株式会社インベストラスト代表取締役 福永博之氏が、信用取引の基礎から応用までを解説しています。
株式会社インベストラストの福永博之です。今回から再び信用取引についてお話しします。過去にお話しした内容は基礎的なものでしたが、今回からはより実践的な内容でお話ししたいと思います。
突然ですが、みなさんは市場全体の信用取引の残高がどのくらいかご存知でしょうか?個別銘柄の信用取引残高の状況は過去にお話しした通りですが、市場全体の信用取引残高の状況もチェックしておかなければなりません。なぜなら、信用取引残高の状況が株価の先行きを予想するのに役立つからです。
では、早速ですが東京証券取引所が2012年6月26日(火)に発表した同22日申し込み時点の信用取引の残高をご覧ください(東証のホームページ、日経新聞などで見られます)。
東証が発表している信用取引残高は市場毎に3つに分かれています。一つが東京証券取引所で、そのほかは大阪証券取引所と名古屋証券取引所です。また内訳を見ると、制度信用取引、一般信用取引の合計となっています。
さらに細かく見ますと、日経新聞に発表されているベースでは各市場の1、2部が合計され、株数ベースや金額ベースもわかるようになっているのです。これが一般的に使われている3市場信用取引残高と呼ばれるものです。
ちなみに6月22日現在の東京証券取引所の信用取引の残高ですが、売り残高が株数ベースで907,559千株、同じく買い残高が3,549,841千株となっています。まずこの結果を見て、みなさんはどのように考えますか?過去にお話ししたことを踏まえながらこの結果から言えることは、売り残高に対して買い残高が3.91倍多いことがわかります。これだけ見ると、買い残高が大きく膨らんでいることから、株価が上昇してきた時に戻り売りが出てくることが考えられ、売り圧力になるのではないかということが予想されます。
一方で、買い残高、売り残高の前週比の増減を見てみるとどうでしょう。買い残高が前週比で24,265千株増加しているのに対して売り残高の方は64,547千株増加しており、およそ2.6倍も増加しているのです。
このようにして見ますと、市場全体の売り残高に対する買い残高の割合は相変わらず高いものの、1週間単位で見ると、買い残高に対して売り残高が2.6倍も増加してきており、このまま株価が下げ渋ってきた場合、買い戻しが入りやすくなるのではないかということが予測されます。
一方で買い残高が減少しなければ、上昇が続いても上値が抑えられることになりますし、さらには買い残高の返済売りを吸収できるだけの市場の取引量の増加が必要になってくるのではないかと思われます。
このように市場全体の信用取引残高を確認することで、その需給動向から今後の株価動向を予想する材料に活用することができるようになるのです。
今日紹介した数値は、どなたでも東証のホームページで見ることができますので、是非活用してください。
コラム執筆:福永 博之
株式会社インベストラスト代表取締役。IFTA国際検定テクニカルアナリスト。ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ 株式・資産形成講座 講師。勧角証券(現みずほインベスターズ証券)、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)、同証券経済研究所チーフストラテジストを経て、現職。現在、投資教育サイト《アイトラスト》の総監修を務める。ラジオNIKKEI、テレビ東京、TOKYO MXテレビ、CS日テレなどの株式関連番組にレギュラー出演。マネー雑誌の連載のほか、執筆多数。最新刊『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った「株」チャートらくらく航海術』(ダイヤモンド社刊)では、チャート分析の基本中の基本、ローソク足に徹底的にこだわって騰がる株を見つける方法をわかりやすく解説し、好評を博している。
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