プライベートバンクの発想法

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

プライベートバンクの発想法

今週の火曜日に恵比寿のウェスティンホテル東京でプレミアムセミナー「マネックスとJPモルガンが考える資産運用革命」が開催されました。

セミナーのご案内(募集は終了しています)
http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/new/news605h.htm
 私もパネラーの1人として参加しましたが、JPモルガン・アセット・マネジメントの三木社長がお話されたプライベートバンクの発想法は資産設計を続ける上で参考になることがたくさんありました。お話の内容を自分なりに解釈して3つのポイントにまとめてみました。

<ポイント1> 欧米の個人富裕層の資産運用は守るが第一
 フォーチュンという雑誌に世界の富豪ランキングが毎年掲載されます。金額はケタ違いのリストですが、ランキングは時代と共に大きく動きます。この変遷からわかることは資産は殖やすのと同じくらい守るのは難しいということです。気がつかない間に意外に大きなリスクを取ってしまうとあっという間に資産は減ってしまうということです。

 「守る」といっても資産を減らさないようにリスクを取らないという意味ではありません。リスクを管理することで資産を守っていく方法です。

<ポイント2> 長期が重要
 三木さんの洞察で面白かったのは例えばアジア株は20年単位で保有していたら大きなリターンになったという経験談でした。長期で資産を保有したことが良い結果につながったという見解です。

 同様に不動産も投資先としてリターンを実現しているケースが多いのは長期で保有できるからだという話でした。不動産は自分で住んでいたり、取引にコストがかかることからどうしても長期運用になる傾向があり、それが結果として良い投資先になっているのだという説明です。

 資産は長期で持ち続けられる形にする工夫が大切だということです。

<ポイント3> 資産運用の前に考えることがある
 3点目は資産運用は殖やし方よりも使い方から考えるべきだという考え方です。
 優秀なプライベートバンカーは運用のアドバイスが優れている人だけではなくお客さんのライフプランから資産運用のニーズを理解し、それに沿った資産運用のアドバイスを的確に出来る人だということです。

 言い換えれば、相手の考えていることを具体的な形にできるコミュニケーション能力が高い人とも言うことができるでしょう。

 資産運用はサイエンスではなくアートであると言います。つまり資産の運用方法には数学の問題のような唯一の正解があるわけではなく、いくつかの選択肢から良いと思われるものを選ぶ感覚的な作業です。

 資産の今後の活用法を聞き、そこから今やるべき資産運用の方法を考えていきお客様に説明して納得していただく。最初に運用ありき、ではないのです。
●リスク調整後のリターンを決めるのはコスト
 プライベートバンクの発想法を聞いていて感じたことはプライベートバンクと言っても特別な運用をしているわけでは無いという当たり前の事実です。リスクが無くリターンが出る魔法のような錬金術はありません。

 もし金融市場にローリスク・ハイリターンな商品が存在するなら買い手が殺到してすぐにそのような商品は無くなってしまいます。逆にハイリスク・ローリターンな商品は買ってはいけない割高な商品ということになります。かつてのEB債など手数料の極端に高い商品はコストが高くリターンが低い割にリスクが高くなってしまうわけです。

 プライベートバンクもハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンという同じ土俵で運用している訳ですが、何が違うのでしょうか。ポイントは2つあると思います。

 1つはハイリスク・ローリターンに徹底して手を出さないことです。簡単なようでこれができない個人投資家は意外に多いものです。もう1つはその人に合ったリスクとリターンのバランスを考えること。これらのアドバイスが的確にできることにプライベートバンクの価値があるのだと思います。

●自分でできるプライベートバンク
 とすれば自分でプライベートバンクと同じことを自分でやるのもそんなに難しいことではありません。「資産設計塾」で提唱しているような長期分散投資を地道に続ければ良いのです。

 コストを意識して商品を選択し、自分の取るべきリスクを管理できればプライベートバンクと同じような運用を自分ではじめることはできるのです。今回のパネルディスカッションで自分の運用方法はプライベートバンクの発想法を基本は同じであることを確認することができました。

 プライベートバンクとは手が届かない別世界のものではなく、自分でも同じ効用を得ることはかなりの部分可能になっているのです。

 ただ自分でやる場合、プライベートバンクのオフィスにあるようなふかふかのソファやゴージャスな応接セットはありませんが。

今回の話のまとめ---------
●プライベートバンクの発想法には学ぶべきことが多い
●リスクを管理して長期で運用するスタンスは「資産設計」と同じ
●プライベートバンクと同じことは自分自身ではじめることができる

ではまた来週・・・。

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