今知りたい!投資の悩みやお金に関する質問に資産運用の熟練講師がお応えします。
<質問>
いいと思って買った個別銘柄や投資信託がリーマンショック時には、5割まで落ち込みました。今は、買値の7割まで戻してきましたが、損切りすることができず現在に至っています。これまで買った個別銘柄(日本株)・投資信託はすべて塩漬けにしてしまいます。どのようにすればいいでしょうか。
<回答>
ご質問ありがとうございます。
今回は、プライベート・ファイナンシャル・プランナーの中桐啓貴がお答えします。
あらかじめ運用(投資)の評価期間が3ヶ月など短期間に定められている機関(期間)投資家と違い、個人投資家の方は、投資期間をご自身のライフプランに合わせ何十年と比較的長期に持つことができます。そのため長期的に成長する個別株や投資信託をずっと持つことによって大きなリターンが得られるとメリットがあります。
一方で今後上がる見込みがない、最初の目論見とは違った保有金融商品を損切りできないというデメリットがあります。人は損切りすることにとても痛みを感じますし、損切りするということは購入時の自分の決定を否定することになります。
また投資を継続していると追認のバイアスと言われるように、自分の決定を肯定するような情報ばかりを取捨選択するようになってしまいます。例えば、A社の株を買った後に、業績の大幅下方修正が出て、株価が30%下がったとします。自分の決定を否定したくないあなたはA社に対する悪い情報には耳をふさぎ、いい情報ばかりを探し始めます。そして、塩漬けにしてしまうのです。
次に買値の呪縛というのがあります。例えばロシアに投資をする投資信託を10000円で買った後に基準価額が5000円に下がったとしましょう。
そこでみなさんがよくする判断が「とりあえず買値の10000円に戻るまでは持っておこう。10000円になったら売ろう」という考え方です。
ここでは二つの決断をする必要があります。まずはこの投資信託が今後上がるのか下がるのかを考えます。例えば先ほどのように今後10000円まで上がると思っているのであれば、5000円の時に同じ口数を買っておけば、平均買付単価が7500円になり、より早く元本を回復する可能性があります。
一方、今後もこの投資信託が下がり続けると考えたとします。その際には投資しているマーケットが今後どうなるのかということに加え、この投資信託自体の個別の事情を考えます。純資産額も減り続けており運用会社も本気で運用していないような幽霊ファンドになっているという可能性もありえるからです。もし、その可能性が高いとあなたが判断したのなら、今すぐ損切りをして、今後上がりそうな投資信託に乗り換えるべきです。
全体のポートフォリオ上、もうこれ以上リスク資産に投資をできないという場合を除き、一番よくないのが理由もなく「買値に戻るまでは死んでも売らない」というスタンスです。これは決断を先送りしているだけで、何の解決にもならないのです。仮に投資した100万円が損切りすることによって50万円になるとしても、この50万円を今後どうやって増やすかに頭を切り替えなくてはなりません。今後上がる見込みがない金融商品を理由もなく持っているほどばからしいことはありません。
もう一度今保有する金融商品を見ていただき、もし下がっているものについては、その金融商品が今後上がるのか下がるのかを考え、買い増し、損切りの決断をして下さい。理由もなく塩漬けにすることによって、それらがいい塩梅に上がることはありません。
コラム執筆:中桐 啓貴 氏
プライベート・ファイナンシャル・プランナー
株式会社ガイア 代表取締役
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