第58回 「米企業の資金還流は株高要因に」

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第58回 「米企業の資金還流は株高要因に」

米国株の上昇が止まりません。前回の本欄ではダウ平均の上昇のスピードの速さを指摘しましたが、そのスピードはさらに加速しています。今週はとうとう史上初めて26,000ドルの大台を突破しました。25,000ドルを超えてからわずか8営業日での到達です。さすがに速すぎる気がします。とはいえ、1万ドル台の1,000ドルと、2万ドル台の1,000ドルでは意味合いが違いますので、単純比較はできません。それでも強いことに変わりありません。市場は世界経済の順調な拡大と米国企業の業績拡大期待を背景に買っていると考えられます。現在は米主要企業の決算発表が行われていますが、トムソン・ロイターによると、米主要企業の2017年10~12月期の純利益は約12%の増益が見込まれています。このような見方もあり、株価は業績拡大を織り込む動きが強まり、市場が懸念する株価の割高感は払しょくされることになるでしょう。

現在の市場環境を背景に、投資家は株式市場に対してきわめてポジティブな見方をしています。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BAML)による最新の機関投資家調査では、大方の投資家が株式市場の強気相場が2019年まで続くと予想しています。前回の調査では、大方の投資家は株式市場が2018年第2四半期にピークを打つと予想していましたが、今回はその時期が2019年あるいはそれ以降に後ずれしています。さらに、株式への資産配分はネット55%のオーバーウエートで、2年ぶりの高水準を記録しました。一方で債券への資産配分はネット67%のアンダーウエートとなり、4年ぶりの低水準となっています。また、キャッシュ比率は4.4%で12月の4.7%から低下し、5年ぶりの低水準を記録しました。投資家の多くが株式への投資を拡大しています。しかし、やや行き過ぎの感もあり、今後の株価動向の変調では、大量に売りが出て、一時的に下げる可能性はあり得るでしょう。とはいえ、長期的な基調に変化が出るとは考えていません。景気はあと2年程度拡大し、株価も2019年後半から2020年まで堅調に推移するでしょう。低金利が企業業績や株価を支える構図が続く一方、トランプ政権のインフラ投資が経済を支えると考えています。

今週は、アップルの発表に注目が集まりました。今後5年で米国内に300億ドルを投資する計画を発表し、その一環としてカリフォルニア州クパチーノに続く2カ所目のキャンパス(本社施設)を開設するとしています。また、海外で保有しているキャッシュを還流させ、380億ドルの税金を支払う予定です。海外保有キャッシュの総額は2,523億ドルで、米企業としては最大額とみられています。アップルによると、新たな投資によって現在のキャンパスと新キャンパスの合計で2万人の雇用が生まれる見通しです。アップルが今年に世界で予定している投資額は160億ドルで、このペースが5年続けば、米国向け投資は全体の3分の1程度になる見通しです。このような動きに他の米企業も追随するとみられており、これが雇用拡大につながる可能性があります。一方、資金還流でドル高になるとの見方もありますが、資金の多くが米国債で保有されているようです。つまり、すでにドルになっていることになり、むしろ現金化のために国債を売れば、利回りが低下することでドル安になる可能性があります。ドル安はアップルなどの多国籍企業には収益増になります。この点からも、さらに米国株が押し上げられると考えることができそうです。

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江守 哲
エモリキャピタルマネジメント株式会社・代表取締役
大手商社、外資系企業、投資顧問会社等を経て独立。コモディティ市場経験は25年超。現在は運用業務に加え、為替・株式・コモディティ市場に関する情報提供・講演などを行っている。
著書に「1ドル65円、日経平均9000円時代の到来」(ビジネス社)
「LME(ロンドン金属取引所)入門」(総合法令出版)など
共著に「コモディティ市場と投資戦略」(勁草書房)

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