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<質問>
依然として景気回復の動きは鈍いにもかかわらず、先週海外の株式市場では株価上昇が続いていたようですが、どのような背景があるのでしょうか?
<回答>
ご質問、どうもありがとうございます。今回は、JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。
まずは世界の主要国の株式市場の上昇率を見てみましょう。今回の株式市場の上昇トレンドが始まった2012年5月末から2012年10月25日までの上昇率(※1)を計算すると、スペインの28%、イタリアの19%を筆頭に、ギリシャ、ハンガリー、ポルトガル、ベルギー、デンマーク、オランダ、ドイツと欧州の国々が軒並み15~20%の上昇率で上位に顔を出しています。一方、上昇はしたものの、上昇率が低く、下位に沈んだ国々を眺めてみると、1%程度のマイナスとなった台湾を筆頭に、2%程度しか上昇していない韓国、5%程度の日本、フィリピン、タイとアジアの国々が居並んでいます。同じアジアの中でも、香港、インドネシア、インドのように15~20%程度上昇した国もありますが、全体としては10%以下の国が大半で、他の地域と比べると低い水準です。
いうまでもなく、このところの株価の上昇には9月の日米欧の追加金融緩和が少なからず影響しているものと思われますが、5月末からの国別の上昇率をこのように並べてみると、米国の雇用統計の改善や住宅市場の回復よりも、欧州財政問題に対する不安の後退が一番の要因であったことが推察されます。実際、5月の出来事を振り返ると、7日の仏大統領選挙でオランド氏が当選、15日の就任式直後に訪独、早速、メルケル首相と初の会談に臨んでいます。一方の独のメルケル首相はというと、13日に行われた独の最大州の州議会選で与党、キリスト教民主同盟が過去最悪の大敗を喫し、それまでの緊縮一辺倒の財政政策の見直しを余儀なくされ、その結果、紆余曲折はあったものの、EUを支える2大国がユーロ崩壊を全力で阻止する方向で歩調を合わせることとなったのが5月です。その後の欧州中央銀行による相次ぐ金融緩和措置や、欧州委員会による銀行同盟構想も、基本的には、この線に沿った動きなので、つまりは、ここで潮流が変わった!ということで、それが、このところの株価上昇への起爆剤になったと考えられるわけです。
一方で、気になるのがアジアの鈍さですが、これまであまり積極的に金融緩和を進めてこなかったアジアの国々ですが、10月に入って、韓国、タイが相次いで利下げに踏み切っています。ここに来て中国の株価がやや勢いを取り戻していますし、物価上昇率の落ち着きを踏まえての、このような金融緩和措置が継続すれば、アジアの株価にもプラスの影響が出てくる可能性があると思われます。
(※1)MSCI各国別指数の現地通貨ベースでの上昇率
コラム執筆:
鈴木英典(すずき・ひでのり)
JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社
投資戦略ソリューション室長
JPモルガン・アセット・マネジメントのホームページにおいて、連載コラム「投資耳(ミミ)」や「資産運用の井戸端トーク」を執筆。
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