第245回 AIIBが北京市での都市ガス普及のため融資を実施 【北京駐在員事務所から】

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第245回 AIIBが北京市での都市ガス普及のため融資を実施 【北京駐在員事務所から】

中国が主導し、2015年に鳴り物入りで設立されたアジアインフラ投資銀行(AIIB)ですが、運営に透明性を欠いている、あるいは融資実績がなかなか上がらないなどと批判を受けています。
中国が提唱する「一帯一路構想」との関係性も指摘され、中東や北朝鮮の情勢を巡り米国が内向きの傾向を強める中、中国の台頭を警戒する声も聞かれます。

そのAIIBが、このほど北京市で都市ガスの供給を担う北京市燃気集団に、2億5,000万米ドル(約281億円)の融資を行うことを決定しました。
AIIBによる、中国企業向けの初めての融資案件になるそうです。
主に、市郊外の農村地帯で都市ガスの供給網を整備し、22万戸の住宅で暖房と調理の熱源を石炭からガスに切り替えることを目指しています。
この切替により、大気汚染物質の排出抑制が期待されています。

北京や東北部の主要都市で深刻化する大気汚染を受け、政府は石炭から天然ガス等ヘの切替を重要なプロジェクトと位置付け、積極的に推進しているのですが、一方で石炭の産出は長きにわたり国の重要産業となっており、未だに多くの労働者を抱えています。地域によっては、経済の需要な柱にもなっており、急激な「石炭離れ」は地域経済と雇用に深刻な影響をもたらします。
中央政府も、また産炭地を抱える地方政府も、難しいかじ取りを迫られています。

AIIBの金行長(総裁)は、本融資案件の意義について、大気汚染や地球温暖化の防止につながり、中国のみならずAIIB加盟国の持続的発展に寄与することができると評価しています。
また、社会科学分野の研究機関である中国社会科学院の研究者は、本件をきっかけとして、国際的な金融機関が環境保全につながるインフラ事業に融資を行うケースが増えることに期待を示し、中国の民間金融機関が、成長減速で収益力が低下し超長期の融資に及び腰となっている状況下で、AIIB等が長期、低金利の融資を行うことがふさわしいと述べています。
AIIBが融資実績を積み上げ、地域経済や雇用への悪影響を回避しつつ大気汚染の軽減を実現することができるか、今後数年間の動きが注目されます。

中国は、石炭こそ豊富に産出されますが、天然ガスは輸入に頼っており、エネルギー分野の専門家は、住宅等への供給網の建設に加え、貯蔵施設の整備や調達先の多様化を進め、供給不足が生じないよう備える必要があると指摘しています。
牛肉や大豆でも言われていますが、中国で需要が拡大することで、世界市場での需給や価格形成に大きな影響が生じます。
中国で石炭から天然ガスへの切替が進むことは、地球環境の保護という観点からは歓迎すべきことですが、他国と天然ガスを奪い合うような事態は回避して欲しいと願うのみです。
一方、世界情勢を見ますと、今後も米国が内向き志向を強め、その空白を突く形で中国が台頭することは避けられないものと思われます。AIIBに欧州や中南米、さらにアフリカ諸国がこぞって参加しているのも、中国との経済的なつながりを重視している、あるいは無視できないことの表れです。今後、AIIBが中国の利益を代表するような動きを見せるのか否か、注視を続けるべき課題と思われます。

石炭から天然ガスへの切替と言う、環境保護に係る問題にも、地域経済や国際情勢が密接に絡み合っていることを改めて認識させられる話題でした。

本コラムの2017年の配信は本日が最後となります。本年もご高覧いただき、誠にありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
どうぞ良いお年をお迎えください。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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