シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)
あるファンドAとファンドBの月次収益の推移を比べてみましょう。過去数年間にさかのぼって調べてみると、ファンドAの月次リターンが±10%の範囲内に納まっています。一ヶ月で最大10%儲かる場合もあれば、最大10%損するときもあるということです。そしてプラスの月数とマイナスの月数はほぼ同じです。
一方、ファンドBの月次収益を同じ時間軸で調べてみると、そのリターンは一ヶ月で最大6%ぐらい儲かったときもありますが、最大の損は4%ぐらいです。そして、ファンドAと比べてもうひとつ違う点は、プラスの月数がマイナスの月数よりはっきりと多いことです。リターンの良い「非対称性」ですね。
ここで質問です。ファンドAとファンドBを比べるとどちらのリスクが高く見えますか?答えは一目瞭然、価格変動が激しいファンドAですね。自分のお金を投資するのであればファンドBのほうが比較的に安心して見ていられます。
さて、そのファンドAの正体が「パッシブ運用型株式投資」、そしてファンドBの正体が「ヘッジファンドのファンド・オフ・ファンズ(FOF)」と聞いたら、どちらのファンドのリスクが高いと思いますでしょうか?新聞報道だけ読んでいたら、反射的にファンドBと答えてしまうかもしれません。実際、価格の変動推移がこれほど違っていても。
「パッシブ運用型」ということは標準とされる株式指標のパフォーマンスをそのままコピーすることです。インデックス・ファンドとも言います。例えば米国のS&Pインデックスの場合、97年から現在まで最大100%ほど上昇したのはもちろん歓迎ですが、その後、収益をほぼ全部吹っ飛ばして、現在ではやっと50%ぐらいの収益に戻りました。パッシブ(Passive)ということは「おとなしい」という意味なんですが、実際のパフォーマンスはジェットコースターのように暴れていますね。相場の流れに便乗することは決して「守りの運用」なんて言えません。
一方、同じ時間軸で、先ほどのヘッジファンドFOF(米国株式ロングショート戦略に特化したもの)の実績を見てみると97年から現在まで130%という好実績。そして、最大収益水準からの下落(Drawdown)は10%ぐらいに留まっているので基本的に右上がりです。収益を全部吹き飛ばすような運用はヘッジファンドとしては失格です。このFOFは株式ロングショート戦略なのでデリバティブズや他の商品は使っていません。投資する「材料」はS&Pと同じ米国株式であるのに、出来具合を比べてみるとヘッジファンドはリスクを抑えて、リターンが高い。こちらのほうが明らかに「守りの運用」ですね。
きちんとしたヘッジファンドの目的は株式など「伝統的」な市場が上昇しても、下落してもこのように絶対的に収益を上げることです。そういう意味では「ヘッジファンドのリスクは高い」ということは明らかに不正解な表現ですね。
ただ、これまでのリスクは「価格」について焦点を当てていました。実はもうひとつ、大きなリスクがあります。これは「信用」です。果たして運用を任せたヘッジファンドが「きちん」としているかであります。
ヘッジファンドのマネジャーが果たしてきちんとしているのか。又、マネジャー自身がきちんとしても、彼の運用スキルを発揮できるような設備はきちんと整っているのか。そして、運用はお金に関わるもので、お金に関わるものには残念ながら不正行為、最悪な場合には詐欺をたくらむ悪者が少なからず存在する可能性は否定できません。このような例が「信用リスク」であります。
特に個人投資家がヘッジファンド投資へ挑戦しようとするときに最も気をつけなければならなく、かつ、自分では判断しにくいものが信用リスクでありましょう。そういうときの航海に役立つのが信頼おける専門家たちが運用するFOFというナビゲーターです。
ヘッジファンドの「リスクが高い」と一言で片付けられる一般的な傾向がある中、実際のそのリスクの内容である価格変動と信用の違いを認識しておいてSophisticated Investor(教養のある投資家)への道を築きましょう。
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