株式会社インベストラスト代表取締役 福永博之氏が、信用取引の基礎から応用までを解説しています。
株式会社インベストラストの福永博之です。今回は信用取引の買い残高増加銘柄の検証と分析を行いたいと思います(ちなみに、信用取引の増加、減少などのランキングは、ヤフーファイナンスで、無料で見ることができますので確認してください)。
以下は、2012年7月3日に東京証券取引所が発表した信用取引の買い残高増加ランキングです。実際にはもっと下位までランキングがありますが、今回は10銘柄に絞ってあります。
では検証と分析を始めましょう。まずチェックしたいところは、ランキングに出てくる銘柄です。ここでは、どのセクター(業種)が多いのかをチェックします。すると、三井住友建設や日特建設、日本橋梁など、建設に関連するセクターが多いことがわかります。
続いては「価格」ですが、価格で何を見るのでしょうか?そうです。価格帯を見るのです。ここでは、2ケタ銘柄が3銘柄あるほか、高くても300円台までとなっており、低位株の多さが目立ちます。
さらに買い残高を見ますと、株価が安い銘柄の方が比較的買い残高が多い傾向にあることがわかります。
ではここまでのところを整理してみましょう。
①建設株が多い
②低位株が多い
③株価が安い銘柄の買い残高が多い
以上のことから、みなさんはどのようなことに注目しますか?
ここでの注目ポイントは、上記のランキング集計期間に建設株などの低位株が物色され、買い残高が膨らんだわけですが、こうした銘柄の買い残高の増加は、将来の株価上昇期待から買い残高が増加したのか、あるいは逆にこれらの銘柄は株価が低迷しているため返済できずに買い残高が増加したのか、という点です。
なぜなら、信用取引で取引している投資家は、レバレッジを効かせて取引を行っているため、金利負担などのコスト増や下落した時の損失拡大を嫌います。また、株価が上昇したところで返済することから、買い残高の減少につながると考えられるからです。
それでは信用取引の申し込みがあった期間でどの銘柄が上昇、下落したのかを見てみましょう。
このようにトップ10銘柄のうち、半分が下落していることがわかりました。なかでもパイオニアは、上記期間の間に前週比で54%も買い残高が増加しており、需給が悪化していることが想像できます。
このところ主力株の動きが鈍り始めていることから、低位株を大量に買って少しでも上昇したところで売って利益を得ようと考える投資家の増加によって、下落するところで買い残高が増えましたが、一方で下落している銘柄は、それだけ損失を抱えた買い残高が増えていることになり、これらの売り圧力を吸収できるぐらいの買いエネルギーが増加しなければ、株価の上昇が難しいと考えられるのではないでしょうか。
以上のことから低位株を買う場合、需給が改善している銘柄を選ぶ必要があるということがおわかりいただけたのではないかと思います。次回は売り残高増加銘柄を検証&分析します。
コラム執筆:福永 博之
株式会社インベストラスト代表取締役。IFTA国際検定テクニカルアナリスト。ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ 株式・資産形成講座 講師。勧角証券(現みずほインベスターズ証券)、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)、同証券経済研究所チーフストラテジストを経て、現職。現在、投資教育サイト《アイトラスト》の総監修を務める。ラジオNIKKEI、テレビ東京、TOKYO MXテレビ、CS日テレなどの株式関連番組にレギュラー出演。マネー雑誌の連載のほか、執筆多数。最新刊『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った「株」チャートらくらく航海術』(ダイヤモンド社刊)では、チャート分析の基本中の基本、ローソク足に徹底的にこだわって騰がる株を見つける方法をわかりやすく解説し、好評を博している。
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