「オルタナティブは長期投資? (4)ビンテージ編」

シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)

「オルタナティブは長期投資? (4)ビンテージ編」


 プライベート・エクイティ・ファンドは収益が上がり始めるまで、Jカーブのように時間がかかる長期投資であると前回まで話を進めてきました。良いワインが最高な飲み具合になるまで長年、寝かすのと似ています。

 ワイン愛好家は良いワインを購入してから長年寝かし、そしてそれを美味しく飲み干してから、さて次のワインを買おうなんていう単品的行動は取りませんよね。飲むまでにそんなに長くは我慢出来ないでしょうし、原産地の地域のその年の気候によってワインの出来具合が変わります。要するに良い状態でワインがいつでも飲めるように色々な地域とビンテージ(醸造年)のワインをセラーで蓄えます。ポートフォリオの分散投資のようですね。

 もちろん、ワインの場合は数年間経過し、出来具合が定まってきてから良いビンテージを値段さえ払えば、途中からでも購入できます。ただ、仮にワインが葡萄の収穫時期しか購入できなければ、ワイン愛好家はどのような行動を取るでしょうか? 恐らく、当り年と外れ年のビンテージをヘッジするために、ある程度の単数を毎年ごとに購入するでしょう。

 実は、プライベート・エクイティ投資にも当たり年・外れ年のビンテージがあります。例えば、90年代半ばに設定されたベンチャーキャピタル・ファンドの場合は収益を確保したのが数年後のITバブルの真っ最中。かなり美味しかったでしょう。一方、2000年ビンテージの場合は、投資案件の時価総額が高い発射台になってしまったので、かなり収益チャンスが厳しく、場合によっては永遠と寝かす結末になるかもしれません。(要するに損をする。。)
 このようなビジネス・サイクルは予想することはできますが、その予想が当たるかというと、そうは限りません。ただ言えることは、ベンチャーキャピタル・ファンドが儲かっていると聞いたからベンチャーキャピタル・ファンドに投資したり、再生ファンドが儲かっていると新聞で読んだから再生ファンドに投資するというような行動は失敗の可能性のほうが高いということでしょう。春に「種まき」をして、夏の太陽をたっぷりと浴びた果実を秋に大収穫している人たちを見て、よし、自分も!と秋に種を蒔いても、次に待っているのは冬です。期待外れの可能性が高いでしょう。

 ただ、季節と違って、プライベート・エクイティ投資はJカーブの「春」や「秋」がどのタイミングで訪れるかはいわからない。だから、この分野の投資に長けている大口投資家の場合は、先ほどのワイン愛好家と同様、分散投資をします。予想するのではなく、毎年にきっちりと「種を蒔く」のです。思いつきのようにファンドに単独的に投資するのではなく、全体的な投資プログラムにコミット(結束)して、毎年、きっちりと複数の有望ファンドの発掘、デューデリジェンスを経てから投資することがプライベート・エクイティ投資の王道でしょう。

 もちろん、このJカーブを予想することに自信があれば、投資資金を集中投資したほうが当然儲かります。ただ、ほとんどの投資家はこのような「長期的なマーケット・タイミング」を命中させることができません。分散投資はポートフォリオ論の基本中の基本ですが、投資案件の分散投資と同様、時間軸の分散投資も大事という訳ですね。

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