テクニカル分析でお金持ちになれるか?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

テクニカル分析でお金持ちになれるか?

株式投資経験者なら投資分析手法にファンダメンタルズ分析とテクニカル分析の2つがあることはご存知だと思います。その中でもテクニカル分析は分かりやすさから個人投資家に人気の手法です。チャートを使った投資法を紹介した書籍は書店に溢れていますが、ファンダメンタルズ分析の信奉者からはこんな風に揶揄されることがあります。

 「テクニカル分析でお金持ちになった人はいないが、テクニカル分析の本を書いてお金持ちになった人ならいる。」

 テクニカル分析手法とはファンダメンタルズ派の人の言うような実用性の無い分析手法なのでしょうか。

●テクニカル分析とは?
 まずテクニカル分析の定義を明確にしておきましょう。

 テクニカル分析とはロウソク足や移動平均といったものが有名ですが、価格・出来高・時間といった過去のデータから相場を分析・予測する手法です。過去のデータと将来の市場の動きに相関がある、つまりパターンがある(ランダムではない)ことを前提にした分析です。

 ファンダメンタルズ分析であれば株価なら経営者の資質や売上高や利益の推移、といったものを調べる訳ですが、テクニカル分析はそのような情報もすべて株価や出来高に織り込まれていると解釈します。

 分析手法は有名な移動平均、ロウソク足をはじめ、ボリンジャーバンド、一目均衡表、MACD、ダウ理論、エリオット波動、酒田五法、エンベロープ、パラボリック、RSI、ポイント・アンド・フィギュアなど無数といって良いほど存在します。

●テクニカル分析に対する批判
 このようなテクニカル分析が批判を受けるのはその曖昧さにあります。例えば「だまし」という言葉があります。これは思った通りの結果にならない時に「今回はだましだった」と結論付けたりするのですが、要するに結果が出ていないだけのことです。「だまし」にだまされてはいけません。

 またテクニカル分析には多種多様な方法が存在しています。例えば移動平均といっても何日平均を使うかによって結果は変わります。5日と25日の移動平均を使うと有益な結果が得られることがわかったとしても、将来はもしかしたら25日と100日の移動平均の方が良い結果になるかもしれません。無限の組み合わせから事後的に正しい方法を見つけても現実には役に立ちません。

●実は使っているテクニカル分析
 しかしこのようにテクニカル分析を批判している人であっても現実の取引ではテクニカル分析を無意識に使っているものです。例えば日経平均が15,000円台回復、株価が年初来高値更新、といった市場の動きを聞いて投資行動に影響を受ける人は価格を意識していることになります。

 私自身も株式の銘柄選択を行う際に過去の株価との乖離率を判断材料の1つとして活用しています(「資産設計塾 実践編」144ページ参照)。出遅れ銘柄や行き過ぎた銘柄の抽出には効果があると思っているからです。ただしファンダメンタルズ分析も併用して判断します。

 テクニカル分析を無批判に受け入れたり、全否定するのではなく、その中からいい所だけを取っていけば良いのでは無いでしょうか。つまりテクニカル分析は使い方次第だということです。

●テクニカルアナリストにするべき質問
 テクニカル分析に限らず「投資のプロ」の分析手法が信用できるかどうかは、その方自身の資産も同じ手法で運用しているかを聞けばわかります。本当に良いと思っているのなら自分の資産でも運用するはずだからです。

 かつてテクニカル分析で著名な方がこう言ったという話を聞きました。「そろそろ人に話してばかりでなく、自分でも投資をやってみないといかんなあ」これでは信用することはできません。

 もし自分のお金もテクニカル分析で運用している「投資のプロ」がいれば、その人はテクニカル分析でお金持ちになる方法を教えてくれるかもしれません。しかし残念ながら、移動平均やローソク足だけを使ってお金持ちになった人にはまだお会いしたことがありません。

今回の話のまとめ---------
●テクニカル分析は過去の価格、出来高、時間から将来を見通す手法
●テクニカル分析の手法は様々、どれを使うのか良く考えよう
●人に勧めて自分はやらない「評論家」の意見は聞かないようにしよう

ではまた来週・・・。

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