第290回 NZドルの逆襲、巻き返しどこまで【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

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第290回 NZドルの逆襲、巻き返しどこまで【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

大きな下落に見舞われていたNZドルが巻き返しに入っています。

9月23日のNZ総選挙で第3党となったNZファースト党は10月19日、第2党の労働党と連立を組むことを公表。労働党政権が誕生することで、NZは9年ぶりの政権交代となったのですが、新政権の政策方針の中あった「中央銀行法の改定」が為替市場で嫌気されNZドルの下落が続いていました。

通貨先物市場の投機筋(ヘッジファンドなど)のポジション動向を確認すると、NZドルは10月31日のデータから売越しに転じ、7週連続で売越しとなっています。為替市場全体のボリュームから見れば通貨先物市場の取引はほんの一部ですので、このデータが示すトレンドが全てではないのですが、今回の場合、政治リスクが生じた後に発生した大きな下落トレンドでしたので、少なからず投機筋の売りが価格に及ぼした影響は大きかったと思われます。

9年ぶりの政権交代で何故NZドルが売られたのでしょうか。
労働党はニュージーランド準備銀行(RBNZ)の政策目標に「物価の安定」だけでなく「完全雇用の達成」を追加することを求めており、NZファースト党はインフレ・ターゲット制を廃止し、NZドル相場の安定を重視した金融政策への移行を提唱しています。雇用の達成までをRBNZが担うとなれば、物価だけを見て金融政策を決定することが出来なくなります。

これまでNZドルは、NZの貿易収支に占める割合の大きい乳製品の価格動向や消費者物価指数などのインフレ指標で大きく動く傾向がありました。物価をコントロールするには、伝統的な金融政策である金利の調整が必要となるという思惑があるためです。現在、NZの政策金利は過去最低の1.75%。過去最低とはいえ、金利があるということは、利下げも可能です。政策金利を引き上げる、あるいは引き下げるという伝統的金融政策でのインフレコントロールが可能な状況ですね。つまり、NZは物価上昇が顕著になってくると、RBNZの利上げの思惑が高まりNZドルが買われるというような予想が成り立つということだったのですが、10月17日に発表された第3四半期のCPIの数字が、予想+0.4%のところ+0.5%といい数字であったにもかかわらず、NZドルが買われることはありませんでした。第2四半期の数字はゼロ。+0.5%は大きく物価が動いているという数字だったにもかかわらず、です。物価の安定だけでなく、雇用の安定までをも中央銀行の責任とするとした新政権の政策への不安が現れた格好で、NZドルはインフレ指標に反応して上昇することが出来なかったのです。

そのNZドルが先週、対円では約1か月ぶり、対米ドルで約2か月ぶりの高値を記録しました。NZ政府がRBNZの次期総裁にエイドリアン・オア氏を指名したことがきっかけとなりました。

オア氏は、2003年から2007年までRBNZ副総裁を務めていた実力者。しかも現在はNZの公的年金基金であるスーパーアニュエーション・ファンドの責任者です。スーパーアニュエーション・ファンドは世界で最も成功している公的基金の1つで、2001年設立以来の年間リターン平均は10.2%。公務と民間でのエコノミストとしての経験が豊富であるオア氏の就任で、RBNZの今後の金融政策への不透明感が薄れたことがNZドル買戻しの大きな材料となりました。RBNZ副総裁を務めた経歴から市場は、オア氏は物価目標を重視し、雇用に配慮したハト派的な政策運営をしないのではという期待も織り込み始めています。

オア氏のRBNZ総裁就任は2018年3月27日。オア氏の手腕はそれ以降でないと確認できないのですが、市場というものは材料を早めに織り込んでしまうもの。現実にどのような金融政策をとるのかは解りませんが、これまで政治の混乱とRBNZの独立性の危機から不当に売りこまれすぎたNZドルが巻き返すトレンドの過程で、通貨先物市場のポジションが売越しから買越しへと転じる可能性もあるのではないか、と思っています。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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