お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)
■投資とは旅行のようなもの
ある雑誌の取材で「投資はしなくてはいけませんか?」という質問を受けた。う〜ん、どう説明したら納得してもらえるだろうか、と腐心して思いついたのがこの答え。「投資とは旅行のようなもの。旅行しなくても生きていけるけれど、旅行をする人の人生と、旅行をしたことのない人の人生は全く違う」
投資をしなくても真面目にお金を貯めて収支を計画的にコントロールすれば、日本では生きていける。でも投資をすることで「預金だけ」の生活では得られない知識を得、体験をし、それによって世界が広がるのは間違いない。
たとえば、アメリカの株式相場が値下がりすることで、サブプライムローンの問題を実感することができ、ユーロMMFが値上がりすることで、ユーロ高や円安を肌身に感じることができる(それがあなたの仕事や暮らしの中での意思決定に、何かしら影響を与えるかもしれない)。
旅行にはアクシデントがつきものだ。忘れ物をする。スリの被害にあう。水にあたる。スーツケースが行方不明になる。しかしそれを乗り越えることでトラブルに強くなる。さまざまな問題に落ち着いて対処できるようになる。
投資も思い通りに運ばない。手数料を計算に入れず損をしたり、為替が予想と反対に動いたり、順調な値上がりのはずが急落したりする。最初はわずかな値下がりでも眠れなかったのが、「値下がりしたから今のうちに買い増そう」ということができるようになる人もいる。リスクに強くなるのだ。
■まず国内、次に先進国、それから新興国
国内旅行は国内投資、海外旅行は海外投資にたとえられる。
初めての旅行なら国内からだ。気候や食べ物も大きく変わらず言葉にも不自由しない。情報もたっぷり。国内の投資なら、経済や金融の情報も十分にあるし、なじみある企業に円建てで投資ができる。
国内を何箇所か訪れて飛行機にのる経験もしたら、海外旅行もそれほど難しいものではなくなる。日本株の投資信託を買う経験をした人なら、海外株の投資信託を買うことをそれほど難しく感じないはずだ。
海外旅行は、経済が発展して交通手段や宿泊設備が整っている欧米を訪れるのと、活気はあるがファンダメンタルが整っていない新興国や発展途上国を訪れるのはずいぶん勝手が違う。海外投資も、新興国への投資は先進国よりも高いボラティリティを覚悟しなければならない。初心者は、アメリカやヨーロッパあたりから始めるのが無難だろう。
■投資信託はパッケージツアー
交通手段からホテル、観光スケジュールまですべてを自分で調べて手配する「個人旅行」は、旅の醍醐味を味わうことができる。その一方で、トラブルにあう可能性も高くなり、そのトラブルに自分で対処することが要求される。満足度が高いが危険度も高い、ハイリスクハイリターンだ。個別銘柄への投資がこれにあたるだろう。
ツアー旅行は、行き先とコースさえ決めれば、あとは旅行会社が手配してくれる。旅行会社に支払う手数料分がプラスされるが、その分を団体割引などで相殺できればかならずしも割高とは言えない。さまざまなバリエーションの中から自分の目的に合ったものを選べばいい。
投資信託はパッケージツアーに似ている。投資対象や運用方針からファンドを選んだら、後は専門家が運用してくれる。手数料がかかるがそれ以上のリターンが得られれば納得できる。企業の倒産など思わぬ事態が起こっても、分散投資なのでリスクが小さい。初心者向けであると同時に、投資のベテランも目的に応じて投資信託を使いこなす。
投資も旅行も、あなたを広い世界にいざなってくれる。どちらも、国内だけでなく諸外国の政治や経済や歴史、エコロジー、社会貢献、地球温暖化、戦争、貧困といったものにあなたの目を向けてくれるだろう。
■あなたの答えは?
では結論。投資はしなくてはいけないのだろうか?
するのもしないのもあなたの自由だ。でも、ちょっと考えてみよう。50年前はよほど恵まれた人しか海外旅行はできなかった。しかし今はその気になれば誰でも海外に行ける。
あなたの生活は投資なしでも不自由はないかもしれない。でもこれからもずっとそのままでいいだろうか。本当に十分だろうか。
答えを出すのはあなた自身です。
中村芳子
ファイナンシャル・プランナー/アルファ アンド アソシエイツ代表
http://www.al-pha.com/fp/
※本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、マネックス証券の意見 ではありません。
マネックスからのご留意事項
「10年後に笑う!マネープラン入門」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。
商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。