第15回 株価指数に騙されるな!時価総額のグラフと配当金で見えてくる世界/米ドル円に変化の兆し【マーケット万華鏡】

投資の考え方からマーケット動向、そしてツールの使い方まで、その時々で万華鏡のようなカラフルなテーマを、マネックス執行役員営業部長臼田琢美がお届けいたします。

第15回 株価指数に騙されるな!時価総額のグラフと配当金で見えてくる世界/米ドル円に変化の兆し【マーケット万華鏡】

日経新聞の記事によると、日本株は配当金込みの指数で見ると27年ぶりの過去最高値水準にあるとのこと。

『日本株、実は「最高値」迫る 配当、バブル期の6倍』(注:日経新聞電子版の会員限定の記事になります。会員でない方は、冒頭部分のみ閲覧いただけます。なお、会員登録を推奨するものではございません。)

配当を含まない、いわゆる普通のTOPIXの最高値は1989年12月18日の2,884.80。そして2017年7月13日終値は1,619.11。未だ高値の56%程度に過ぎません。この記事で取り上げられているのは、この普通のTOPIX(配当金を含まない)に、配当金を加味したトータル・リターンで算出された「TOPIX(配当込み)」です。

TOPIX(配当込み)は7月11日時点で2,346.03。過去最高がいくらなのか記載は無く、インターネットで検索しても見つけられませんでした。ちなみに月次ベースでの直近値等は、 「配当込み株価指数の期間投資収益率」に掲載されています。

こちらのグラフにあるように、日本企業の配当金の額は増加傾向で、特に10年程前から大きく増え始めました。設備投資をはじめとする実物投資と、株主配分である配当金の額が同程度というのは、将来の成長を考えると不安も感じますが、少なくともこれまで株価指数は大きく上昇していなくても配当金込みのトータルで見ると日本株は保有する価値が高かったと言えます。

配当利回りも今では米国株と同等の2%程度まで上昇し、様々な面で世界標準に収斂されてきたことがわかります。日本株マーケット全体の指標のチェックは こちらの日経新聞のページが便利です。

法人企業統計財政金融統計月報第774号
≪エクセル ダウンロード≫法人企業統計年報特集(平成27年度) 2.損益及び剰余金の配当の状況 全産業/MS-Excel
お時間のあるときにでも、様々な統計データを見てエクセルでデータの推移や比率をチェックしたりするのも面白くてオススメです。例えば上記は、過去10年全産業での売上高は1,400兆円前後で大きくは変わっていないですが、売上原価は1,200兆円から1,000兆円程度に下がり、営業利益は増加していて企業の努力の跡が分かります。当期純利益に占める配当金の割合である配当性向は、内部留保の持ち出しとなった平成20~21年度を除けば50%前後で、 ≪エクセル ダウンロード≫バブル期平成元年前後の30%程度とは明らかに様変わりしています。そして先ほどのコストダウンで内部留保を増加させているのも分かります。

このように株価指数だけ見ていては分からない実情があることが分かります。例えば、日経平均2万円。バブル時の過去最高値の半分程度です。ところが東証1部の時価総額は、1989年12月末590兆円に対し現在は609兆円です。しかも先ほどの記事によると、1990年以降の大企業全産業の配当金総額は163兆円とのこと。株価指数とは全く違う世界に見えますね。
市場別時価総額(1949年5月以降各月月末データ)

余談ですが、日経平均2万円も分かりやすい節目ですが、私はそれ以上に時価総額600兆円というのを一つの目安にしています。以下のグラフを見れば一目瞭然、この水準をしっかりと上回り増加傾向を作れるかどうか?の方が、例えば日経平均2万5千円よりも重要だと思います。まぁ163兆円の配当金も考えればこれすらあまり意味ないのかもしれませんが(笑)
ぜひ、マーケットも個別企業も株価などだけでなく、様々な側面から眺めて分析してみてください。

20170714_usuda_graph01.png

◆マーケット動向

日経平均。
特になし、変わり無し。


20170714_usuda_graph02.png

米ドル円。
6月半ばから続いていたドルの強さが一服。リンダ・ラシュキのMACD下向き転換。勢いに陰りが。日経平均のボリンジャーバンドと比べて米ドル円のそれは膠着期間がほとんどなく、もみ合わず1ヶ月程度はトレンドが続くパターンが多いだけに要注意。

20170714_usuda_graph03.png

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万華鏡はいくつものスコープスタイルとミラーシステムの組み合わせで、様々な美しい模様を作り出しているそうです。投資やマーケットにおいても様々なスタイルやシステムで異なったアプローチが可能ですし見える風景も違ってきます。色んな人が資産運用を行う上で固定観念にとらわれずマーケットや情報サービスやツールや手法等を活用するヒントをお伝えしたいという思いで「マーケット万華鏡」と名付けました。投資の考え方からマーケット動向のお話やツールの使い方まで、その時々で万華鏡のようなカラフルなテーマをお届けできればと思います。

万華鏡の種類

http://www.brewster.co.jp/type/

コラム執筆:臼田琢美 マネックス証券株式会社 執行役員営業部長

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