米中貿易交渉の進展期待から2万1千円を回復した日経平均株価。
しかし、好悪材料が入り混じる今の相場を不安視する投資家も多いのではないでしょうか。今後の日経平均株価はどうなるのか。
マネックス証券代表取締役会長の松本大が日経平均3万円の道のりについて語ります。

日経平均3万円への道 アップデート2019年2月
松本大のコメント

3万円到達予想時期とコメント

私が前回見通しのアップデートを公開した昨年8月末から、米中貿易摩擦などを背景に日経平均は年末に向けて3,500円ほど下げ、その後2,500円ほど戻し、今の位置にある。この間の最も重要な「人間による発言」は、10月のペンス米副大統領による中国の位置づけに関するものと、年末から年始への一連のパウエル米連銀議長による、金利引き上げへの言及と、その後のその修正の弁であろう。

ペンス米副大統領の発言は、アメリカの中国に対する見方が大きく転換したことを宣言するものであり、かつそれはトランプ大統領に対する好き嫌いに関係なく、アメリカに於ける概ねのコンセンサスのように思われる。米中貿易摩擦、或いは米中貿易戦争は、一過性のものではない。今後、もしかすると数十年にわたるような、新たな関係性だと思う。本件は、マーケットを一時的に動かす類のものではなく、永続的に影響を及ぼす類のものだと思う。なのでこれからは、本質的な重要な新たなニュースは出にくいし、株価も、既にマーケットは一旦大きく売られ、関係性の変化から来る株価の違いを織り込んだので、ここからは新たな大きな株価の再評価は行われにくいのではないかと考えている。

一方、パウエルと連銀の変質は重要である。中央銀行は伝統的な仕事として、景気・経済の動向を見ながら金利の調節をしてきた訳だが、12月にそう説明したらマーケットが売られてしまい、株価が下がったこと自体から来る実体経済への影響があまりにも大きく、パウエルは金利を調節することをもう放棄せざるを得なくなったと認識したように見える。即ち、リーマンショック後の世界的金融大緩和の結果、資本市場・マーケットがあまりにも大きくなってしまい、そしてその上下から来る実体経済に対する資産効果・逆資産効果があまりにも大きいため、パウエルの仕事は金利調節ではなく、マーケットの株価を大きく下げすぎないこと、下げたら戻すこと、あまり大きくぶらさないで、ゆっくりとじわじわと株価を上げていくことが、目的になってしまったのではなかろうか?

このように考えると、アメリカの株価の先行きは概ね明るいと私は考えている。そしてそれは日本株市場にとっても朗報だ。日本株はアメリカ株のような安定さはない。しかし一方で、アメリカ株に比べて大きな割安感がある。この割安感の調整、即ちPERがもう少しアメリカ株のそれに近付くだけで、日本株には大きな上昇余地がある。

これらの結果、日経平均は3万円に到達するとの予想は変更しない。そしてその時期は、前回(6か月前)では2019年12月末としていたが、上記の米中関係の見直しによる調整により、少々遅れ、2019年度末、即ち2020年3月末と、3か月間だけ後ろ倒しにしたい。