株式会社インベストラスト代表取締役 福永博之氏が、信用取引の基礎から応用までを解説しています。
株式会社インベストラストの福永博之です。いよいよ信用取引の残高の検証と分析は最後になりました。今回は売り残高が減少した銘柄の検証と分析です。
では、これまでと同様に早速ランキングを見てみましょう。
今回もランキング上位に低位株が多いということが言えますが、これまでにお話しした「売り残高増加ランキング上位」に顔を出していた企業名が目に飛び込んできます。
例えば、3位の川崎汽船です。この銘柄は2012年7月9日から13日までの期間で一気に売り残高が膨らんだ銘柄でした。
ただ、今回の発表分では売り残高が大幅に減少しているにもかかわらず、株価推移に示されている通り下落しており、買い戻しにつながっていないことがわかります。
また、買い残高と売り残高の比率が6.32倍まで上昇し、いわゆる取り組みが悪化しており、需給関係の悪化がみてとれます。
第21回で増資銘柄の売り残高増加は買い戻しにつながらない可能性があり要注意としましたが、まさに予想通りの結果になりました。こうした分析がきちんとできていれば、株価が安いからといって買って損失を拡大させることはなくなると思われますし、現物株取引しか行っていなくても、川崎汽船を保有している投資家であれば、買い戻しにつながらなければ、一気に取り組みが悪化し株価が下落するかもしれないといったことを予想することができたと考えられます。
したがって、現物取引しか行わない投資家であっても信用取引は自分には関係ないと思わず、その残高の推移をチェックする必要があるのではないでしょうか。
次にそのほかの銘柄も見てみましょう。他の銘柄は増資を発表していないものの、売り残高が減少すると同時に信用倍率が高水準で、全日本空輸と住友大阪セメントを除き、取り組みが悪化しているのがわかります。
また、取り組みの良い全日本空輸を含め、それぞれの株価推移が下落基調となっているため、信用取引で売っている人が値下がりしたところで買い戻すといった、いわゆる売り方有利の展開が続いていることになります。
こうした銘柄は需給の悪化が顕著で、上昇した場合でも買い戻しのエネルギーより返済のための売り圧力の方が上回って、株価の値下がりが続くことが考えられそうです。
8月3日に発表されたアメリカの7月雇用統計の結果を受け、東京マーケットも反発が期待されるところですが、いくら株価が安くても、売り残高が減少して需給が悪化しているような銘柄は戻りも鈍いことが考えられます。
したがって、値段に惑わされることなく、信用残高をチェックし、慎重に対応するのがよいでしょう。
コラム執筆:福永 博之
株式会社インベストラスト代表取締役。IFTA国際検定テクニカルアナリスト。ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ 株式・資産形成講座 講師。勧角証券(現みずほインベスターズ証券)、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)、同証券経済研究所チーフストラテジストを経て、現職。現在、投資教育サイト《アイトラスト》の総監修を務める。ラジオNIKKEI、テレビ東京、TOKYO MXテレビ、CS日テレなどの株式関連番組にレギュラー出演。マネー雑誌の連載のほか、執筆多数。最新刊『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った「株」チャートらくらく航海術』(ダイヤモンド社刊)では、チャート分析の基本中の基本、ローソク足に徹底的にこだわって騰がる株を見つける方法をわかりやすく解説し、好評を博している。
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