株式会社インベストラスト代表取締役 福永博之氏が、信用取引の基礎から応用までを解説しています。
株式会社インベストラストの福永博之です。今回は信用取引の買い残高減少銘柄の検証と分析を行いたいと思います。
以前にも解説しましたように信用取引の買い残高が増加している場合、将来の売り圧力と考えられますが、一方で減少している銘柄は買い残高の減少によって今後想定される売り圧力が弱まっていると考えることができ、上昇を狙って買いたい投資家にとって需給の改善がプラス材料になっていると考えることができます。
こうしたことを踏まえ、今回は買い残高減少ランキングを見ながら検証と分析を行いたいと思います。
図表1:信用取引買い残高減少ランキング
(市場:東証1部、期間:7月17日から20日申し込み分、終値は7月26日現在)
ここでまず目につくのは低位株が多いことです。オリンパスを除く9銘柄が3ケタ以下の銘柄であり、2ケタの銘柄が3銘柄あります。低位株が多いのは信用取引を活用することによって株数が多く買えるためだと思われますが、以前にこれらの銘柄を購入していた投資家が7月17日から20日の間に返済を行い、買い残高が減少したと考えられるわけです。
ただ、今回の買い残高の減少が投資家にとって利益を確定するための売りだったのか、あるいは損失覚悟でロスカットをしたのか、それが問題になります。
なぜなら、株価が上昇しているケースでの買い残高の減少は需給にとってプラスになると考えられますが、下落途中での買い残高の減少は、ロスカットによると思われ、株価下落が止まっていないことを示していると考えられるからです。
そこで、上記の表の右端の株価推移をご覧ください。これは、今年のTOPIXの高値(2012年3月27日)を起点として7月26日現在の株価の位置を示したものですが、オリンパスを除くすべての銘柄が下落しているのがわかりますが、この結果から、これらの銘柄を買っていた投資家はロスカットによる返済を迫られたと考えることができるのではないでしょうか。
一方でオリンパスも同様に買い残高は減少していますが、こちらは3月27日時点よりも上昇しており、利益確定による返済だったことがわかります。
こうした状況を踏まえ、投資家はどのように対応すればよいのでしょうか。
第一に考えなければならないことですが、上記の結果からわかりますように、いくら株価が安くても、ロスカットと考えられる返済が続いている間は株価の下落が続く可能性があり、買いは慎重に行わなければならないということ。
続いて考えるべき点は、買い残高の減少は需給にとってプラスと考えられるものの、上記表の右から2列目の信用倍率をみると、オリンパスを除く9銘柄は買い残高が売り残高を大きく上回っており、株価の下落圧力となる買い残高の減少が今後も続く可能性があると考えられること。
一方で、オリンパスのように、他の9つの銘柄と比較して株価が圧倒的に高いものの、信用倍率が0.56倍まで低下しており、需給関係からは売った投資家からの買い戻しが期待できると考えられること、などです。
通常、安い株を買っておけばいつかは上昇するだろうと考えますが、実際にそうした投資家がたくさんいて信用取引などで買われても、株価を押し上げるエネルギーにならなければ、逆に売り圧力につながりかねず、自分で自分の首を絞めてしまうようなことになりかねませんので注意が必要です。
コラム執筆:福永 博之
株式会社インベストラスト代表取締役。IFTA国際検定テクニカルアナリスト。ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ 株式・資産形成講座 講師。勧角証券(現みずほインベスターズ証券)、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)、同証券経済研究所チーフストラテジストを経て、現職。現在、投資教育サイト《アイトラスト》の総監修を務める。ラジオNIKKEI、テレビ東京、TOKYO MXテレビ、CS日テレなどの株式関連番組にレギュラー出演。マネー雑誌の連載のほか、執筆多数。最新刊『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った「株」チャートらくらく航海術』(ダイヤモンド社刊)では、チャート分析の基本中の基本、ローソク足に徹底的にこだわって騰がる株を見つける方法をわかりやすく解説し、好評を博している。
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