資産配分はリスク、リターン、相関係数で決まるアート

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

資産配分はリスク、リターン、相関係数で決まるアート

 先週のこのコラムではバランスファンドの資産配分の決定方法を比較してみました。その中で一番わかりにくいのが、マネックス資産設計ファンドの戦略的アセットアロケーションです。4月1日から日本株の配分が減り、外貨資産と不動産の配分が高くなった新しい配分比率に変更していますが、どのようなプロセスで配分方法を決定しているのか、まとめてみました。

単純に比較できないバランスファンド(先週のバックナンバー)
http://www2.monex.co.jp/monex_blog/archives/008719.html

■ 最適な資産配分は3つの要素で決まる
 モダン・ポートフォリオ理論では最適な資産配分は各資産のリスク(変動率)、
期待リターン、相関係数によって決定することができます。マネックス資産設計ファンドの場合で言えば、内外の株式、債券、不動産の6つのアセットクラスそれぞれのリスクとリターン、そして6つの資産の間の相関係数がわかれば良いということになります。

 計算した結果として同じリターンならリスクが低く、同じリスクならリターンが高い組み合わせを選んだ効率的フロンティアが計算できます。

資産配分の決定プロセス(PDFファイル)
http://www.monex.co.jp/pdf/fund2/20080418_ibottoson.pdf
 
■ リスクをどこまで取るかは自分で決める
 効率的フロンティア上のどの点を選択するか、は取るべきリスクによって決まってきます。リスクをあまり取りたくない人は相対的にローリスク・ローリターンの組み合わせを選ぶことになりますし、リスクに寛容な人はハイリスク・ハイリターンな組み合わせを選択することになります。つまり資産配分とは正解が1つに決まっているのではなく、どの程度までリスクを取るか自分が決定することで変わってくるものなのです。

■ モデルには限界がある
 そしてもう1つの問題はこのようなモダン・ポートフォリオ理論の限界です。それは3つの要素の数値が事後的にしかわからないことです。理論が精緻に正しく出来ていても、インプットする数値が間違えていれば出てくる答えも正しいものにはなりません。

 完全に将来を予想することは無理だとしても出来る限り現実に近づけるためには、インプットデータの設定方法が重要になります。マネックス資産設計ファンドではビルディングブロック法などの手法を使っています。

■ ビルディングブロック法とは?
 金融商品は長期的に見るとリターンが期待できるものほどリスクが大きくなっています。そのような過去のリスクとリターンの関係からリスクに応じたリターンを推計していくのがビルディングブロック法です。

 話を単純にすると例えば、過去データで日本株式とリスクの無い資産とのリターンの差が平均で5%あったとします。その5%とは日本株の変動リスクに対するリスクプレミアム(リスクを取った見返り)と考えることができます。リスクの無い資産のリターンにリスクプレミアムの長期的な平均値を積み上げることによって将来の日本株の期待リターンを推測するのです。

 このような手法をそれぞれの国のそれぞれの資産に対して計算していきます。30年から50年といった超長期のデータで平均値を計算していくことで数字に意味が出てくるとすれば、膨大な過去データの蓄積と計算が必要になります。統計データが無く超長期のデータが入手できない不動産に関しては、代替案として配当利回りとその成長率を推計して、期待リターンを計算しています。
■ 日本株の配分比率が下がった理由
 日本株の配分比率が21%から17%に引き下げられていますが、これは相場観で変更したわけではありません。過去データからの推計値が変更され、設定された全体のリスクにおける最適な資産配分が変わったからです。

 リスクがあまり変わらず期待リターンが下がった資産は配分比率が下がることになりそうですが、外国債券のように期待リターンが下がっても配分比率が上がっているケースもあります。これは相関係数の影響によるものです。
新しい基本資産配分比率はこう変わった
http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/new2008/news804g.htm
 イボットソン・アソシエイツ・ジャパンの小松原氏が動画でこの資産配分について語っている映像も公開されています。このコラムで理解できなかった点はそちらの説明も活用してみてください。

【音声付動画】イボットソン小松原氏が解説「資産配分の決定プロセス」http://ondemand.nice2meet.us/?log_key=monex-1-cd24_9f9ae2a724c90560264e63b5703222c5

 プロセスを見るとわかるように資産配分の決定とは科学的なものではありますが、数学のように割り切れるものではありません。資産運用はサイエンスではなくアートだ、と言われる理由がここにあります。

今回の話のまとめ---------
■ 資産配分はリスク、リターン、相関係数で決まる
■ リスクをどこまで取るかは自分で決めなければならない
■ 資産運用はサイエンスというよりアートである

ではまた来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見とは必ずしも一致しません。)

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