お金の基本(2)~投資は余裕資金で?~

お金のドクター、中村芳子がお金にまつわるさまざまな悩みに、専門家としてアドバイスします。(現在は更新しておりません)

お金の基本(2)~投資は余裕資金で?~

■下げ相場で考えさせられること

 相場が大変なことになっている。
 個人的に、為替はもっと円高になるべきだと考えているので、その方向に動いているのは歓迎だが、株式相場の下落+円高のダブルパンチで資産がどんどん減っている。期待の新興国にどんと投資した人たちや、FXをやっている人たちは大丈夫だろうかと心配だ。今回の動きは、昨年夏の一時的な調整とは様相が違うのではないかとやや深刻に受け止めている。
 
 円高と世界的な株の下落が同時に起こると、国際分散投資をしていても小さくない損失が出る。ある国際分散投資型ファンド(成長型)は年末から1/21まで、約12%値下がりしている(分配金を考慮)。

 こんな相場で考えさせられるのは、いったい資産の何%を投資にまわしていいのだろうか、自分は投資の割合が高すぎたのではないかということだ。
■余裕資金がある人なんて、そういない

 投資の本やセミナーでよく聞くのは「投資は余裕資金でやりましょう」ということだ。「使い道の決まっているお金は安全確実なものに預け、使い道の決まっていない余裕資金で投資をしましょう」

 しかし考えるに、余裕資金がある人なんてどこにいるのだろう。
 ほとんどの日本人は、限られた収入の中から生活費を出し、万一に備える資金(緊急費)を少し持ち、住宅を買うための頭金や、子どもを大学にやるための教育費を貯めるのに精一杯だ。子どもが成長して少しゆとりが出てきたら、今度は自分の退職に向けて貯めなければならない。

 とすると、いつも何かの目標のために貯め続ける状態で、どこにも「使い道の決まっていない余裕資金」なんてないのである。

 そこで提案しているのは、余裕資金ではなく「長期資金」の一部を投資しましょうということだ。長期資金。何年運用できるお金を長期資金と定義するかは人によって違うが、私は「10年以上」としている。

 すると「子どもの大学費用」と使い道は決まっていても、入学時期が10年以上先なら、それは長期資金なので一部を投資することができる。

 「退職後資金」は40歳から貯め始めようと勧めているが、60歳退職として運用期間20年以上(退職後も運用を続けるので)。もちろん長期資金として一部を投資に回せる。

■投資するのは長期資金の50%

 では、長期資金の「一部」とは、実際に何%が適当だろうか。この割合も専門家によって違う。私は50%を目安としている。この基準をつかうと、同じ1000万円を持っている人でも、投資に回せる金額が全然違ってくる。

 1000万円のうち、緊急費が100万円、2年後に買う予定のマイホームの資金が900万円という人は、投資できる金額はゼロだ。
 1000万円のうち緊急費が100万円、5歳の息子の大学入学資金が500万円、残りは退職後資金という人は、450万円投資できる。

 長期資金をこの割合で分散投資をしていても、今回の下げ相場では1〜2割の評価減は免れない。しかし、このお金を使うのは10年以上先。あと10年のうちには今回の損を取り戻してプラスに転じるチャンスは、十分にあると考えるがどうだろう。このスタンスなら、今慌てふためかなくてもすむはずだ。
 とはいえ、このまま相場が下がり続けるのを指をくわえて待っておくのは悔しい。勇気がある人は、投資金額の2分の1〜3分の1を一時的に現金化するのも一手だろう。

 いずれにせよ、相場が好調なときに投資金額を膨らませすぎないことが大切だ。自分が納得できる明確な基準を持つこと。そこできちんと線を引き、それを守る強い意志を持ちたい。

中村芳子
ファイナンシャル・プランナー/アルファ アンド アソシエイツ代表
http://www.al-pha.com/fp/

※本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、マネックス証券の意見 ではありません。

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