お金を使って社会貢献する方法は寄付以外にもある

2002年1月11日から2011年8月19日までマネックスメールに連載した マネックス・ユニバーシティ代表取締役(※連載当時)内藤忍の資産設計コラム。(現在は更新しておりません)

お金を使って社会貢献する方法は寄付以外にもある

 投資教育を仕事にしていると言うと、お金の殖やし方ばかりいつも考えているように思うかもしれませんが、最近考えることは、殖やし方よりもむしろお金の活用方法についてです。日本には必要の無いお金を手に入れて使い方がわからないことによって不幸になっている人がたくさんいる。殖やし方と同じくらい使い方も考える必要がある、そう感じるからです。

 かく言う私自身も自分のお金の使い方について、100%満足している訳ではありません。以前、このコラムにも書きましたが、ずっと悩んでいることの1つは自分のお金を社会に役立たせるために一番良い方法は何なんだろうか、という疑問です。

■ 寄付するだけで社会貢献と言えるのか?
 10年以上前に、アフリカの子供のサポートをするために毎月寄付をするプログラムに参加していましたが、続けているうちに自分のお金は果たして子供のためになっているのだろうか、と疑問を持ちました。つまり、
 
「寄付をすることは果たして世の中の役に立つのだろうか?」

という根源的な疑問です。寄付をすることで逆に自立を妨げることになってはいないのか。それは、旅行先の路上で貧しい子供に乞われるままお金を渡してしまう行為に似ているのではないか。お金をあげてしまうことが、逆にマイナスの影響を与えている可能性を感じ始めました。

 また、お金の使われ方についても検証が必要です。寄付をするのであれば、それがどのように使われ、どんな成果につながっているのかを確認しなければならない。ただ、お金を出すという行為だけで終わるのは、自己満足になってしまいます。寄付をしている団体から送られる会計報告の数字だけを見ていれば良いのか?

 考えれば考えるほど、結論が見えなくなり、結局何も行動を起こせなくなってしまいました。知識が無ければ、寄付をすることも怖くて出来ないのです。

■ 日本でも広がりつつあるマイクロファイナンス
 寄付ではなく市場メカニズムを活用した社会に役立つお金の活用法としてマイクロファイナンスがあります。

 マイクロファイナンスと言えば、ノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行が有名です。貧困層を対象に低金利の融資をビジネスとして行い、自立をサポートしながら、利益をあげています。また、米国にあるキヴァは、ネット上で資金の貸し手と借り手をマッチングさせるサービスを提供しています。キヴァは個人が資金提供者として参加もできるようですが、英語のサイトであり、日本からの参加はハードルが高いのが現実です。

 しかし、今月、ついに日本初となるマイクロファイナンスのファンド募集が開始されました。「カンボジアONE」という名称でミュージックセキュリティーズが取扱者となっています。詳しくはサイトをご覧頂くのが良いと思いますが、9月末には説明会も予定されているようです。

(コンプライアンス上の制約から、リンクを張ることが出来ないので
「カンボジアONE」で検索して詳細をご覧ください)

■ ビジネスの結果としての社会貢献
 社会貢献しているという意識さえ持たず、結果的に発展途上国に社会貢献を果たしている日本人まで現れています。2年前にマネックス・ユニバーシティでもインタビューさせていただいた、山口絵理子さんです。

小学校6年生のときの「いじめ」が今の自分の原点 - 山口絵理子さんhttp://www.monexuniv.co.jp/service/mailmagazine/backnumber/money/2007/post_27.html

 バッグの製造・販売というビジネスでバングラデシュと日本を結び付けています。社会貢献としてやっているのではなく、純粋な起業家としてビジネスをし、それが結果として発展途上国に貢献しているのです。今後はさらにネパールにも活動の幅を広げるようです。

山口絵理子さんが立ち上げた「マザーハウス」
http://www.mother-house.jp/

■ 社会貢献とは何か?
 寄付、マイクロファイナンス、そして発展途上国での起業。考えれば考えるほど「社会貢献」とは何か、という根本に突き当たります。しかし、どの活動も社会貢献という側面を持っています。さらに言えば、

 社会に価値を提供するという点からすれば、投資も社会貢献

と考えることも可能です。長期的に企業価値を拡大する会社に株式投資や債券投資によって資金を提供できるからです。企業価値が拡大するということは、社会に貢献していることの裏返しですから、その会社の資金面をサポートする投資もまた社会貢献と言えるのです。

 いずれの方法にも長所・短所があると思いますが、共通しているのは、規律を維持する仕組みを持ち、長期で持続しなければ意味が無いということです。途中でやめてしまっては意味がありませんし、投下された資源が効率的に配分されなければ、活動が行き詰ることになってしまうからです。

 自分の夢や目標をかなえるだけではなく、社会に価値を提供する納得できるお金の使い方を考えてみたいと思います。

今回の話のまとめ---------

■ お金の殖やし方と同じくらいお金の使い方は難しい

■ 寄付するだけが社会貢献ではない

■ 規律と持続性が必要なのは社会貢献も企業経営も同じ

では、また来週・・・。

(本コラムは筆者の個人的意見をまとめたものであり、筆者の所属する組織の意見ではありません。)

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
http://www.monexuniv.co.jp/

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