シンプルに考える老後の資産設計

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

シンプルに考える老後の資産設計

 老後をどうするか、という団塊向けのムック本が大量に書店に出回っています。いずれ自分にも関係のあることなので何冊か読んでみましたが、どうもピンとこない内容ばかりです。何でかな、と思って気が付いたのは複雑な年金制度の説明のようなミクロの話ばかりで、自分の将来の設計に必要な情報が得られないからです。

 例えば何年生まれなら年金はいくらもらえるといった試算表がありますが、数年後に受給できる人ならともかく、10年以上先(もしかしたら20年以上先)に受給予定の私のような人にとっては仕組み自体が変わっている可能性が高いでしょう。インフレの問題もあり、今から細かく試算してもその通りには恐らくならないのです。

 私が知りたいのは、大体いくらくらいあったら老後安心できるのかというざっくりとした話です。年金が10万円もらえるか12万円もらえるか、よりも人生全体を設計するグランドデザインの考え方を整理したいのです。

■将来は思い通りにならない
 将来の計画を立てても人生は思い通りにならないのが現実です。しかしだからといって何もしないのとわからないなりに計画を立てるのでは将来の成果に大きな差がでます。例えば老後に必要な資金が4千万円なのか5千万円なのか概算でしかわからなくても、それさえ知らないでやみくもに資産を積み上げようと焦っている人よりはよっぽど精神的にも安心できます。

 人生が思い通りにならないのは将来の収入がわからない、将来病気やケガなどでどの位コストがかかるかわからないといった不確定要因があるからです。しかしそんな不確定要因を考え始めると複雑になるばかりで将来への見通しがつかなくなってしまいます。

 まず毎月の通常の生活パターンのシミュレーションを行い、その上で家のリフォーム、車の買い替えといった大きな臨時支出や、病気・事故による不慮の支出などへの備えを考える、という順番で考えれば話は単純化できます。不定期に発生するイベントは後から別に考えれば話がシンプルになります。
■まず毎月の収支の予想をざっくり決めてしまう
 老後の生活費はいくらあれば安心なのでしょうか。月38万円必要という調査結果もありますが、家計調査年報では全国平均で月25万円となっているようで、居住地や生活スタイルによってかなりの個人差があるのが現実です。少なくとも現状の生活費より多くなることは無いでしょうし、年齢が高くなるとさらにコストがかからなくなるでしょう。

 一方の受け取る金額は年金、資産運用が中心ですが、年金はいくらもらえるかわかりませんから、例えば月10万円と決めてしまいます。毎月の生活費も予想がつかないの場合、仮に現在の毎月の生活費の80%を老後に使うと決めて計算してみます。するとこんな計算式が成り立ちます。

老後に毎月自分で工面するお金=今の生活費x80%−10万円

 例えば毎月30万円で生活しているなら老後は24万円。そのうち10万円は年金で残り14万円を毎月自分で手当てするということになります。これは運用と資産の取り崩しでまかなうのが原則です。

■資産設計ピラミッドの頂点をどのくらいの高さにするか考える
 人生を横軸に取って、資産額を縦軸にグラフ化してみるとピラミッドのような三角形が作れます。これを「資産設計ピラミッド」と呼んでいますが、資産は定年までは右肩に上がり、その後は資産を使っていくことになりますので右肩下がりの3角形になるのです。

 このピラミッドの頂点の高さ(定年時の資産額)をどの程度にしておけば老後安心できるかを考える必要があります。

■資産の取り崩しにいくら必要
 先ほどの例では毎月14万円を自分の資産から手当てすることになります。老後を30年と仮定して、定年時にある資産から毎月14万円を引き出していって30年間無くならないために必要な金額は運用レートによって変わりますが
運用しない場合 5,040万円
3%で運用した場合 3,293万円
5%で運用した場合 2,583万円

 となります。老後に取ることができるリスクから考えると、3%の運用というのが標準的なケースになります。つまり定年までに約3,300万円、それに臨時の出費、不慮の支出に備えるお金をどうやって作るかの戦略を立てることになります。これらを700万円としてみると合計で4,000万円を定年までにどうやって作るかを考えることになります。もちろん退職金が1,000万円もらえそうというなら3千万円を作る方法を考えればよいのです。

 こんなシンプルな計算方法でざっくりとした計画を立て、必要に応じて修正すれば最初の一歩としては充分です。

■30歳、40歳、50歳で異なる資産運用
 定年前の資産運用は定年後よりリスクを取ることができます。例えば年平均5%で運用と仮定します。30歳で資産ゼロ、40歳で資産500万円、50歳で資産1,500万円という3人が毎月積み立てに必要な金額はいくらでしょうか。
 拙書「資産設計塾 実践編」に掲載されている表を使うと簡単に試算できます(45ページ)。

30歳なら資産ゼロでも毎月5万円の積立で30年後に約4千万円
40歳なら資産500万円で毎月7万円の積立で20年後に約4千万円
50歳なら資産1,500万円で毎月10万円の積立で10年後に約4千万円

 という概算結果になります。これを見るとわかることは早ければ早いほど目標達成が簡単になるということです。

■今が一番早い
 20代ではないから、とあきらめることはありません。人生が90歳までとしたら60歳の方でもまだ運用期間は30年あります。これからどのように資産を活用するかで30年の生活が変わってくるのです。誰にとっても共通することは「今が一番早い」ということ。

 年末にざっくりプランを立てて来年からはじめてみてはいかがですか?
今回の話のまとめ---------
●老後の不安はまず毎月の収支をシンプルに考えて具体額を出してみる
●ピラミッドの頂点にいくら必要なのか計算して、どう作るか考える
●手遅れ、とあきらめないで、来年からはじめてみる

ではまた来週・・・。

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