2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
老後の安心にはいくら必要なのか?定年間近の方だけではなく20代30代の方でも気になるところだと思います。「老後資金」でグーグル検索して出てきた金融機関のページには「老後には1億1千万円かかる」と記載されていました。あまりの大きな金額に悲観的になってしまいますが、金額に驚くのではなく、情報の出所と計算根拠を確認することが大切です。
■ 過大に不安を煽る金融機関
一般にこのような金融機関の必要老後資金のシミュレーションは金額が過大になる傾向があると思っています。なぜなら必要金額が少ないよりも多い方が個人の不安心理を増幅することができ、金融機関への相談が増え、最終的には金融商品の販売につながるからです。
現実問題として、老後に必要な資金にはかなり個人差があります。モデルケースは具体的に考える参考にはなりますが、自分の場合はどうなるかを知る必要があります。と言っても数十年先のことは予想のつかないことがほとんどですから、まずは最低限必要な金額とそれをどうやって作るのか、から考えておきましょう。
■ 2000万円で20年間の生活費を確保する
以前「お金のゼミナール」で定年後の人生に、お金がいくらかかるかを試算しました。
書籍で読むことができます「お金のゼミナール」
http://www.monexuniv.co.jp/book/
総務庁統計局のデータで、高齢無職世帯の公的年金などの社会保障給付による収入は月額約19万円。逆に総支出の平均は約28万円となっており、収入との差額である約10万円を自分の資産で補う必要があるという計算をしました。つまり毎月10万円を自分の資産から捻出しなければお金に困ってしまうというシミュレーションです。
男女差はあるものの、例えば65歳から20年間、この不足している毎月10万円の生活費を自分の資産から引き出すとすると、年平均3%で運用するとしても、資金が枯渇しないためには約1800万円が必要です。
この仮定では大雑把に言えば、65歳までに2000万円あれば、不足額がカバーされることになります。
定年後の人生に、お金がいくらかかるんだろう(ウェブバックナンバー)http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/m_seminar/20070902.htm
しかしこれでは、20年以上長生きした場合、資産が枯渇することを意味します。「長生きリスク」をヘッジできていないのです。終身でお金を受取ることができるようにするには、保険の活用が必要になると思います。
■ 一時払年金保険(終身年金)を活用する
すべての保険会社が取り扱いをしているわけではありませんが、いくつかの生命保険会社には一時払年金保険(終身年金)があります。これは例えば50歳の時に保険料を一括で支払い70歳から人生を終えるまで毎月決まった額を受け取ることができる商品です。
例えばある生命保険会社から入手したデータでは50歳に支払い65歳から終身で毎月10万円受取るケースで支払い保険料は約2000万円となっていました。つまり50歳までに2000万円を作り、一時払年金保険に加入すれば、65歳からの毎月10万円で長生きリスクもヘッジできるようになります。
このような保険は保険会社があまり積極的に宣伝していないようで、取り扱い会社も限られています。また保険料も会社によってバラツキがあるようですので、ご興味のある方はご自身で詳しい情報を収集してみてください。
■ 自分に本当に必要なお金を考えてみる
2000万円では毎月10万円しか使えないから足りないのではないか、と思うかもしれませんが、2000万円に到達しなければ、1億円にも手は届きません。いきなり高すぎるハードルにやる気を無くしてしまうより、現実的な目標を立ててそれを達成していく方が精神的にも気持ちが良く、成功する可能性も高くなると思うのです。
大前研一氏は、日本人の金融資産は年齢と共に右肩上がりで、死ぬときに一番資産が多くなっていると指摘しています。老後は徐々に資産を切り崩し、人生を終える時に資産ゼロになっていれば、資産は残せませんが、日々の生活はもっと豊かで選択肢の多いものになると思います。
過剰に資産を積み上げていっても、その先に豊かな人生は待っていません。将来は不確定ですから正しい数字は計算できませんが、現時点で自分に必要なお金がいくらなのか、考えてみることは資産運用の方法を決める大切な要素です。
今回の話のまとめ---------
■ 老後に必要なお金がいくらかは個人差がある
■ 終身年金の活用で長生きリスクをヘッジできる可能性がある
■ 自分の本当に必要なお金とその達成方法を考えてみよう
ではまた来週・・・。
(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見とは必ずしも一致しません。)
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