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<質問>食料品などを中心に価格が上昇しているという話を聞きます。30代の私はインフレの体験がないので不安です。インフレのときは株式投資が良いそうですが、本当でしょうか。また、なぜなのですか?そして、インフレに対してどのような具体的な策をとったらいいのでしょう。
<回答>確かに新興国の生活水準が向上していることから食料品を中心に価格が上昇しています。私は、これが高率のインフレにつながるとは考えていません。ただ、いままでのようにデフレがずっと続くという前提で資産を預金に集中しておくというのはあまり賢い方法だとは思いません。これからは、ある程度、マイルドなインフレが時々、起こることはありえます。物価が3%でも上昇すれば、現金の価値は3%低下するのです。ですから、資産運用もある程度、インフレヘッジを念頭において行う必要があります。
一般にマイルドなインフレのときは株式のパフォーマンスが良く、マイルドなデフレのときは債券のパフォーマンスが良いとされます。それは概ね正しいといえます。ただ、株式も債券も、極端なインフレやデフレのときは経済そのものが混乱するので共に良いとは言えないのも事実です。一応、マイルドであるという前提で話をすすめましょう。
まず、不動産を買うときの例で考えてください。話を単純にして、全額、ローンで3,000万円のマンションを買ったとします。インフレになってマンション価格が4,000万円になったとしましょう。でも、あなたが借りて入いるローンの残高は3,000万円のままです。つまり、インフレのときは、おカネを借りてモノを持っているのが有利なのです。一方で、おカネを貸している人は損をすることになります。
反対にデフレだったらどうでしょうか。せっかく買ったマンションは2,000万円に値下りしてしまうかも知れません。しかし、借りている借金はもとのまま3,000万円という悲惨な状態になります。反対におカネを貸している人は得をします。世の中の物価は下がっているのに貸したおカネの額面は減らないからです。
いずれにしても、インフレのときはモノを持っているのが得、デフレのときはおカネを貸しているのが得ということになります。証券投資の対象には大きく分けて債券と株式があります。債券は借用証書ですから、債券に投資するということは、その債券を発行している人におカネを貸すということです。株式を持つということはその株式を発行している企業の純資産を保有するということですから、モノを持つということです。このことから、一般に株式投資はインフレヘッジになると言われています。
もうひとつ、例をあげましょう。例えばあなたの友人がパン屋さんをしています。非常に美味しいパンを製造販売しているのが有名になり、もう一台、製パン機を導入して生産能力を倍増したいと考えています。そしてあなたのところにおカネを融通してくれないかと相談に来ました。
このとき、あなたには二つの選択肢があります。ひとつは、「わかった。それではその機械を買うためのおカネを貸そう。その代り、毎年X%の金利を払い、X年後には元本を返済してくれ」と、言うわけです。この場合、世の中がどんなに好況になろうと、不況になろうと、パン屋さんが儲かろうが損をしようが、一定のあらかじめ定められたおカネを受け取ることができます。
もうひとつの選択肢は、「わかった。それでは、私がおカネをあなたの会社に出資しよう。その資金で製パン機を買ってくれ。ただし、儲けの半分は私がもらいたいがそれでいいな」というものです。この場合、思惑に反してパンの売上が伸びなければあなたは資金の回収が難しいかも知れません。でも、パン屋ビジネスが大成功すれば、その利益の半分はもらえるので大もうけです。言うまでもなく、前者が債券投資、後者が株式投資ということです。
あなたは株式投資を選んだとしましょう。世の中がインフレになります。理由はともあれ、あなたが出資したパン屋さんはパンの値上げをします。そのパンの消費者であるあなたは、値上げ分だけ生活が苦しくなります。しかし、同時にその値上げによってパン屋さんの利益が増加するなら、その利益増加があなたの投資収益として返ってくることになります。このようにして株式投資が物価上昇に対するヘッジになるのです。
でも、パン屋さんの値上げの理由が小麦価格の上昇だったらどうでしょう。パン屋さんに値上げの利益は発生せず、利益は小麦の生産者のもとに行ってしまいます。ですから、あなたとしては、パン屋と小麦生産者の株を両方持つ必要があることになります。
もちろん、あなたはパンだけで生活しているわけではありません。我々の生活を支えてくれる商品やサービスすべての価格上昇に対してヘッジをしなければなりません。当然、日本だけではなく、世界中のあらゆる産業に投資をする必要があるのです。
世界中のあらゆる国のあらゆる産業に投資するのは簡単です。グローバルなインデックス投資信託を一本保有すればよいのです。ですから、インフレが心配なら、毎月の収入のごく一部でもこのような投信に積立て投資しておけば良いということになります。
コラム執筆:
岡本 和久 ファイナンシャル・ヒーラー(R)
CFA 協会認定証券アナリスト (Chartered Financial Analyst)
I-O ウェルス・アドバイザーズ株式会社 代表取締役社長ウェブサイトはこちら
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