不動産投資の2つの方法

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

不動産投資の2つの方法

不動産投資と聞いてどのようなイメージを持つでしょうか?昨年来の世界的な不動産価格の下落は、日本も例外ではなく、国内の住宅販売も先安感から消費者の買い控えが予想され、急激に冷え込んでいるようです。この時期に不動産投資というのは何だかタイミングの悪いものに見えるかもしれません。
 しかし、例えば国内で見ても不動産投資全体がダメなのではなく、さらに値下がりするものと、収益性から見れば下げにくいと予想されるものに2極化されています。「不動産=ダメ」と決め付けるのは勿体無い話です。なぜなら世の中が総悲観になっているのならその中で良いものを見つけ出せれば、掘り出しものを手に入れられるチャンスになるからです。実際、不動産投資をしている方の中には不動産が下がったほうが(安く買えるから)ありがたいと、言っている方が多くいることに驚きます。

 不動産投資と言っても、投資対象としては大きく2つあります。REIT(不動産投信)を使う方法と実物不動産に投資する方法です。

 先週、それぞれの不動産投資のエキスパートにお話を伺うことができました。みずほ証券の不動産アナリストの石澤さんと日本ファイナンシャルアカデミーの束田さんです。今回はマネックスメールをお読みの皆様にそのエッセンスをお届けします。

■ REITで投資する
 石澤さんからは不動産マーケットの環境とREIT投資の視点についてお話をうかがいました。彼の分析は大手証券会社のアナリストとしての精緻な手法で、膨大なデータの裏付けがある貴重なものです。要点をまとめるとこのような内容になります。

・オフィス賃貸市場は東京など大都市圏では引き続き好調
・分譲マンションの市況は大幅に悪化。東京郊外部では年後半に価格下落も・不動産業界全体の景況感は急速に悪化
・REITの配当利回りは10年国債プラス2%が中期的な目安
・住宅系REITの配当利回りは6%台に、オフィス特化型と格差が広がっている・スポンサー企業の信用度がREITの評価に大きく影響している

 石澤さんの資料によれば、先月時点では約半数の銘柄がPBR1倍割れとなり、配当利回りは平均で5%となっています。REITの市場価格は低下しているものの運用成績は好調であり、割安の銘柄が多いという分析をしています。

 その中で個人的に注目したいのはREITの2極化です。例えばマネックス証券の投資情報のスクリーニング機能で配当利回り順に銘柄検索すると予想配当利回りが10%を越えるREITが2銘柄あることがわかります。価格下落リスクはありますが、配当の高さがかなりのバッファーになることが期待できます。
■ 実物不動産投資をする
 一方の実物不動産投資については束田さんからお話を聞くことができました。実物不動産投資の特徴はほとんどの投資家がレバレッジを使い、少ない自己資金で高額の投資を行っていることです。束田さんご自身も不動産投資を行い、投資金額は約2億円。最近は自らの経験をスクールで教えている方です。 
 束田さんのお話の中で面白かったのは、実物不動産投資に向いている人、という分析でした。こんな人が向いているという意見です。

・不動産が好きである
・几帳面である
・粘り強い性格である
・強い意志を持っている
・勉強好きである
・面倒くさがり屋さん
・早期リタイアメントしたい方
・マイホームをお持ちの方
・マイホームをまだ購入されていない方
・賃貸暮らしの経験がある方

 束田さんの方法を見ていると、実物不動産投資というのは特別な情報や才能が必要なものではなく、慌てずに自分の視点を持ってリスクを管理できる人ならば挑戦する価値のあるものだ、ということがわかってきます。レバレッジをかけた不動産投資という束田さんの手法は「資産設計」の考え方とは異なるものですが、考え方は大いに参考になります。

 また不動産は複数の物件を保有しないと集中リスクがあります。マイホームを保有している方は自宅にリスクが集中しているわけですからリスク分散が必要であるという束田さんの主張には一理あります。

 束田さんのこれからはじめる人へのアドバイスは

・何でも自分でやり過ぎない
・先駆者に学べ
・土地勘のないところで買わない、遠隔地で買わない

でした。

■ 実物不動産投資とREITの違い
 もう4年以上前になりますが、このコラムで株式投資には3つの方法がある、と買いたことがあります。

自分でやる、人にやらせる、市場に合わせる(2003年12月12日)
http://www2.monex.co.jp/monex_blog/archives/004457.html
 
 不動産投資を株式投資に例えるなら、実物不動産投資は株式銘柄選択、REITはアクティブファンドでの運用と同じです。

 下がっているから止めるのか、下がっているからこそチャンスと考えるのか、考え方は様々ですが、天邪鬼の私としては最近の不動産の価格はとても気になるところです。

 お二人のお話の詳しい内容にご興味ある方は、マネックス・ユニバーシティの特典映像をご覧ください(手前味噌ですが、内容はかなり濃いです)。
今後、不動産投資はどうなる?(修了者特典2)
http://www.monex.co.jp/Etc/00000000/guest/G800/mu/mc_tokuten_comp.htm
今回の話のまとめ---------
■ 不動産投資には大きく2つの方法がある
■ REITに投資するなら国債とのスプレッド200bpが目安になる
■ 実物不動産に投資するなら個別物件の徹底調査が必要

ではまた来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見とは必ずしも一致しません。)

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