「ヘッジファンドの二極化」

シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)

「ヘッジファンドの二極化」

 近年のヘッジファンド投資は大人気。正確な統計はありませんが、試算ベースではヘッジファンド数は約7000、市場総額約100兆円といわれていて、5年ぐらい前から倍増しています。
( http://www.economist.com/finance/displaystory.cfm?story_id=3666459 )
 この大きな資金の流入により、ヘッジファンド業界は私が大手米系ヘッジファンドに勤めていた90年代から比べてかなり変わりました。そのひとつの現象は「アセット収集」派と「パフォーマンス重視」」派への二極化です。
 ん、これは何?

 その内容を説明する前に、ヘッジファンド運用における重要な用語をひとつご紹介。「キャパシティ」です。日本語では、容量ですね。「器」の大きさがどれくらいあるかです。

 何の器か? それは、ふたつあります。

 (1)ヘッジファンドが運用対象とする市場の収益チャンス。
 (2)ヘッジファンドを運用するマネジャーの能力。

 ヘッジファンド投資の根源は、このキャパシティを確保するということに尽きるといっても過言ではありません。ところが優秀なマネジャーこそ自分の運用スタイルと運用対象の市場の限度をキッチリと意識しています。従って、適切と思った規模をファンドが超えると、それ以上に資金を受け入れないばかりか、場合によっては強制的に資金の一部を投資家に返還してしまいます。これは、90年代後半に大手ヘッジファンドが大きくなりすぎた結果、舵取りを失い、運用の失敗や破綻してしまったという経験からです。

 たくさんの運用資金が流入してくることはファンドにとっては成功の証しであるので大歓迎のはずと思うかもしれません。しかし場合によっては、規模がある限度を超えてしまうとその資金が効率的に運用できなくなるかもしれない。ビッグであることは必ずしもベターなパフォーマンスを出してくれないというのがヘッジファンドの世界の常識です。

 ただ、特にヘッジファンド投資暦が浅い投資家にとっては、大きいファンドや有名なファンドのほうに安心感があるでしょう。これがヘッジファンド投資のジレンマです。

 この様な現状を踏まえてヘッジファンドの二極化に話を戻します。

 ヘッジファンド投資は大人気。ということは、ファンド運用者にとってはフィー獲得の収益チャンスであることには間違いありませんので「アセット収集」派はなるべく広い投資家層のニーズに応えようとします。例えば、運用戦略を損益のブレ(「ボラティリティ」、「標準偏差」、「リスク」とも良います)を抑えて投資家を安心させようとします。ただ、単純に損のブレを抑えるということは、もちろん、益のブレも抑えるということになりますね。投資家の資金換金性を容易にするとか、細かい情報開示をする、そして何といってもファンドが大きいということは投資家の安心感につながるかもしれません。ある意味では「忙しい」お金でも対応できるようなヘッジファンドです。

 一方、パフォーマンス重視派は、忙しいお金を敬遠し、自分の投資スタイルのことを十分理解し、自分のことを信頼してくれる数少ない投資家に限定したいと思っています。私の米国人パートナーたちが去年に投資した某ヘッジファンドは、投資家からの面談を受け入れるだけではなく、マネジャー側も投資家が果して自分のファンドに的確であるかを判断するために面談をしました。このファンドへの募集の窓口は一日でした。要するに、一日だけでも投資家が希望する総額と、このマネジャーが考えるファンドの適切な規模の倍率は何倍も集まったということです。これには自分が運用するファンドの適切な規模を把握しているという極めて現実的な要素あることと同時に、「オレは凄いんだ」という自信も必要であります。そして、もちろん、結果を出さなければならないというとても厳しい試練が待っています。

 「アセット収集」派と「パフォーマンス重視」派。どちらのほうが良い悪いということではないと思います。投資家自身の価値観のことですから。さあ、貴方だったらどちらを選びますか?

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