マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
・一般顧客にもカスタマイズされたサービスを
フィンテックの中でも特に資産運用サービスに特化した分野をロボアドバイザー(以下、「ロボアド」)と呼びます。オンラインで、誰でもいつでも、簡単に小口・低コストで世界に分散投資ができるのがサービスの大きな特徴です。お客様一人一人のニーズにカスタマイズされた資産運用サービスは、機関投資家(年金基金や金融機関など)や一部の富裕層に対しては当たり前に提供されていました。高いコストをお客様が負担できることが条件だったからです。
金融理論やテクノロジーが進化することによって、こうしたサービスをマスリテール市場でも実現できるようになりました。それがロボアドです。今でこそロボアドという用語は経済系メディアでは頻繁に目にするようになってきましたが、言葉自体はまだまだ新しく、実際インターネットで検索されるようになったのは2015年後半ぐらいです。一般紙などではまだほとんど見ることがありません。
・2016年が「ロボアド元年」
アメリカではリーマンショック直後の2009年頃にはロボアドは誕生していました。日本では、2014年11月に「お金のデザイン社」がETFラップというサービスをリリースしたのが始まりです。その後も、2015年に2サービス、2016年に15サービス、2017年に6サービスのロボアドがリリースされました。わずか3年の間に24種類ものロボアドが次々と登場したので、そろそろ「ロボアドのロボアド」が出てくるのではないかという冗談すら出始めています。このように多くのロボアドがありますが、ある程度分類することができます。
・アドバイス型と投資一任運用型
ロボアドを大きく分けると、「アドバイス型」と「投資一任運用型」に大別されます。アドバイス型は、お客様が耐えられるリスク水準をいくつかの質問によって測定し、そのリスク水準の下で最適な資産配分を提示します。お客様は提示された最適な資産配分に応じて自分自身でしかるべき金融商品を選ぶ必要があります。一方で投資一任運用型は、その名前が示すように最適な資産配分を提示するだけでなく、各種金融商品への投資決定もロボアドに任せることができます。また、運用開始後に市場環境が大きく変化し、当初の最適資産配分から乖離が生じた場合は自動的にメンテナンスもしてくれます。
アドバイス型ロボアドは「カーナビ付自動車」、投資一任運用型ロボアドは「完全自動運転車」と言えるかもしれません。カーナビ付自動車は、カーナビが目的地までの最適なルートは教えてくれますが、実際に自分自身で運転する必要があります。一方で完全自動運転車は、目的地を設定すれば自動的にそこまで連れて行ってくれます。その分、コストは投資一任運用型がアドバイス型より高いということになります。これは「完全自動運転」機能があり、メンテナンスなどのアフターフォローも充実しているからです。
ロボアドを提供する運営会社でも分類することができます。大きく分けると、ベンチャー系、ネット証券系、アセットマネジメント系、銀行系、証券系があり、それぞれの母体に応じたサービスの特徴があります。投資一任運用型ロボアドについては、主にベンチャー系とネット証券系が提供しています。
・2018年が飛躍の年になるか
2017年までで一通りロボアドは出揃ったと言えそうです。2018年にかけて注目されるのがロボアド業界自体の成長力です。昨今のトレンドに乗っているサービスと言っても、ロボアド業界全体での運用残高はまだ1,000億円にも満たない小さなものです。ロボアド業界の成長の起爆剤として期待されるのが、投資一任運用型ロボアドと地域金融機関(地銀や信金など)との提携拡大です。少子高齢化でますます経営が厳しくなる地銀などでは、今後の収益の柱として資産運用ビジネス(特にラップビジネス)に力を入れようとしていますが、系列のアセットマネジメント会社を持っていないため自前でロボアドを開発することが困難です。そこで、どこかの企業と提携する必要があるわけですが、有力候補となっているのが投資一任運用型ロボアドを提供するベンチャーやネット証券です。
2018年は、地方では絶大なる信頼と安心感がある地銀や信金の販売員がロボアドという最先端のテクノロジーを使って対面でコンサルティングをしている光景が当たり前になる年になるかもしれません。こうした人間とロボアドの融合はアメリカですでに起きており、日本のロボアド業界の未来を示唆しています。人間とロボアドの融合は、「ハイブリッド型ロボアドバイザー」と呼ばれています。ロボアドは人間を介さないことで低コストを実現していますが、極めてプライベートなお金にまつわる相談はインターネットだけでなく、やはりヒトを通じて行いたいというニーズはあります。ハイブリッド型ロボアドバイザーはコストを抑えながら、人間からアドバイスをもらえるのです。いずれにせよサービス提供側が「顧客本位の業務運営」すなわち「ユーザーセントラル」を徹底しなければ、最終的にはお客様に見放されていくでしょう。
<筆者プロフィール>
野水瑛介(のみず・えいすけ)
1986年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、JPモルガン・アセット・マネジメントに入社。銀行や証券会社を担当する投資信託営業に従事。その後ロンドンオフィスに駐在しジャパンデスクとして東京オフィスとのリエゾン業務を担当。帰国後、当時最年少でチームマネージャーに就任。2016年2月にマネックス・セゾン・バンガード投資顧問に参画。オンライン投資一任運用サービス「MSV LIFE(マネックス証券での愛称:マネラップ)」https://www.msvlife.jp の開発責任者に就任し、2016年9月17日にサービスをリリース。「ゴールベースアプローチ」に基づき、「資産運用のあたりまえをあたりまえに」するべく、執筆や講演活動を展開中。
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