第286回 J-REITの価格上昇の背景に不動産市況底打ちへの期待あり!?(JPモルガン・アセット・マネジメント)

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第286回 J-REITの価格上昇の背景に不動産市況底打ちへの期待あり!?(JPモルガン・アセット・マネジメント)

<質問>

景気が後退局面に入った可能性が高いというエコノミストの意見が増える中で、このところJ-REITの価格が上昇していますが、どうしてなのでしょうか?その理由や背景を教えてください。

<回答>

ご質問、どうもありがとうございます。今回は、JPモルガン・アセット・マネジメントの鈴木英典がお答えします。

まず、J-REITの価格の動きを確認しましょう。実は東証REIT指数が大底を打ったのは2011年11月のことですが、今回の上昇局面ということになると概ね今年の6月ぐらいからと考えられ、そこからの上昇率は20% を超えてきています。11月14日に野田首相が衆議院解散に言及してから、日経平均株価も8%ほど上昇しているため、これも支援材料の一つであることは間違いありませんが、東証REIT指数が上昇し始めたタイミングの方がずっと早いので、それ以外にも要因があると考える方のが自然です。

実は、今回のJ-REIT上昇の背景には世界的な不動産市況の回復があると思われます。不動産価格は、株式市場と同様、2008年の世界金融危機の際に世界中で大幅に下落しました。米国や一部欧州では不動産バブルが崩壊したという見方もあり、地域や用途によって異なりますが、下落率は2008年から2009年にかけて概ね15%から35%にも達しています。しかし、2010年に入ると大部分の国で不動産市況は回復し始め、地価は上向きとなりました。ただし、株式市場が2009年の早い時期には回復過程に入っていたことを考えると不動産市場の動きは株式に比べて緩慢です。この違いには、日々頻繁に取引が行われる株式市場に比べて、実物資産である不動産は、取引頻度が低く、保有期間も長いため、上がる時も、下がる時も価格の動きが緩やかだという特徴が表れていると思われます。そして、動きが緩やかな不動産市場の中でも、特に、緩やかなのが日本市場です。世界の不動産市場が2010年には回復に向かう中で、日本の場合は2011年になっても下落基調が続き、上昇に転じる明確な兆候は見られませんでした。

しかし、2012年に入ると、徐々にではあるものの、日本の不動産市場も、いよいよ底打ちの気配が窺える指標が相次いで出てきました。
例えば、3月に国土交通省が発表した2012年の公示地価。全体としては、3.0%の下落でしたが、4年連続の下げ幅縮小です。特に、三大都市圏の下落率は1.5%まで縮まり、地価が上昇に転じた地点数も東京が前年の81から93に、大阪が8から166に、名古屋が82から154に各々増加しています。国土交通省でも、名古屋はほぼ底打ち、東京や大阪も2011年後半には下落率が縮小し、かなり地価の回復がみえてきたと説明しています。

また、国税庁が7月に発表した2012年路線価も全体では2.8%の下落となったものの、前年より下落幅は縮小、東京都-1.2%、大阪府-1.7%、愛知県-0.5%と、マイナスとはいうものの、ゼロに極めて近い水準にまで近づいています。
そして、国土交通省が11月22日に発表した今年7月から10月の地価動向報告では、ついに地価底打ちの兆候がはっきり出てきました。というのも、この報告では、リーマン・ショック前の2008年第1四半期以来、実に4年半ぶりに地価上昇地点の数が下落地点の数よりも多くなったのです。

このようにREIT価格の上昇には、待ちに待った日本の不動産市場回復への期待が反映されているものと思われます。

もちろん、欧州の債務問題や米国の財政の崖問題もあり、先行きが不透明なことに変わりはありませんが、前述したとおり、不動産市場は、きわめてゆっくり動く傾向が強いので、もし、一旦底打ちすれば、大きな経済的ショックがない限り、しばらくは回復の継続が期待できそうです。

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