第281回 継続してウォッチすべき、各国の指標やニュースなど

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第281回 継続してウォッチすべき、各国の指標やニュースなど

<質問>
2012年下期の投資を考えるにあたり、着目しておきたい、世界各国の指標やニュースなどはありますか?

<回答>
以前の原稿にも書きましたが、やはり欧米においては最も注目すべきは失業率に象徴される雇用情勢ということになると思います。先進国の中で大きなウェイトを占める欧米の景気動向を大きく左右するポイントですのでこれが最優先ということになると思います。

他方で欧米では政府の財政・債務問題が同時併発しているため、無理に財政出動を行えば財政の悪化が懸念されます。失業率低下・景気改善のために政府がお金を使うかどうか、そうではなく財政改善策をとるのか、という点も注目です。欧州の政府債務問題は依然深刻な状況が続いており、安易な財政出動も、反対に雇用情勢を悪化させる財政緊縮策のいずれをとってもどちらかが悪化してしまうことになります。また、米国では11月6日の大統領選の1つの争点にもなっている「財政の崖」問題(なんらかの対策を講じなければ2012年末に減税終了と政府支出自動削減が同時に発生し、景気を悪化させる)があります。

こうした中、欧米ではこれまで大幅な量的金融緩和が行われてきており、供給された資金が本当に景気を良くすることができるのか、景気を刺激する効果はほとんどなく、リスク資産の価格上昇・不況下でのインフレ・通貨価値下落・中央銀行の信認低下を招くだけに終わってしまうのか、後者を懸念する声は少なくありません。量的緩和の効果がどのように出るか、というのも注目ポイントに挙げられると思います。

また、新興国においても景気減速懸念が出てきており、今後の新興国市場においては成長が持続できるのかどうかというのが最大のポイントになってくると思います。新興国全体としてもそうですし、個々の国毎にも同様です。中でも、新興国の中で最も大きな経済規模を誇る中国の状況はアジアの周辺国をはじめ世界中の国に大きな影響を与えます。中国ではまもなく政権交代があり、新体制へと移行します。新体制下の中国がどのように進んでいくのか、今後も持続的な成長が可能なのか、といった点に世界中の注目が集まっています。

また、中国の新体制への移行を前に高まる緊張感の中で発生した日中関係の悪化は、私たち日本人にとって重大な関心事というだけでなく、GDP世界第2位と第3位の国の間での問題であり、この問題の動向には注視しておく必要があると思います。

このように世界的に多くの懸念材料がある中で行われる各国の量的緩和により、大量のお金が市場に供給されて小さな市場に流れ込めば、需給に大きな変化を与えて価格上昇を引き起こす可能性があります。こうした懸念材料によるマイナスと、懸念払拭によるプラス・量的緩和によるプラス、がせめぎ合っていくと考えられます。

コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本 」がある

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