米国マーケットの最前線

米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)

世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。

執筆者:マネックス証券 プロダクト部

雇用統計次第で9月利上げの公算高まる

イエレン議長のジャクソンホール講演

■イエレン議長、早期追加利上げに意欲を示す

イエレンFRB議長は米ジャクソンホールで開催された講演において、「米労働市場の堅調な改善と我々の経済およびインフレ見通しに照らせば、追加利上げの論拠はこの数ヶ月で強まった(in light of the continued solid performance of the labor market and our outlook for economic activity and inflation, I believe the case for an increase in the federal funds rate has strengthened in recent months.)」という主旨の発言を行い、早期の追加利上げ実施に意欲を示した。

また、あわせて米経済について設備投資の弱さなどの懸念はあるものの個人消費が成長を牽引して拡大が続いている(U.S. economic activity continues to expand, led by solid growth in household spending. But business investment remains soft)との認識を示した。

足元のマーケットはイエレン議長がジャクソンホール講演でどのような発言を行うかに非常に大きな注目が集まっていたが、結果的に年内追加利上げへの意欲を示すややタカ派的な発言と受け取られたようだ。さらに、フィッシャーFRB副議長はCNBCのインタビューで「9月に利上げが実施され、年内に複数回の利上げがあると予期するべきか?」との質問に対し、「イエレン議長の発言はその可能性があることを示唆している」と発言した。

イエレン議長やフィッシャー副議長の発言を受けマーケットは急速に9月利上げを織り込みにかかったようだ。米2年債利回りは急上昇し、1ドル100円台前半で推移していたドル円は一時102円近くまで上昇した(グラフ参照)。

フィッシャー氏は「ただし経済指標次第である」との従来からの主張も付け加えており、9月利上げが確定的になったというほどの状況にはないが、9月利上げの可能性が大きく高まったと考えるべきだろう。

さらに、早期利上げに意欲的なのは議長と副議長ばかりではない。8月中旬にダドリーニューヨーク連銀総裁は「9月利上げは可能である」との発言を行った。足元でジョージカンザスシティ連銀総裁や、カプランダラス連銀総裁も相次いで早期追加利上げ実施に意欲を示した。つまり、連邦公開市場委員会(FOMC)での政策決定に当たって、早期の追加利上げがコンセンサスになりつつある可能性があるということだ。

■8月分の雇用統計が最大の判断材料に

9月のFOMCは20日から21日にかけて行われる。その会合で利上げを行うかどうかの最大の判断材料は今週9月2日に発表される8月分の雇用統計だろう。それについてはフィッシャー氏もCNBCのインタビューの中ではっきりと「8月分の雇用統計が重要になる」と発言したようだ。

それでは雇用統計がどのような内容であれば、FOMCは9月利上げの判断に傾く(少なくともそう市場が判断する)のだろうか。イエレン議長が「この数ヶ月で利上げの論拠が強まった」と発言していることからすれば、この数ヶ月間の数値を1つの目安とすることができるだろう。

まず、非農業部門雇用者数は1月から7月までの平均が18.6万人増、足元3ヶ月の平均が19.0万人増である。5月分がわずか2.4万人増となるなどの波乱もあったが、17-19万人程度の増加がみられれば雇用者の伸びは合格点ということになるのではないか。また、もう1つ特に注目度が高いのが雇用者の平均時給の前年比の伸びである。冬から春先にかけては前年比2.3-2.4%増で推移した時期もあったが、足元では2ヶ月連続で2.6%の伸びを示している。こちらも同程度の伸びがみられれば合格点ということになろう。

なお、28日時点の市場予想では非農業部門雇用者数が18.0万人増、平均時給が2.5%の上昇と概ね堅調な内容になるとみられている。労働市場の先行指標とされる新規失業保険申請件数は概ね減少(望ましい)傾向を続けており、米労働市場に異変が起きているような兆しは見受けられない。8月の雇用統計も堅調な内容になる可能性が高いだろう(グラフ参照)。

今週は雇用統計の前に、先行指標となるADP雇用統計や企業の景況感を示すISM景況感指数など重要指標が多く発表されるため、それらにも市場は反応することになる。ただ、やはり最大の判断材料となるのは雇用統計であるとみられるため、雇用統計の堅調な内容を見込んで今週は前半から金利上昇・ドル高が進む可能性が高いのではないだろうか。

昨年から米企業は業績の悪化に苦しめられてきた。その理由は世界経済全体の伸びが芳しくなかったことや大幅な原油安もあるが、ドル高の影響も指摘されている。市場が改めて追加利上げの影響を織り込んで金利上昇・ドル高が進むことになれば史上最高値圏にある米国株には業績鈍化を懸念した利益確定売りが出やすいと考えられる。一方で、言うまでもなく円安ドル高の進行は日本株には大きくプラスである。いまだにTOPIXは年初から17%近くも下落している。米早期利上げシナリオが再燃し、9月会合での日銀の追加金融緩和の可能性が残されている状況では出遅れている日本株への買いが強まるシナリオも描けるかもしれない。

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