第130回 ~ ケネディクス・レジデンシャル投資法人とジャパン・シニアリビング投資法人の合併とその背景について~【J-REIT投資の考え方】

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第130回 ~ ケネディクス・レジデンシャル投資法人とジャパン・シニアリビング投資法人の合併とその背景について~【J-REIT投資の考え方】

J-REIT価格は11月中旬に漸く反発の動きを示しました。東証REIT指数は11月10日に年初来安値更新となる1,605ポイントまで下落しましたが、16日から急速に反騰し21日には1,684ポイントとなりました。
価格反発の要因は、外国人投資家の大幅な買越しでした。投資家の売買動向は、2017年は9月時点では日銀を除く全ての主要投資家が売越しとなるという「異常」な事態でした。その中で外国人投資家は9月から買越し額を拡大し、11月には354億円の買越しを行っています。その他の投資家の売越し基調は続いていますが、外国人投資家から見ればJ-REIT価格は割安な水準と映っているようです。
なお日銀は11月にJ-REITの買入れを実施しませんでした。これは、年間900億円を目安としている買入れ額に対し、10月末時点で862億円まで実施済だったことが要因と考えられます。

さて今回は、11月10日に公表されたケネディクス・レジデンシャル投資法人(証券コード3278、以下KDR)とジャパン・シニアリビング投資法人(証券コード3460、以下JSL)の合併(以下、本合併)とその背景について記載していきます。KDRとJSLは2018年3月1日を効力日としKDRが存続投資法人となり、合併後の名称をケネディクス・レジデンシャル・ネクスト投資法人(証券コード3278、以下KRN)とする予定です。
また、合併比率はKDR1口に対しJSLは0.5口としていますが、JSLの端数投資主が発生するためKDRは投資口を2分割します。従って合併に伴いJSLの投資主は保有1口に対し分割後のKDR1口が割当てされる予定です。
本合併はKDRとJSLどちらの投資主に対してもメリットがあるものと考えられます。まず合併によりKRNの1口当たり分配金(以下、分配金)は2018年7月期に3,570円、2019年1月期に3,610円としています(※1)。この分配金は、合併前のKDRの2018年1月期3,400円(分割換算後)、JSLの2018年2月期3,500円を共に上回っています。
次ぎにKDRの投資家としてもメリットとして、「負の『のれん』」が発生する合併となる点が挙げられます。本合併はスポンサーがケネディクスである銘柄同士の合併ですが、同様の合併である野村不動産系及び大和ハウス工業系の場合には「正の『のれん』」が発生する形式でした。「負の『のれん』」型の合併では、その金額を内部留保することが可能です。
正確には50年以内に投資主に還元する必要がありますが、一時的にこの内部留保の取崩額を増加させることも可能です。つまり、増資による一時的な分配金の希薄化や物件売却損失の発生により分配金が減少するリスクが低減できるのです。

JSLの投資家のメリットとしては、前述の通り分配金の増加が期待できる状況に転じたことが挙げられます。また財務面でもJSLの借入金の平均調達期間は4年弱と短いものでしたが、7年弱のKDRと合併することで借換えにより金利上昇リスクを低減することが可能となっています。
本合併の背景に、JSLの外部成長は困難な状況が続いていたことがあると考えられます。JSLの価格は、本合併の公表前には1口当たり出資額183千円を大きく下回る状況で推移し、増資が実質的には難しい状況でした。
またポートフォリオを構成するシニア住宅は低い利回り(高い不動産価格)での取引が続いているため、ディスカウント増資を行って分配金水準を維持することも困難です。一方でシニア住宅は、運営リスクを抱えるため外部成長により物件の分散効果を高める必要があります。従って投資家のリスクを軽減するためにも、JSLにとって本合併は必要であったと考えられます。
本合併は、価格動向を見る限り投資家にも評価されているようです。11月にJSLは15%、KDRは10%を超える価格上昇となりました。それぞれ月間の騰落率は、第1位と2位となっています。
ただし、KDRの価格上昇が続くと前述の「負の『のれん』」の金額が減少する懸念があります。合併説明会資料(※1)では負の『のれん』発生額は32億円強としていますが、これは10月31日時点の価格を基に試算された数値です。前述の通りJSLの1口当たり出資額は183千円であり、合併比率を考慮するとKDRの価格が366千円を超えると単純化すれば負の『のれん』が発生しない合併となります。負の『のれん』による内部留保発生をメリットと考える場合には、KDRの価格水準に留意する必要がありそうです。

※1:合併説明会資料2017年11月13日に拠る。

コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介

<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

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