賃貸か持ち家か。様々議論の分かれるところではありますが、ファイナンシャルプランナーの岩城みずほさんに住宅ローンの考え方について解説いただきます。「注文、分譲、中古、或いは戸建て、マンションといった形態による違いはありますが、住宅購入の平均年齢は39歳〜45歳くらいです。(国土交通省 平成27年度住宅市場動向調査より)今回は、44歳の独身女性A子さん(会社員)が住宅を購入した場合の家計について考えてみましょう。」

40代の住宅ローンの考え方

住宅ローン返済額は今の家賃分までOKは間違い

外資系メーカーに勤めるA子さんは、現在、目黒区在住で、月13万円の1LDKのマンションに住んでいます。年収は860万円(現在の手取りは680万円)、コツコツと貯蓄を続け、「現在貯蓄額」は2000万円です。
まずは、「今後の平均手取り年収」を640万円として「人生設計の基本公式」で「必要貯貯蓄率」を求めてみましょう。

必要貯蓄率はこちらで計算することができます。

「年金額」180万円、「老後生活比率」0.7、「現役年数」21年、「老後年数」30年、「現在資産額」は退職一時金の見込額600万円を加算して2600万円として計算すると、「必要貯蓄率」は、「20.24%」です。年間約129万5千円、毎月約10万8千円貯蓄していけば、老後は、今の生活の7割の月額約29万8000円で安心して暮らすことができます。

では、マンションを買った場合について考えてみましょう。頭金を1000万円支払ったとして考えます。「現在資産額」から1000万円を引くと、「必要貯蓄率」は、「23.96%」です。年間約155万3千円、毎月約12万8千円の貯蓄が必要になります。老後生活費は、月額約28万4000円です。 住宅ローンを支払いながら、手取りの2割強の貯蓄をする必要がありますので、購入金額を大きくしすぎてしまうことには注意が必要です。家を購入する時、住宅ローンの返済額を、「今の家賃分くらい」と考える人が多いのですが、それは間違いです。
マンションを買うと、ローンの返済以外に、固定資産税、管理費、修繕積立費など、ローン以外に必要な住居費がかかります。
首都圏新築マンション契約者動向調査(リクルート調べ)では、「管理費+修繕積立金の平均は月2万1535円」ということです。これを参考に、固定資産税を加算した「ローン以外に必要な住居費」を約50万円として、仮に家賃を13万円として計算すると、

(年間家賃156 万円 — ローン以外に必要な住居費50万円)÷12ヶ月=8万8333円

無理のない毎月返済額は、約8万8千円までということになります。もちろん、必要貯蓄率を達成しながら、他の支出を抑えることで、返済額を増やすことも可能です。A子さんの場合は、返済額を11万円まで増やすことが可能だということになりました。ここから購入可能な物件価格を考えます。
毎月11万円の返済額として、A子さんの現役年数は21年なので、退職までにローンを返済し終わるように、固定20年、金利1.15%として計算すると、借入れ可能金額は2357万円になります。頭金1000万円入れるとして、物件価格は3300万円です。

年金効果は住宅ローン完済後

しかし、家を買う効果は次のように考えることもできます。家を購入することなく、リタイアメント後も家賃を払い続ける場合、家賃が毎月13万円とすると、年間156万円かかることになりますが、ローン完済後は、住居負担は大幅に軽減されます。
固定資産税や家の修繕などにかかる費用などを、賃貸の場合にかかる年間156万円のうちの50万円と想定しても、残りの106万円は、老後の生活費を助けていると考えてもよいでしょう。そこで、「人生設計の基本公式」に、持ち家のメリットを年間106万円として年金額に加え、「年金額」を「286万円」とします。
すると、必要貯蓄率は「12.13%」に下がります。
このように、持ち家があることは、支払い家賃と持ち家の維持費等の差として考えることができて、老後の支出をある程度サポートする効果をもたらすことになります。しかし、この効果を得るには、現役時代に、住宅ローンを返しながら、「必要貯蓄率」を達成していることと、リタイアまでにローンを完済していることが前提です。

低金利の今こそ固定金利型を選択しよう

さて、A子さんですが、実は、買いたい物件の価格は4000万円ということで、シミュレーションを持参していました。変動金利0.625%で4000万円を20年間の借り入れると、毎月の返済額は13万2978円、ボーナス時40万円という計画です。
ご本人は、今の家賃と変わらないと、随分とご満悦のようですが、問題は、「変動金利型」ということです。
確かに、一般的に、変動型の金利は、固定型の金利より低いですが、将来金利が上昇するというリスクがあります。金利が上昇してもすぐに返済額が上がるわけではありませんが、今より返済額が増える可能性があります。
多くの銀行は、金利変更から5年間は返済額が変わらない「5年ルール」と、もし、金利が大幅に上昇しても、前回の返済額の1.25倍を上限とする「125%ルール」を設けていますので(注:適用しない銀行もあります)、上がったとしても、マックス16万6000円くらいとなるわけですが、楽観してはいけません。

これは、あくまで、返済額の増加した分を先送りにしているだけだということです。返済期間が終っても、完済できていない分は、一括で返さなくてはなりません。退職金は老後の大事な資金ですから、そのようなことにあれば老後設計が狂ってしまいます。
また、金利が上がったら固定に変えるという人もいらっしゃいますが、一般的には、変動金利より先に固定金利が上がりますので、そううまくはいかないと思います。将来、固定金利は、今よりずっと高いかもしれません。
固定型で、20年間、例えば1.15%で借り入れる場合と、試算の変動型の金利の差は、0.525%です。これで、将来の金利上昇メリットを回避できるとしたら、20年間、返済額が変わらない方が安心です。
家を買うことは、人生の安心を手に入れることにもなりますが、多額のローンを組めば、経済的に大変になります。今後、急激な人口減が、住宅価格に影響することも考えられるでしょうし、くれぐれも、住宅購入は慎重に考えてください。



岩城 みずほ 氏

岩城 みずほ(いわき みずほ)氏

ファイナンシャルプランナー CFP®認定者 オフィスベネフィット代表
東洋経済オンライン『今からでも必ず解決できる!おカネと人生の相談室』、毎日新聞経済プレミア、日本経済新聞『家計のギモン』、オールアバウト等で連載中。日本経済新聞社公認 日経新聞読み方講師。
愛媛出身。慶應義塾大学卒。NHK松山放送局を経て、フリーアナウンサーとして14年活動。その後セミナー講師に。生命保険会社を経て2009年に独立。個人相談、講演、執筆を行っている。貯めると増やすの車座の会「C(貯蓄)リーグ」良質なマネーの勉強会「サムライズ」主催。ボランティア活動「経済に強いママを増やす会」に参画。著書『人生にお金はいくら必要か』(山崎元氏と共著・東洋経済新報社)『そこ、ハッキリ答えてください!「お金」の考え方このままでいいのか心配です。』(山崎元氏と共著・日本経済新聞出版社)他。



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