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「月刊スイングトレーダー!」では、スイングトレードをされているお客様向けに、様々な情報を提供してまいります。ぜひ最後までおつきあいください。 |
執筆者:トレード・サイエンス株式会社 高井 克実 氏 野村證券やBNPパリバでディーラーとして活躍。 現在はマネックスシグナルの開発・運用を担当。 |
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下落の背景は、米国の3月利上げ懸念。原油相場の下落で加速。日米欧の3極の中央銀行が火消し。 |
日経平均株価は、年初から21日までに年末から約3,000円下落した後に、約1,500円反発し、約1,500円下落して、1月の取引を終えました。年初から、非常に荒っぽいマーケットになりました。 下落の発端は、4日の中国人民銀行の人民元の安値誘導からでしたが、背景に3月の米国の利上げ懸念があったために、ほぼ一方的な下落となり、原油相場の下落によって世界株安が加速していく展開になりました。反転のきっかけとなったのは、21日のECBの追加緩和期待で、27日のFOMC、29日の日銀のマイナス金利導入と、月の下旬にかけて、日米欧の3極の中央銀行が緩和姿勢を示すことで、なんとか火消しができたというマーケットでした。 前月号の12月末時点でのビューでは、1月は米国の企業決算が材料になると書きましたが、中国人民銀行の元安誘導で、3月の米国利上げを試す動きが、前倒しで始まってしまった、という結果になりました。決算発表前で多くの機関投資家が様子見だったことや、原油相場の下げが株安を加速させたこと、米国FRBのメンバーが、FOMC前のブラックアウト期間で発言できなかったも、下落を増幅させた要因と考えられます。 ボラティリティは、米国のVIX指数が、32の高値をつけました。VIX指数が30を超えた水準は、ほぼマーケットが崩壊していると言っていいくらい危険な状態なのですが、昨年の8月に続いて、ここ半年で2回目の大きな高値をつけました。ボラティリティが高い状態に留まる時代がやってきたのかもしれません。ボラティリティを下げるには、米国の利上げ中止が必要と思われます。 (トレード・サイエンス株式会社 高井 克実) |
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続いて、個別銘柄では1月にどのようなスイングトレードのチャンスがあったのかをふり返ってみたいと思います。 マネックス証券では、アルゴリズムに基づいて銘柄や売買のタイミングを提案するサービス「マネックスシグナル」を提供しています。 マネックスシグナル(アウトライト戦略)では、順張りや逆張り等のアルゴリズムに基づいて取引を提案するロボットを用意しており、多様なトレーディングアイデアが詰まっています。1月にマネックスシグナルが提案した取引を参考に、先月の個別銘柄のトレーディングにおけるアイデアやポイントをふり返ってみたいと思います。 ■マネックスシグナルとは テクニカル分析等に基づくアルゴリズムに従って、ロボットが毎日、大型株を中心とした売買のタイミングをメールで提案する、マネックス証券のオリジナルサービスです。 |
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1月に提案した取引 |
※ | マネックスシグナルは、寄付での成行注文を想定しているため、グラフの株価は始値を使用しています。 |
1月に利益確定をした取引例 |
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(トレード・サイエンス株式会社のデータを元にマネックス証券作成) |
Short154は、決算発表後に弱い動きをした銘柄に、順張りの空売りを仕掛けるロボットです。 Short154は、Long154と同様に、決算発表というイベントに特化したロボットで、決算発表後に下落している銘柄に、順張りの空売りを仕掛けます。このシグナルが1月の唯一の利益を確保したシグナルになりました。 空売りのロボットは、通常時には、Short151が担当し、決算発表期には、Short154が担当します。しかしながら、決算発表直前では、来るべき決算発表に備えて両方のロボットとも、取引を行わないので、1月上旬から中旬までの下落局面では、多くの銘柄で、空売りでの利益の機会を逃してしまいました。 |
1月に損切りをした取引例 |
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(トレード・サイエンス株式会社のデータを元にマネックス証券作成) |
Long151は、株価が上がり始めた銘柄に順張りで買いを仕掛けるロボットです。 このロボットは、複数のボラテリティを監視しており、マーケットが落ち着いているときに、上がり始めた銘柄に対して、順張りの買いのシグナルを出すロボットです。 仕掛けのシグナルが出た12月28日の時点では、マーケットは落ち着いており、ダイキン工業株は、12月3日につけた高値に迫る勢いでした。その勢いに順張りの買いで仕掛けたのですが、1月4日の中国人民銀行の人民元安誘導により、前提条件が崩れ、マーケット全体の急速な下げに巻き込まれる形で、1月8日に損切りの決済となりました。 |
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(トレード・サイエンス株式会社のデータを元にマネックス証券作成) |
Long153は、弱い動きをしている銘柄の比較的大きな下落に対して逆張りの買いを仕掛けるロボットです。 このシグナルも、上記のダイキン工業株と同様に、年初のマーケット環境の急変により損失となりました。ダイキン工業株と同日の1月8日に損切りの決済になっています。1月は、ボラティリティの低かった12月下旬に買いで仕掛けたシグナルが多かったために、他のシグナルも年初のマーケット環境の急変で、大きな損失を負いました。 |
1月の全シグナルおよびパフォーマンスはこちらをご覧ください。 |
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レンジ相場で個別銘柄の選別が進行。原油相場と米ドル/円が相場全体を動かす展開。 |
2月のマーケットは、日経平均株価で16,000円から18,500円のレンジ相場を予想します。日米欧の3極の中央銀行が株安に対する緩和姿勢を示したことで、底値を模索する可能性は低いのですが、1月のダメージ回復には時間がかかるので、上値もまた重いでしょう。このメインシナリオを崩すリスクシナリオとしては、原油相場の更なる下落、あるいは米ドル/円の円高への反転で、再び底値を模索するシナリオが考えられます。 米国の利上げというマクロ経済の材料が消化されたことで、次は個別銘柄の選別が行われるでしょう。 1月のマーケットが、あまりに凄まじかっただけに、個別株の評価が後回しにされた面もあり、決算内容に従って人気銘柄と不人気銘柄の新しい動きが、出てくると思われます。 為替については、マイナス金利導入で121円まで円安になった米ドル/円の為替が、そのレベルに留まれるかどうか、がポイントになります。120円以上の為替は、グローバルに展開している企業にはプラスになりますが、120円を切って再び下落するときには、日銀のマイナス金利導入に対する失望感が出てくるかもしれません。既にマイナス金利を導入している欧州の株式が、1月の下落に対して無力だったことは、覚えておく必要があるでしょう。 前月号では、「エネルギー関連が悪いのは、誰もがわかっているので、あまり材料にならない」と書きましたが、これは間違いでした。原油相場が下落した際の産油国の資産の換金売りという売り圧力は、今後も大きな材料になるでしょう。前月号の見解については、申し訳ありませんでした。 (トレード・サイエンス株式会社 高井克実 2016年2月1日執筆) |
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元ディーラーに学ぶ、スイングトレードセミナー!(毎月開催) <口座をお持ちの方限定> |
2016年2月18日(木)開催 講師:トレード・サイエンス株式会社 高井 克実 氏 マネックスシグナルの提案した具体的な銘柄を例にして、楽しくスイングトレードの勉強をしていきたいと考えています。テクニカル分析からみたマーケットの状況やトピック、パフォーマンスの評価の仕方などを、より実践的な視点で話していきます。 |
本セミナーは終了しました。 後日、オンデマンドを公開する予定です。 |
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ここからは、先ほど紹介したマネックスシグナル(アウトライト戦略)の1月のパフォーマンスをふり返ります。マネックスシグナルに興味を持たれたお客様や、ご利用中のお客様はぜひご覧ください。 |
1月の全シグナルはこちら |
(トレード・サイエンス株式会社のデータを元にマネックス証券作成) |
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1月中に返済が行われたシグナルについて集計しています。 |
1月は、主に12月の下旬に仕掛けた買いのシグナルが、年初からの急落で一方的に負けていく展開になっていましました。6営業日となる3連休明けの12日の引け時点で、ほとんどの銘柄が損切りのロスカットになり、勝負は月の序盤で決しました。その後の更なる下落を考えると、13日の寄り付きの時点で、ほぼリスクを落としていたことで、致命的な損失は避けることはできたのですが、年末年始のリスク管理には、課題が残りました。 1月は、代表的なボラティリティ指数である米国のVIX指数が高水準で推移したことと、多くの銘柄が決算発表前だったことにより、ロボットは仕掛けを控えました。そのため、新規のシグナル数は8個と少ない月になりました。 |
1月のパフォーマンス |
(集計期間 2016年1月1日~2016年1月29日 返済シグナルの実績値) |
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(トレード・サイエンス株式会社のデータを元にマネックス証券作成) |
1月は、12月からシグナルの持ち越しが17個、新規のシグナルが8個、返済シグナルが24個、2月へのシグナルの持ち越しが1個、というシグナル数になりました。年初からの急速な下げで、買いの銘柄は全て損失となり、利益になったのは、決算発表後に空売りで仕掛けた1シグナルだけでした。 この一方的な損失は、以下の2つが大きな要因です。 ・年末に将来のリスクを計る指標になるボラティリティの指標が、年明けのリスクを織り込んでいなかったために、そこで買いのポジションを仕込んでしまったこと。 ・多くの銘柄が決算発表前であったため、マーケット全体の売りが加速していく過程で、順張りの空売りのシグナルで保有している買いのポジションをヘッジできなかったこと。 統計としてのサンプル数が少ないので、単月での勝率や平均損益率はあまり意味がありませんが、1月は、非常に悪いタイミングでマーケットが急落したことで、稀に見る大きな損失の月になってしまいました。 サンプル数の多い過去の各月の成績は、スペシャルサイトをご参考ください。 |
マネックスシグナル(アウトライト戦略)、過去2年間のパフォーマンス |
(トレード・サイエンス株式会社のデータを元にマネックス証券作成) |
* 累積月次損益率は、各月の月次損益率を、加算したものです。 * 月次損益率は、個別のシグナルの決済後の成績を月毎に通算したものです。 * 灰色の数値は、バックテストで計算されたシミュレーション上の数値になります。 |
過去の詳細な成績や、ペアトレード戦略の成績は、スペシャルサイトで公開しています |
過去2年間のパフォーマンスを評価するグラフを2つ用意しました。 上のグラフは資産曲線と呼ぶグラフで、右肩上がりが理想とされています。右肩上がりにするためには、損失をいかに早く取り返す事が重要になります。 下のグラフは、当月の成績が過去の月と比較してどれくらいのものだったのかを判断するために使います。具体的には、決定的な勝ちだったのか、かなり大きな負けだったのか、想定される範囲内だったのか、という3パターンで判断します。 1月の損益については、想定される範囲内での最大の負けでした。現在のモデルでシミュレーションを行ったバックテストの統計からは、10年間に3回起きるレベルの損失です。想定内ではありますが、大きな損失ではあるので、取り返すには半年程度の時間と2014年の6月や11月のような、大きく勝ち切る月が必要になると思われます。 |
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以上、今月の「月刊スイングトレーダー!」をお送りいたしました。 来月もぜひご覧ください。 |
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