子供へのお金の教育はタブー?

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

子供へのお金の教育はタブー?

大学を卒業するまで、自分が受けた教育にはお金に関するものはほとんどありませんでした。金融機関に勤務し株式投資などで失敗も経験する中で自分でお金との付き合い方を学ぶしか知識を得る方法はありませんでした。

 最近子供の教育を専門に取扱う雑誌を書店で良く見かけます。どちらかというと学力をどう伸ばすかに重点が置かれているようですが、学力と同じくらい社会人になってから必要なのはお金に対する知識ではないかと思います。
 日本でお金の教育が広がらない理由はいくつかあります。例えば、「守銭奴」といった言葉に象徴されるようにお金に対するネガティブなイメージもその1つです。しかし現実には資本主義社会の中で毎日お金と付き合いながら生活しているのです。お金をタブー視しても逃れることはできません。

 ただしお金の教育は投資だけではなくいくつかのステップがあると思います。
●お金の教育とは?
 お金の教育で最初に子供たちが知っておくべきことは、働くことの重要性です。労働の対価としてお金が得られるという当たり前のことを実感することでお金の大切さや両親への尊敬の念が強まるのではないでしょうか。最初に必要なお金の教育とは、このお金を得るために必要な労働を体感することです。
●マネーマネジメント
 その次に考えることは稼いだお金をどうやって使うか。つまりお金の管理方法です。収入をあっと言う間に使ってしまったり、収入よりかなり大きな支出を計画性も無く失くしてしまうのはお金の管理(マネーマネジメント)について学んでいないからです。

2005年に全国の裁判所に申し立てた自己破産の件数は個人・法人合わせて約20万件となっています。お金の管理能力だけが理由ではありませんが、子供のうちにマネーマネジメントを勉強しておくことはこのような悲劇を防止するために役立つのです。

●株のがっこう
 このような稼ぐことの重要性、稼いだお金を計画的に使う大切さを学んだら、次に学ぶべきなのがお金に働いてもらうこと、です。せっかく自分が得たお金という資産を有効活用する「資産運用」の勉強です。

実はマネックスが1月に小学生・中学生を対象にして開催した「株のがっこう」が書籍にまとめられ今月発売になりました。

『中学生への授業をもとにした世界一簡単な「株」の本』
―「お金に困らない子」はこうして育つ!http://www.monexuniv.co.jp/book/#gakko

「株のがっこう」と言っても取り扱う内容は銘柄選びの方法だけではありません。経済の仕組みから分散投資の重要性、そして長期でお金を殖やすことによって自分の夢をかなえられる可能性があることが書かれています。子供に株の投資だけ教えるのはけしからん、と批判する意見もありましたが、中身をご覧いただければ、そのようなことはないことがおわかりいただけると思います。
●子供の可能性
 実際に参加した子供たちの感想も掲載されていますが、1日の授業と実習によって大人顔負けの金融に対する知識を身につけているのが手に取るようにわかります。私も2時間目の授業を担当し、子供たちと話をする機会がありましたが、子供の興味のあることに対する高い集中力に驚かされ、体系的なお金の教育を早い時期からはじめることの重要性を感じました。

●資産運用は教えにくい
 残念ながらお金の教育の中でもこの資産運用は教えにくいのが現実です。お金に対する偏見以上に、損をした時に教えた人の責任問題になるという恐怖感が二の足を踏ませるのだと思っています。

資産運用には絶対は無いわけで、勉強すれば絶対に成功するとは限らないところに難しさがあります。努力が報われるとは限らないという現実です。しかしだからといってやらなくても良いということではありません。

リスクがあるが故に、そのリスクをどうやって減らしていくかを考えて実行する必要があるともいえるのです。

この本は中学生への授業をもとにした、と書いてありますが、大人でも参考になる内容です。子供に教えるために資産運用の勉強をしてみようと思っているうちに親の方が資産運用を学べる、という副次効果も期待できるかもしれません。

拝金主義者になっては困りますが、お金との正しい付き合い方は小学生の高学年くらいからはしっかりと教えておくべき、というのが子供たちと一緒に勉強して感じたことです。

●お金の教育に関するオープンな議論を
 以上はお金の教育についての私の個人的な考え方ですが、金融関係の仕事をする人間のバイアスがかかっているかもしれません。ただ、お金の教育はタブー視するのではなく、様々な立場の方の意見を交わしながらどのようにしていくべきなのか考える段階にきていると思います。

今回の話のまとめ---------
●小学校高学年くらいからお金の教育ははじめてもよい
●お金の教育といっても稼ぐ、管理する、運用する、の3つがある
●お金の教育をどうすべきかはもっとオープンな議論が必要

ではまた来週・・・。

マネックスからのご留意事項

「資産設計への道」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧