マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
北京の空港の混雑については、本コラムでも何度かご報告しております。航空便の需要をほぼ一手に賄っている首都空港は、東京の羽田空港と同様、発着枠を使い切っている状況で、中国でも成長を続けているLCC(格安航空会社)の参入余地が無く、運賃に価格競争が働いていません。
複数の空港を擁し、安価な航空券が豊富に販売されている上海や台北の人がうらやましく思えます。
最も混雑する時間帯には、離着陸の間隔が最短で49秒になっているそうで、離陸待ちの便が滑走路の手前で数珠つなぎとなる光景も日常茶飯事です。
中国政府で民間航空を管轄する民用航空局はこのほど、北京市と、隣接する天津市及び河北省の主要空港を一体的に管理運営し、各空港の位置づけを明確にする方針を決定し公表しました。
それによると、現在北京首都空港発着便の28%を占める、北京と中国国内の二線都市、三線都市を結ぶ便について、天津市の濱海国際空港と、河北省の省都である石家庄市の正定国際空港に移転させ、あわせて天津には貨物便を、石家庄にはLCCの便を集約するとのことです。
北京首都空港は、これまで以上に国際線に比重を置いた運営を行う予定です。
北京と天津は高速鉄道で30分ほどで、また北京と石家庄は同じく1時間強で結ばれているのですが、それぞれ市内の駅から空港までの移動時間も必要で、現状、利便性には問題もあります。
また、高速鉄道の運賃は中国の物価水準を考えると高価で、北京市民の国内線需要を天津や石家庄に移すことは容易でないものと思われます。
民用航空局の幹部は、将来北京と天津の両空港を直接結ぶ高速鉄道を整備する計画であると述べており、地上交通手段の利便性が向上すれば、民用航空局が目指す広域での空港の棲み分けと共存が図られそうです。
2019年には、北京市の南部に大興国際空港が開業する予定で、北京の空港の容量が大幅増となります。
民用航空局は、北京の空港について、首都空港、大興空港ともに、増加する国際線の需要をカバーすることを優先させる計画です。
実際、首都空港を発着する国際線を見ますと、アジア、ヨーロッパやアフリカへの便は充実しているものの、北米向けの便は羽田や成田発着便と比べ、非常に少ない状況です。
北京から成田で乗り継ぎ、アメリカやカナダに向かう乗客も多く目にします。大興空港の開業後は、北米路線やハワイ向けの便が大幅に増加し、中国に本格的なハワイブームが訪れることも予想されます。
中国人観光客が本格的に進出してくれば、現在手厚いとされるハワイの日本人向けのサービスも先細りが避けられません。
「ハワイに行くなら今のうち」でしょうか。
さらに、北京の空港のキャパシティが拡大すれば、欧米の航空会社が「北京シフト」を強め、日本就航便の減便に踏み込むことも懸念されます。
淋しい話ではありますが、将来、日本の地方都市から欧米へのフライトは、北京経由が普通になるかもしれません。
国土交通省や主要空港には、外国航空会社の引き留めのために、有効な方策を打ち出すことを望みたく思います。
空港整備の状況に、各国あるいは都市の潜在力や成長性が反映していることを痛感させられる話題でした。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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