第24回 「三市場信用買い残高評価損益率」について【1】

株式会社インベストラスト代表取締役 福永博之氏が、信用取引の基礎から応用までを解説しています。

第24回 「三市場信用買い残高評価損益率」について【1】

株式会社インベストラストの福永博之です。今回も信用取引について解説したいと思います。これまでは個別株の需給関係から株価動向を予測する話でしたが、今回から市場全体の話に戻ってお話しします。

ただ市場全体に戻ってお話しをするといっても、買い残高の増減や売り残高の増減についてではありません。今回ポイントとして解説するのは「信用取引の評価損益率」です。
読者の皆さんのなかで信用取引を行っている方は保有している建て玉の評価損益に注意を払いながら取引を行っていることと思いますが、信用取引を行ったことがない人のために、まずは評価損益率についてお話ししたいと思います。

「信用取引の評価損益率」は、建て玉に対する損益の比率のことで、買い建ての場合、買い値から値下がりしていると、それが評価損になります。また、売り建ての場合は、売り値から値上がりしているとその分が評価損になります。

また、評価益は決済するまで委託証拠金にカウントされませんが、評価損は決済されなくても委託証拠金から差し引かれるため、評価損がある一定の水準を超えると、買い残高に占める評価損益率が悪化し、投資家の投資余力が低下すると同時に株価上昇時の重石になることが考えられるのです。

したがって、この評価損益率をチェックすることで、投資家の損益状況を把握できることになり、投資余力があるのかないのかの判断から、株価の先行きを判断する材料になるということが言えるわけです。

こうしたことを教えてくれる評価損益率ですが、実は日本経済新聞に毎週掲載されているのですが、皆さんご存じでしょうか?

日本経済新聞社が紙面で発表している信用取引の評価損益率は、正式には「三市場信用買い残高評価損益率」と呼ばれ、東証、大証、名証の制度信用と一般信用の買い残高の合計から算出されたものになります。

したがって東証だけではなく広い意味での市場全体ということになりますので、頭に入れておきたいところです。ただ、2012年8月3日申し込み分の三市場信用買い残高に占める東証の割合がおよそ94%と非常に高くなっていますので、三市場全体ではあるものの、日経平均株価やTOPIXと関連して分析されることが多いのです。
日本経済新聞社によりますと「三市場信用買い残高評価損益率」は、毎週水曜日に東京証券取引所が公表する(前週の)信用取引残高をもとにして独自に算出し、木曜日の朝刊で発表しているとのことです。

そして、2012年8月9日の日本経済新聞の朝刊に掲載された信用評価損益率を見ますと、-19.69%と5週連続で悪化し、今年6月8日時点の-19.75%以来の水準まで低下してしまっているようです。

6月8日時点というのは、日経平均株価、TOPIX、大証修正平均がそれぞれ今年の安値を付けた週で、その時の水準まで信用取引の評価損益が悪化していることを示しているわけですが、この評価損益率と株価の関係から見ても、株価が値下がりすると評価損益率が悪化するという相関関係にあることがわかります。

こうした状況から考えますと、評価損益率の悪化に伴い投資家の投資余力が低下していることが考えられ、戻り売りが出やすい状況にあるということが予想されます。

また、今回発表された評価損益率が改善傾向にならなければ、株価の上値の重たい状況が続くことになるかもしれません。

こうした状況が改善されているかどうかや、株価が勢いよく上昇できそうかなどを考える上でも、毎週、信用取引の評価損益率をチェックするようにしたいところです。

コラム執筆:福永 博之

株式会社インベストラスト代表取締役。IFTA国際検定テクニカルアナリスト。ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ 株式・資産形成講座 講師。勧角証券(現みずほインベスターズ証券)、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)、同証券経済研究所チーフストラテジストを経て、現職。現在、投資教育サイト《アイトラスト》の総監修を務める。ラジオNIKKEI、テレビ東京、TOKYO MXテレビ、CS日テレなどの株式関連番組にレギュラー出演。マネー雑誌の連載のほか、執筆多数。最新刊『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った「株」チャートらくらく航海術』(ダイヤモンド社刊)では、チャート分析の基本中の基本、ローソク足に徹底的にこだわって騰がる株を見つける方法をわかりやすく解説し、好評を博している。

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