米ドルはいつ買ったら良いのか

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

米ドルはいつ買ったら良いのか

 日本株相場だけではなく、外国為替相場の動向にも関心を持つ個人投資家が増えてきています。マネックス証券の投資信託の売れ筋ランキングを見ても、外貨MMFが上位に入るなど、外貨投資が活発化していることがわかります。順位を見ると円高になっている通貨の人気が高く、円高が投資のチャンスと考えている方が多いことがわかります。

投信販売額最新ランキング
http://www.monex.co.jp/FundGuide/00000000/guest/G600/trt/index.htm
 昨年の7月に「1年後は円高?」というコラムを書きましたが、将来の為替レートは、金利などによって決まります。相対的に低金利の円は、金利の高い通貨
に対して将来、円高になるように先物為替で取引されています。

1年後は円高?
http://www2.monex.co.jp/monex_blog/archives/008077.html

■ 為替の短期予想は不可能
 実際の為替相場がどうなるかを短期的に予想するのは極めて困難です。ナゼなら、マクロ経済、金融政策、要人発言、イベント、など、予測できない複雑な要素によって決定されるものであるからです。

 ただし長期的な為替レートは購買力平価(Purchasing Power Parity、PPP)によって決まるといわれます。これは為替レートが自国通貨と外国通貨の購買力比率によって決まるという考え方です。

 つまり為替の予想をするのであれば「短期で当てにいくのはあきらめて、長期で考えるべき」と私は思います。

■ 協調介入の効果
 為替のトレンドに大きな影響を与えるものとして介入があります。これは各国の通貨当局が市場で為替取引を行い、為替相場をコントロールしようとするものです。

 為替の介入についてイギリスの経済誌エコノミスト(The Economist)が最新号にコラムを書いています。正確な内容は本文を読んでいただければと思いますが、1985年からの5回の大きな為替の協調介入(プラザ合意から2000年のユーロ下落阻止まで)を検証し、正しい方法で実施されれば資金の流れに変化をもたらす強力なツールだとしています。

 正しい方法とは、金融政策との連動が条件であるということです。ドルを上昇させるためにはドルよりもユーロなどの他の通貨の金融緩和を行うことが条件です。現状、ユーロはインフレ懸念から利下げする可能性は低く、介入は効果を期待できないということになります。

「The Economist」
http://www.economist.com/finance/economicsfocus/displaystory.cfm?story_id=10924165

■ ビッグマックでもユーロは割高
 一方、実効レートで見るとユーロは1985年以降最も割高になっています。ドルは最も割安。そして円もまだ最割安圏内にいることがグラフでわかります。また、The Economistが不定期に発表している「ビッグマックインデックス」(各国のマクドナルドで売られているビッグマックの価格から為替レートを逆算して購買力平価から通貨水準を評価したもの)で見ても、同じような結果になっています(ビッグマックはあくまで目安であって、厳密な購買力平価分析ではありません。また当時の為替レートであることにご注意ください)。
世界のビッグマック(昨年7月のデータです)
http://www.economist.com/finance/displaystory.cfm?story_id=9448015
■ 経済成長率から長期投資で考える
 繰り返しになりますが、理論的には、将来の為替レートは金利差によって決まります。ただし、その前提条件としては、購買力平価が成立していること、そして各国の実質金利に差が無いことが前提になるとされています。購買力平価は長期的には成立しているとすると実質金利がカギになります。

 実質金利とは実質GDP成長率に近いと考えると、成長する地域の通貨は長期的には理論値を越えて上昇することが期待できると言えます。つまり、長期的に成長が鈍化する国の通貨を保有する場合、金利差ではなく成長率の差を考えて、外貨に資産を分散させておくことが理にかなった行動と言えるわけです。
 もし日本の実質経済成長率が海外に比べ低いと将来的に予想するのであれば、購買力平価に比べ、円高だと判断する時点で、円資産から外貨資産へ資産を順次シフトさせていくのが、運用戦略として有効だと考えます。

 割安で成長性のある国の通貨を買うということです。

今回の話のまとめ---------
■ 短期の為替予想は極めて困難
■ 協調介入があれば相場の転換点になる可能性がある
■ 長期的には購買力平価と経済成長率から外貨投資を考えるのが合理的
ではまた来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見とは必ずしも一致しません。)

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