シブサワ・アンド・カンパニー渋澤健が綴る「オルタナティブ投資」の世界。「オルタナティブ投資」が目指す絶対的収益の根源とは?(現在は更新しておりません)
企業には資金調達の手段として、担保付き債権、無担保の上位、下位、劣後債権、そして株式がありますが、企業のこの「資本構成」のことをキャピタル・ストラクチャーと言います。
これらは、まったく同じ会社の信用能力に基づいた金融商品です。従って、商品の市場時価と潜在的価値に歪みが生じた場合、割安のものを買って、割高のものを売れば、そこに裁定取引(アービトラージ)のチャンスがあるかもしれないですね。これがキャピタル・ストラクチャー・アービトラージです。
同じ会社の金融商品でも、取引されている市場は違います。ひとつの企業に関するニュースに対して株式市場と債券市場の注目度は違う可能性があるので、過去の株式と債券の相対価格と比べると、割高・割安観が生じるかもしれません。例えば業績不振の企業が発行する高金利債券を購入したとします。高い金利収入は期待できますが、業績が更に悪化した場合には債券価格が下落して損失を負う可能性もあります。
では、この下落リスクを「ヘッジ」するひとつの選択肢は同じ会社の株式を空売りすることです。業績が悪化した場合には、株式価格も下がるはずなので、そこの収益が債券下落の損失を相殺するはず、という考えです。
ただ、株式の価格変動率のほうが債券よりかなり大きいので、同額の債券買いと株式空売りのポジションは作りません。価格変動のバランスを取るために、100という額の債券に比べて、株式は例えば5から15を空売りします。
この比率は、「ヘッジ・レシオ」と言います。債券の価格が1%動いた場合に、統計的に株式が10%動くことが検証できたらヘッジ・レシオは0.1です。
この比率は、定量的モデルで算出しますが、その微調整のために運用者の職人的な勘というものも大切な要因で、儲かるか儲からないかの差がここでる場合もあります。モデルは所詮、モデルで、やはり使うのは人間です。
最近では、債券の代わりにCDS(クレジット・デリバティブ・スワップ)というデリバティブを代用するケースが多くなっています。これは、企業が倒産して債権者などに元本返済を不履行するリスクに対する保険のようなものであります。
デリバティブは、実は現物債券より流動性が高い状態が多いのですが、問題は市場に何かしらの大きなショックを受けた場合、参加者が大潮のように引いてしまって、あると思った市場が蒸発してしまうことです。このような場合、現物市場とデリバティブは大きく乖離してしまいます。
もちろん、この大きく乖離した状態では、最高な裁定取引の収益チャンスになります。しかし、このようなショックでたくさん儲かったファンドたちは、特にニュースになりません。市場間が充分に乖離していると思って既にポジションを造っていたファンドたちは、更に大きく商品関係が乖離してしまったことにより、大損を負い、こちらは間違いなくニュースになります。例えば「GMショックでヘッジファンド大損失」、とか。
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