2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)
ちょうど1年前に米国ETFについてこのコラムで取り上げました。
外貨運用の新しい流れに乗り遅れるな
http://www2.monex.co.jp/monex_blog/archives/007786.html
あれから1年、取材を受けたAERAの臨時増刊「AERAマネー」の特集を見て驚きました。マネックス証券が米国のETFの取り扱いを6月2日から開始する予定だと書いてあったからです(37ページです)。マネックス証券からは正式発表はありませんが、AERAの情報を信じて、今回は勝手に海外ETFの話を進めてみたいと思います。
AERAマネー「今日からはじめる投資」
http://www.monexuniv.co.jp/new/2008/post_158.html
まず、海外ETFの商品選択ですが、投資対象、コスト、そして流動性の3つを考える必要があります。
■ 投資対象はまず海外株式
AERAには30本の国内外のETFが紹介されており、決定版と言われても選ぶのは簡単ではありません。実は「長期分散投資」に取りあえず必要なのは2本の海外ETFだけなのです。
分散投資の中で海外ETFを活用する資産の種類(アセットクラス)は海外株式です。なぜなら日本株は国内ETF、日本債券は個人向け国債、で対応できますし、外国債券(金利型商品)は外貨MMFや外債といった既存の商品に比べて魅力的と思われる海外ETFがまだ少ないからです。
海外株式を投資対象とする海外ETFは多数ありますが、インデックス運用であれば、まず下記2ファンドで始めるのが良いと思います。
iシェアーズMSCIコクサイ (NYSE ティッカーTOK)
iシェアーズMSCIエマージング (NYSE ティッカーEEM)
■ 海外株式インデックスはMSCIが基本
海外株式のインデックスとしてスタンダードなのがMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が算出しているものです。株式に関しては先進国を対象にする「ワールド」、新興国を対象にする「エマージング」そしてさらにこれから発展を期待する「フロンティア」に分けています。
MSCIのインデックス(英語ですが図表はわかりやすいです)
http://www.mscibarra.com/products/indices/equity/index.jsp
この「ワールド」から日本だけを除いたものが「コクサイ」と呼ばれるインデックスで日本の機関投資家の代表的な指標になっています。つまり、
MSCIワールド = MSCIコクサイ + 日本
です。先進国だけではなく新興国へも投資をするのであればこの「コクサイ」と「エマージング」を組み合わせればよいのです。つまり、
外国株式 = MSCIコクサイ + MSCIエマージング
となります。これで日本を除く先進国と新興国にバランス良く投資ができるのです。コクサイとエマージングの比率は投資可能銘柄の時価で比較すると88%と12%くらいになります。GDP比率は7:3程度でしょうから、組み入れ比率としては8:2くらいの比率で良いのではないかと思います。
外国株式に100万円資産配分するなら
iシェアーズMSCIコクサイ 約80万円
iシェアーズMSCIエマージング 約20万円
となります。
■ 海外ETFのコスト
海外ETFは国内の投資信託に比べ低コストというイメージがありますが、実際に計算してみないとわかりません。購入単位によって変わってくることがあるからです。いくらかかるのか購入する前に調べておきましょう。
米国株式市場に上場しているドル建てETFの場合、まず為替手数料がかかります。そしてドルで買い付けを行なう訳ですが、その時には販売手数料がかかります。これは証券会社によって異なりますが、1取引について最低手数料が決まっている場合、少額で取引すると手数料比率が高くなってしまいます。
そして購入した後は国内投資信託と同じように信託報酬がかかります。この保有コストは国内投資信託に比べかなり安くなっており魅力的です。
「コクサイ」と「エマージング」に連動した成果を目指す国内投資信託と、海外ETFとのコスト比較をしてみてください。
海外株式に投資ができる国内投資信託
http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G600/new2008/news8053.htm
いずれにしてもまずは銘柄を絞ってシンプルにはじめてみて、投資対象を広げたり特定の地域に投資したいときは別の商品をトッピングしていけば良いのです。
■ 問題は流動性
海外ETFは商品ラインアップが充実してくると、自分で好きな商品を部品のように組み合わせることができ、効率的な運用につながりますが、問題は流動性です。
特にご紹介したiシェアーズMSCIコクサイは、日本の投資家以外にはあまり意味の無い商品ですから、市場参加者が少なく出来高、残高共に他の商品より小さくなっています。
iシェアーズMSCIコクサイの取り扱い証券会社が増え、知名度がもっと上がり売買高が増えてくれば、個人投資家の投資環境はさらに改善していくことが期待できます。メリット、デメリットを確認した上で積極的に活用したい商品です。
今回の話のまとめ---------
■ 海外ETFは長期分散投資に活用できる商品
■ 海外株式を投資対象とするならまずは基本の2本から
■ コストだけではなく流動性にも注意
ではまた来週・・・。
(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見とは必ずしも一致しません。)
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