第18回「投資対象を広げてくれる3つのETF」 【ETF解体新書】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第18回「投資対象を広げてくれる3つのETF」 【ETF解体新書】

こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。

iシェアーズのブランドで知られるETFの運用会社ブラックロックが、フロンティア株式ETF、新興国小型株式ETF、新興国債券(現地通貨建て)ETFという3つの海外ETFの届出を済ませ、マネックス証券で取引が可能になっています。今日、私たちはさまざまなETFを選択できますが、投資対象(アセットクラス)が広がるという意味で、上記3つのETFの登場には意義があると考えます。

1本目はi シェアーズ MSCI フロンティア 100インデックス・ファンド(FM)です。これまで、株式の投資対象は先進国株式、新興国株式に限られましたが、新興国群の次を担う「フロンティアマーケット」に投資が可能となります。フロンティアマーケット100指数との連動を目指す当該ETFは、9月30日時点の国別組入れ比率がクウェート約31%、カタール約15%、アラブ首長国連邦約12%となっており、上記中東三ヵ国で組入れの6割近くを占めます。また業種別で見ると金融が約56%と突出しているのが特徴です。フロンティア市場のマーケット規模はまだ小さく、一度に大きな資金が出入りすると価格が急変することがあるので注意が必要でしょう。

2本目はi シェアーズ MSCI エマージング・マーケット小型株インデックス・ファンド(EEMS)です。当該ETFは、MSCI エマージング・マーケットの時価総額下位14%を占める小型株の実績を反映するよう設計されています。私たちが普段見聞きする、ブラジルの石油大手ペトロブラスや、韓国のサムソンや、中国のペトロチャイナなどは、新興国株であると同時に「巨大なグローバル企業」です。これらの企業は国内経済の影響を受けますが、同時にグローバル経済の一翼も担っています。真に新興国経済の「成長」を捉えたいのであれば、大型株よりも「小型株」にフォーカスするのが正しい戦略であるともいえます。当該ETFの業種別組入れを見ると、一般消費財、資本財、不動産などの内需関連の比率が高くなっているのが特徴です。また、大型株のように時価総額で突出した企業がないため、個々の企業の組入れ割合が小さく、結果として銘柄分散が徹底されています(当該ETFの運用レポートを見ると、上位10銘柄の純資産額に対する組入れ比率はいずれも1%未満となっています)。

3本目はiシェアーズ 現地通貨建てエマージング・マーケット債券ファンド(LEMB)です。これまで新興国債券ETFはUSドル建てのものが主流でした。新興国の国々はかつて格付けが低く、信用力に劣っていたため、自国通貨建てよりUSドル建てなどで債券が発行されるケースが多かったのです。昨今この状況が逆転しつつあり、複数の新興国において格付け状況の改善も見られます。さらに、先進国に比して財務状況が健全であるため、今後、新興国経済の成長と共に債券マーケットが拡大することが予想されます(新興国にとっては現在よりも低利での資金調達が可能になってくるでしょう)。当該ETFに投資を行うことで、新興国18ヶ国の通貨建て債券を買い付けることになり、先進国債券より更に広範な「通貨分散」が可能になります。最後に、投資対象の拡大は私たちのポートフォリオに多様性をもたらしてくれることでしょう。

コラム執筆:カン・チュンド

晋陽FPオフィス代表 

2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。

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