第 203 回 焼肉屋を始める芸人から学べること

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第 203 回 焼肉屋を始める芸人から学べること

Q 40歳、男性、サラリーマンです。退職後の生活を支えるために資産形成を2010年から始めました。日本株を投資信託で積立てはじめたのですが、2010年の秋ごろから順調に値上りし、いま、売却すれば少しですが儲けがでます。今後の先行きもわからないし、「ここで取りあえず利益を確定しておいた方がいいよ」とアドバイスしてくれる友人もいます。迷える子羊にひと言お願いします。

A ご質問の内容を拝見すると、これは明らかに退職後のための資産形成を目指した投資ですね。しかも、安くなったらたくさんの口数を、高くなったら少なめの口数を買うという積立投資をされています。これは非常にパワフルな手法です。ただ、その前提は「続ける」ということです。

確かにご友人の言うように先行きが分からないと言えばわかりません。でも、大切なことは、あなたの場合、いまから25年後ぐらい経ったときに株式市場がどうなっているかということです。目先、不透明だから利益を確定するために保有株式を売却してしまうのは志半ばで投げ出しているようなもの。これはあまりにもったいない。仮に今後また弱気局面になったとしても、その時は安いコストで積立ができるのです。

もし、小さな儲けがでるからと言って売却する場合、二つのことを考えてみてください。まず、その利益をどうするかということです。どこかでおいしいものを食べるのですか?どこかに旅行にでも行くのですか?でも、それだと退職後の資産形成にはならないですよね。もうひとつは、また、相場の局面が良くなったときに再開すればいいのではないかということです。確かにそのタイミングがぴったり分かればそれも選択肢としてないわけではありません。では、あなたはその「いま」というのが分かりますか?それともまた、お友達の言うとおりにするのですか?

2011年1月の終わりに「賢い芸人が焼き肉屋を始める理由*投資嫌いのための「和風」資産形成入門」(講談社+α新書、880円)という本を上梓させていただきました。詳しくは本を読んでいただきたいのですが、賢い芸人さんが焼き肉屋を始めるのは、不安定な彼らの将来を安定させるために、将来、キャッシュフローという「金の卵」を産む焼き肉屋、つまり、ニワトリを育てているのです。サラリーマン生活は芸人さんほど不安定ではありません。しかし、定年は誰にも来ますし、そのとき、年金だけでは生活をする上で絶対に足りないのです。

あなたが資産形成を始めたのはまさにそのためだったはずです。芸人さんは決して焼き肉屋のビジネスを誰かに転売して、そこで売却益を得ようとは思っていないはずです。あなたもせっかく育て始めた金の卵を産んでくれるニワトリを水炊きにして食べてしまったり、他人に転売してしまったりしてはもったいないのです。

ただ、ひとつ、アドバイスがあります。あなたのポートフォリオ全体は分かりませんが、もし、株式投資が日本株のみなら、それに加えて海外の株式インデックスも加えた方が良いということです。我々の生活を支えてくれているのは、いまや日本企業だけではありません。世界中のあらゆる産業に属する企業のお世話になっています。これも拙著に詳しく書いていますが、大切なのは世界中の企業に感謝を込めた「おかげさま投資」なのです。そして、「いつまでに、いくら」というような時間の制約のない「永代投資」なのです。

コラム執筆:岡本 和久 ファイナンシャル・ヒーラー(R)

CFA 協会認定証券アナリスト (Chartered Financial Analyst)
I-O ウェルス・アドバイザーズ株式会社 代表取締役社長ウェブサイトはこちら http://www.i-owa.com/
長期投資仲間のウェブ・マガジン「インベストライフ」 http://www.investlife.jp/

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