長谷部翔太郎です。このコラムでは、日本株の個別銘柄の選択法の中でも業種別アプローチについてご紹介していきたいと思います。

まずはその前に総論を。結局のところ、2010年の東証株価指数(TOPIX)は1%の下落となって引けました。2010年4月に年間高値をつけた後、2010年8月に底を打って、2010年の年末にようやく戻ってきたといったところでしょうか。

業種別に見ると、商品市況の上昇を追い風とした石油・石炭、非鉄、中国などアジア需要の好調に支えられた機械などがパフォーマンス上位となる一方、業績好調ながら需給緩和懸念の台頭した鉄鋼などのパフォーマンスは振るいませんでした。

市場全体はほぼ横ばいとなった中、業種別にはトップとボトムで50%近いパフォーマンスの差があったことになります。この背景にあるのは、ファンダメンタルズや株価特性が業種別に異なる、という事実です。業種別アプローチというのは、こういった特性を見据えての投資法ということになります。

概して、株式投資に成功するポイントは次の2つに集約されます。銘柄選択と投資タイミング、の2つです。ただし、どちらもベストの選択をすることはまず不可能です。それらは結果を見て初めて何がそしていつがベストだったかわかるためです。過去のチャートをつらつら眺めて、「この銘柄をこのタイミングで買って(売って)いたら・・・・」と思われたことのある方も多いでしょう。それは結果論だからこそ言えることです。

現実には「これから起こるベスト」を的確に選択できる投資家というのはほんの一握り、しかも継続的にできる人は皆無といってよいと思います。四季報やチャートブックを手当たり次第にめくっても、これらの中からベストの選択はなかなか出てきません。最終的にはよくわからない銘柄をわかったような気分で直感を信じて投資してしまう、という方も多いのが現実ではないでしょうか。

しかし、ベストの選択とはいかないまでも、ベターな選択をする手段はあります。投資対象をある程度の業種に絞り込んでいくという方法です。ざっと思い浮かべるだけで、国内型産業もあれば、グローバル産業もあり、製造業もあれば、サービス業もあります。当然ながら、それら業種ごとに企業の収益特性や成長性は異なっています。三菱重工と全日空、セブン&アイホールディングスを同じ視点で比較できないことは明らかでしょう。

それぞれに利益の決定要因は違っており、注目すべきポイントも様々です。株価が企業価値を反映するものである以上、業種によって株価の特性も実は異なっているのです。それらを知っておくことで、このタイミングならばどういった業種から銘柄選択をしていくべきか、といった方針を立てることが可能となります。上場企業は東証のみで実に2300社、全国では4000もの銘柄があります。それらを一つ一つ見て銘柄選択をし、投資タイミングを計ることは現実的ではありません。特性を業種別に理解したうえで、投資のフォーカスポイントを絞り込んでいくことが、よりベストに近いベターな選択への近道になると考えます。

そもそも、投資とは将来の不確実性が前提となるもの。そのため、結果的に投資判断を間違ってしまうという事態は避けることができません。だからこそ、間違えた(と感じた)時には被害を最小限に食い止めるためにも迅速に軌道修正をする必要があります。しかし、投資対象銘柄に対する知識がなければ、何かの事態が発生してもそれが通常の範囲のことなのか、まったく異例のことなのかの区別さえもつきません。これは、間違えたのかどうかといった疑問すら持つことができないということ。

結局、日々の株価動向にのみ一喜一憂して、底値で売り叩く、高値掴みをする、といったことも招きかねない状態に陥ります。「変化」とはいとも簡単に言われるのですが、変化を「変化」だと現実に認識できることが実は一番重要なのです。当然、それらを認識するためには、少なくともどういった事業内容で、何が成長のドライバーで、競争環境はどうなっていて、個別企業はどういった戦略にあるのか、を知っておく必要があるはずです。

このコラムで紹介する株式投資の業種別アプローチは、よりベターな選択を行うためにも、また投資スタンスを臨機応変に軌道修正できる知見を持つためにも、投資家諸兄にとってより実践的であり、かつ有効な方法と考えます。幸い、昔と違って各企業は事業内容の詳細をHPなどで公開し、投資家に向けての情報発信を充実させています。業種別の大まかな特性を把握してしまえば、個別銘柄についての理解を深めることはそれほど難しくありません。本コラムがそのための一助になれば幸甚の極みです。
次回以降、より具体的な業種を取り上げて解説をいたします。

コラム執筆:

長谷部 翔太郎

証券アナリスト。日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Instititional Investors 誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開中。著書は、
『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を知っている』
『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』その他多数-----
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