住宅ローンのある人は投資してはいけないの?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

住宅ローンのある人は投資してはいけないの?

セミナーシーズンで大阪、福岡、名古屋、と全国を飛び回っています。セミナー会場で一番うれしいのは「分散投資で資産運用をして資産が着々と殖えています」と報告してくださる方にお会いできることです。最近そんなお話をされる方が増えています。

 セミナーの質問時間に最近よく聞かれるのが「住宅ローンを借りている人は投資をしないで借金返済した方が良いのでしょうか」という質問です。

●信用取引と住宅ローンの共通点
 住宅ローンを借りてその資金で株式投資をするのは信用取引をしているのと同じだと喝破したのは作家の橘玲さんです。確かに不動産を担保に借り入れを行いレバレッジ取引をすることになれば、担保の種類は違えど、自己資産以上の取引ができるという共通点があります。

拙書「資産設計塾 実践編」のQ&Aでも住宅ローンを借りている方は返済をまず行い、それから投資をするのが原則と書きました。

確かに分散投資によって年間平均7%のリターンが期待できるのであれば、それ以下のレートで借りている住宅ローンを返済するより資産運用に資金を回した方が効率的に見えます。しかしそれではリスクを考えていないのです。

住宅ローンが1000万円残っていて、手元にある1000万円を返済に回さず、投資してしまい、資産が減ってしまったらせっかくの返済資金がなくなってしまう。これではリスクの取りすぎです。

●早く返すか早くやるか
 しかし最近、住宅ローンが残っている人でも返済をしながら資産運用を始めた方が良いと思うようになりました。その理由は住宅ローンを完済するのを待っていては遅すぎるのではないかと思うようになったからです。例えば30年後にローン返済を終えてそれから運用をはじめるのでは30年間何も経験ができないことになってしまいます。それでは時間が勿体ないのです。

早く返すことも重要ですが、早く資産運用をはじめることも同じ位に重要です。それは資産が殖えるのに時間がかかるということもありますが、それ以上に早く始めることによって資産運用の経験を積むことができるというメリットがあるからです。

かと言って、返済に回せる資金の全額を投資に回した方が良いといった極端なリスクは取るべきではありません。経験としての資産運用は早くやるのが良いと言うことです。

つまり住宅ローンの返済と資産運用はどちらが先ということではなく、どの程度までなら資産運用に資金を配分すべきなのかという程度問題になります。早く返すと早くはじめる、という2つの相反する目的を達成するためにどこで折り合いをつけるか、なのです。

●リスクの観点を忘れず運用してみる
 ポイントはもし資産運用をして失敗してしまったらどのくらいのダメージになるのかを常に意識することです。分散投資の一例である「標準的なアセットアロケーション」で運用すると最悪の場合でも資産の20%以内に損失を抑えられるという結果があります。つまりこのような分散投資で100万円投資をしても最悪で20万円までの損失に抑えられるという予測が立ちます。そのような事態になっても住宅ローンの返済に支障が無いと判断するのであれば、はじめてみるのが良いと思います。

最初は少ない金額でリスクの絶対額を小さくすること、そして運用対象を分散させて株、外貨、債券、不動産といったアセットクラスに資金を分けて投資することが大切です。

住宅ローンも長期でお付き合いするものですが、資産運用も同じです。短期の結果に一喜一憂するのではなく10年単位の成果を目指してじっくり取り組むものです。

またセミナー会場で一人でも多くの方からうれしい報告をお聞きできるのを楽しみに来週末は名古屋、岡山に行ってきます。

今回の話のまとめ---------
●住宅ローンを借りながら投資でリスクを取りすぎるのは禁物
●ローンを早く返すのも大切だが投資を早く始めるのも大切
●ローンがあっても最悪のリスクを想定しながら少額から早く始めるのが正解
ではまた来週・・・。

マネックスからのご留意事項

「資産設計への道」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧