定食とアラカルト

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

定食とアラカルト

今週から秋の早稲田大学オープンカレッジの講座がはじまりました。先着60名の定員で年2回開催していますが今回で15回目。数年前に始めた頃は定員に満たなかった講座も最近は熱心な個人投資家の方で毎回満席です。

 そんな講義の終了後、質問を受けました。「バランス型のファンドを購入するのと10万円で自分で分散投資するのとどちらが良いのでしょうか」というものです。

●バランス型ファンドは定食セット
 バランス型ファンドとは1つの投資信託の中に株、債券、外貨といった様々な資産が分散して組み入れられているファンドです。このようなファンドを購入すれば誰でも簡単に分散投資を始められます。リスクが分散されているので、最近人気が出てきている商品です。

 自分で分散投資をしないでバランス型のファンドを活用する場合、どのファンドを選んだら良いかに悩みます。希望通りの資産配分になっている商品が存在しないのです。バランス型ファンドとはレストランの定食のようなものですから自分の好みにピッタリなものはなかなか見つかりにくいのです。

 マネックス証券ではアセットナビゲーション株式60というバランスファンドを販売しています。比較的バランスの取れた配分のファンドなのでこれを例に考えてみます。このファンドの全体の資産配分は下記のようになっており、それぞれの資産はすべてインデックスファンドで運用しています。

日本株 45%
日本債券 25%
外国株 15%(うち半分は為替ヘッジ)
外国債券 10%(うち半分は為替ヘッジ)
流動性資産 5%

 理想の配分比率と異なるのは、日本株式の比率が少し高いことです。また外国株式、外国債券に関してはそれぞれの50%は為替ヘッジをしています。つまり合わせて25%の外貨資産を保有しているのですが、そのうちの12.5%は為替リスクを取らないようにヘッジしてしまっているのです。とすると資産全体の為替リスクは12.5%だけになってしまい、これは逆に低すぎではないかと思います。
 コストに関しては購入時に販売手数料が1.05%かかります。また年間保有しているとかかる信託報酬は年間0.685%です。販売手数料はかからないノーロードが望ましいですが、信託報酬は良心的な低いレベルに抑えられています。

 このようにいくつかの問題はあるものの1万円で完全にお任せで分散投資をしてくれるのであれば少ない金額で投資をする場合、それなりの存在価値はあるということができるでしょう。

●自分でやる分散投資はアラカルトの注文
 では自分でアセットアロケーションする場合を考えてみましょう。「資産設計塾」で提唱している分散投資例である「標準的なアセットアロケーション」を実践するとどうなるでしょうか?この方法は最低投資金額1万円の商品を組み合わせるわけですから最低10万円からの投資ということになります。組み入れ商品例と( )内は年間のコストです。

日本株 30% 日経225ノーロードオープン (0.80%)
日本債券 10% 個人向け国債 (債券なので信託報酬なし)
外国株 20% トヨタアセット (1.33%)
外国債券 20% 米ドルMMF (0.65%が上限)
流動性資産 20% MRF(直近で0.1093%)

 組み入れる商品を見てみるとバランスファンドとは異なり販売手数料のかかるものはありません。つまりはじめる時の手数料はかからないのです。ただし米ドルMMFに関しては、買付時に為替手数料が1ドルあたり25銭かかります。

 年間にかかるコストを厳密に計算するのは難しいですが、加重平均してみるとバランスファンドの信託報酬とそれほど大きく変わらないと言えるでしょう。ただし組み入れている商品が異なりますから同じ運用成果が得られるとは限りません。また為替のヘッジをかけていないので為替リスクは全体の40%となります。
 自分で分散を考える運用はレストランで言えば単品のアラカルト注文と同じです。自分の好みを選べますが、ちょっと面倒という人もいるかもしれません。
●こんなファンドが欲しい
 少し面倒であっても自分で組み合わせるのか?それとも組み合わせの比率は決まっていて、販売手数料もかかってしまうが1万円から購入できるバランス型ファ
ンドを選ぶのか?

 せっかく自分で勉強している個人投資家の方には前者をお奨めしたいと思います。でもバランス型ファンドもいくつかの欠点はあるものの商品選択をしっかり行えば選択肢として検討できるのではないでしょうか。その時に考えるべきことはファンドのコストと配分比率によってどんなリスクがあるか、です。

 「標準的なアセットアロケーション」で運用してくれる信託報酬の低いファンドがあれば良いな、と思うのですがこれは虫の良い考えかもしれません。
 そう言えばアセットナビゲーション株式60というファンド、毎月の積立ができません。これはマネックス証券に対応して欲しいですね。いずれにしても理想のバランスファンドはなかなか見つからないものです。

今回の話のまとめ---------
●バランス型ファンドは定食セット。簡単だが好み通りにはならない
●自分でやる分散投資はアラカルト。面倒だが自分の好みにアレンジできる●定食も良いが、せっかく勉強しているのならアラカルトに挑戦しよう

ではまた来週・・・。

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