2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
マネックス・ユニバーシティが毎週発行しているメールマガジンでは「お金の相談室」という質問コーナーで読者の方からの相談を受付けています。最近は不安定なマーケットが続いていることから、投資を止めた方が良いですか?といった弱気な質問まで出るようになっています。
お金の相談室 第53回 「投資を止めるタイミングを教えてください」
http://www.monexuniv.co.jp/service/mailmagazine/backnumber/sodan/index.html
しかし世界を見渡すと、そんな短期的な相場の動きとは無縁のドラスティックな変化が起こっています。最新号の『The Economist』にはアセットマネジメント業界のスペシャルレポートが掲載されていますが、この中に紹介されている世界の資産運用業界の動きを見ると、相場変動を気にかけるよりも大切なことがあることに気付かせてくれます。
『The Economist』 アセットマネジメント特集(英語です)
http://www.economist.com/specialreports/displayStory.cfm?story_id=10715946
■ 資産運用ビジネスは成長産業
グローバルには資産運用ビジネスというのは成長産業です。資金の流入とマーケットの上昇で年平均15%の成長を続けてきました。今後も先進国の高齢化や新興国の経済成長によってマーケットの拡大が期待されています。
同誌の指摘によれば、これだけの成長産業であるにも関わらず、高い利益率が維持されているのは、価格による競争が起こりにくいからだと思われます。過去の運用実績に基づいてファンドを選択する傾向が強いと低コストだからと言って残高が積みあがるわけではないのです。
アセットマネージャーのベスト20には日本の運用会社は1社も入っていませんが、フィデリティ、バンガード、ブラックロック、JPモルガンといったマネックス証券でもお馴染みの会社がランキングされています。
このレポートから日本の個人投資家の資産運用ビジネスとの付き合い方のヒントを得ることができます。
■ 資産運用は規模の経済が働くとは限らない
資産運用の難しいところは規模が大きければ成績が良いとは限らないことです。運用資産が巨大になるとリスクコントロールなどは精緻に行うことができる一方、会社が官僚化する危険性があります。またファンド自体の売買がマーケットに影響してしまうデメリットもあるのです。運用方法にもよりますが、運用資産のサイズには適正な水準があるように思えます。
残高が大きいことだけでファンドを選んではいけないということです。
■ アルファを取るならアグレッシブに
運用して得られるリターンはアルファとベータに分解できます。ベータとはインデックスファンドなどに投資することで実現できる市場の変動からのリターンです。もう一つのアルファとはベンチマーク(市場平均)を上回る運用成果のことです。
アクティブファンドはインデックスファンドに比べて運用コストが高くなっています。したがってアクティブ運用のファンドを選ぶのであれば、インデックスを意識した、あまり変わらない運用スタイルよりも思い切ったリスクテイクをしているファンドを選んだ方が良いということになります。そうしないとせっかくインデックスを上回るリターンを実現してもコストで帳消しになってしまう可能性が高まるからです。
例えばスパークス・アセット・マネジメントが運用を行うこのファンドはベンチマークを設定しない「フォーカスファンド」と言え、日本では珍しいアグレッシブな運用が期待できるファンドと言えると思います。
スパークス・新・国際優良日本株ファンド
http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/new2008/news802r.htm
■ スピード感が必要な日本市場
今週、国内市場で新しいETFが大量に上場されることが、報道されています。野村アセットマネジメントが業種別の株価指数連動ETFを東京証券取引所に17本上場。日興アセットマネジメントも複数のETFを上場させるようです。
東証がETF追加(日経ネット記事)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080305AT2C2902J04032008.html
しかしグローバルにはETFは次の段階に入っています。指数に連動するだけではなく、インデックスを上回るリターンを目指す「アクティブETF」が登場する日も遠く無いようです(透明性の確保などの問題はあるようですが)。
日本のETF市場も進化を始めたようですが、グローバルなスピード感に比べると、まだまだ足りないように見えます。このような海外ETFの動きは情報収集しておくべきでしょう。
長期&グローバル、という視点で資産運用を考えていくことが最終的な成功への近道であることがおわかりいただけると思います。目先のことだけに捉われず、大きな視点で今の相場をとらえ、長期の戦略を考えていきましょう。
今回の話のまとめ---------
■ 資産運用の世界では大きいことが良いこととは限らない
■ アクティブ運用はコストに見合ったリスクを取らないと意味が無い
■ 資産運用は長期&グローバルに考える
ではまた来週・・・。
(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見とは必ずしも一致しません。)
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