2018年9月から世界有数の運用会社であるシュローダーのマルチアセット運用チームによる各金融市場の月次見通しをお届けします。お客様の投資戦略の策定にぜひお役立てください。
今月のポイント
企業収益は引き続き堅調である一方、金利上昇に対する脆弱性や、投資家のセンチメントが変化する可能性を勘案し、株式は「中立」の見通しを維持。前月からの変更点は、コモディティ価格の調整を受け見通しを「強気」から「やや強気」へ一段階引き下げた点。
資産クラスの見通し
株式 | 国債 | 社債 | コモディティ (商品先物) |
---|---|---|---|
企業収益は引き続き堅調である一方、金利上昇に対する脆弱性や、投資家のセンチメントが変化する可能性を勘案し、中立の見通しを維持しています。 | これまでの金利上昇を受けて、割高感が剥落しているとみられますが、今後、経済環境の改善を背景に更なる金利上昇が懸念されるため、やや弱気の見通しを維持しています。 | 幅広い国・地域において、社債全般のスプレッド(利回り格差)が縮小しています。更に、一部に財務レバレッジの上昇も散見されることから投資妙味が薄いと判断し、やや弱気の見通しを継続します。 | 世界的に安定的な経済環境がコモディティ需要の支援材料となると考えていますが、足元の調整をうけ、見通しをやや強気へと引き下げています。 |
見通しの表示:++強気、+やや強気、0中立、-やや弱気、--弱気
矢印:対前月での見通しの引き上げ/引き下げを示します。
資産クラス、分類(地域、通貨)毎の見通し
資産クラス | 分類 | 見通し | ||
---|---|---|---|---|
株式 | 米国 | 底堅い米国景気や好調な業績が下支えするとみられるため、見通しをやや強気で維持しています。更に、自社株買い等の株主還元策の増加も、米国株式の支援材料になると考えられます。 | ||
欧州 | 貿易摩擦問題や欧州中央銀行(ECB)による金融引き締めなどの懸念材料が散見されるため、見通しを中立で維持しています。 | |||
日本 | バリュエーションは魅力的な水準にある一方、一部の経済指標が弱含んでおり、景気の減速感が見られるため、見通しを中立で維持しています。 | |||
アジア太平洋 (除く日本) |
中国市場のモメンタムの弱さや、最近のシンガポール市場の調整などが懸念される一方、全体的なバリュエーションは割安な水準にあると判断されることから、中立の見通しを維持しています。 | |||
新興国 | 貿易摩擦問題や米ドルの上昇が短期的なリスク要因となる可能性があります。また、総じて経済ファンダメンタルズ(基礎的条件)は底堅く、これまでの調整局面から底入れしつつあると判断しているため、やや強気の見通しを維持します。 |
資産クラス | 分類 | 見通し | ||
---|---|---|---|---|
国債 | 米国 | 米国債の発行増加により需給が緩んでいることや、バリュエーションの観点で依然割高感があることなどを勘案すると、やや弱気の見通しを継続します。 | ||
欧州 (ドイツ国債) |
足元の金利水準は、欧州景気の減速感を織り込んでいる一方、インフレ上昇リスクについては、今後材料視される可能性があります。ECBは量的緩和の年内終了を決定しており、市場が期待するより金利が上昇する可能性があると考えています。 | |||
新興国 (米ドル建て) |
新興国内でも格差があるものの、総じて企業収益が拡大基調にあることから、新興国社債を新興国国債に比べて選好しています。 | |||
新興国 (現地通貨建て) |
リスク要因が散見されることから動向を注視しつつ、見通しを中立で維持しています。バリュエーションが改善しているものの、見通しの引き上げには、もう一段の不透明感の払しょくが待たれます。 | |||
インフレ連動債 | 今後景気が緩やかに減速に向かうことが見込まれる中、物価上昇の可能性も高まっていると考えており、インフレ連動債についてはやや強気の見方を維持しています。 |
資産クラス | 分類 | 見通し | ||
---|---|---|---|---|
投資適格 社債 |
米国 | 合併・買収(M&A)活動の活発化や、一部企業の財務レバレッジの上昇などが注視されるため、やや弱気の見通しを維持しています。 | ||
欧州 | 欧州企業の財務は総じて健全と考えられます。但し、M&A活動が活発化するなど、サイクルの後期に差し掛かっていると捉えており、やや弱気の見通しを維持します。 |
資産クラス | 分類 | 見通し | ||
---|---|---|---|---|
ハイイールド 社債 |
米国 | 米国の良好な企業業績等に下支えされ、ハイイールド社債へ需要も底堅く推移しています。一方、バリュエーションの観点では割高感があり、今後の脆弱性も注視されます。 | ||
欧州 | 欧州の政治的リスクが再燃する局面では、スプレッドの縮小余地が限定的になる可能性があるため、やや弱気の見通しを維持しています。 |
資産クラス | 分類 | 見通し | ||
---|---|---|---|---|
コモディティ (商品先物) |
エネルギー | 原油については、世界的に堅調な需要や、イランなど中東の地政学的リスクが追い風となると考えているため、やや強気の見通しを維持しています。 | ||
金 | 見通しを中立で維持しています。金利と金価格の相関関係が、正常化しつつある中、米ドル高の進行が金価格の下押し要因となると考えています。 | |||
産業用金属 | 価格調整をうけ割安感が高まっていることに加え、世界的に底堅い経済環境が、需要を下支えすると考えています。 |
資産クラス | 分類 | 見通し | ||
---|---|---|---|---|
通貨 | 米ドル | 米ドルには割高感が出ていると考えられる一方、底堅い米国景気を背景に、ドル高傾向が続く可能性もあると考えます。 | ||
ユーロ | イタリアの政治的リスクの再燃や、今後の欧州景気の減速感が懸念されるため、中立の見通しを維持しています。 | |||
日本円 | 日本円については、これまでの世界同時的な景気拡大からの変化が支援材料となるとみられるものの、見通しの引き上げには、日本銀行による金融政策の調整が待たれます。 |
出所:シュローダー。社債に関する見通しは信用スプレッド(デュレーション・ヘッジを前提)の動きに基づくものです。ユーロと日本円は対米ドルの見通しとなります。
本レポートは2018年8月上旬に英語で作成されたものを8月下旬に日本語に翻訳しています。
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