第400回 相場に一喜一憂・・・。そんな時に考えてみたいこととは?

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第400回 相場に一喜一憂・・・。そんな時に考えてみたいこととは?

<質問>

相場に一喜一憂しがちです・・・。何かアドバイスをお願いします。

<回答>

市場の短期的な変動に一喜一憂してしまうのであれば、リターンの要因を分解して考えるとよいと思います。例えば日本の株式に投資する場合で、株価が15,000円、1株当たり利益(EPS)が1,000円、PERが15倍というケースを考えてみましょう。以下の数式が成り立ちます。

PER=株価÷EPS

株価=EPS×PER

株価変動率=(1+EPS変化率)×(1+PER変化率)-1

個別銘柄であれば、短期的にEPSが大きく変化する場合もありますが、それでも毎月、毎日、毎秒、と目まぐるしく変わるということは考えにくいです。ましてや、分散されたポートフォリオの場合、EPSが短期間にめまぐるしく変化していくということは起こりにくいでしょう。すると、短期的な株価変動はEPS変化率が0の状態で、PERが変化しながら株価が変動している、ということになります。当然と言えば当然のことです。EPSが1,000円のまま変化のない株式をそれまでの15,000円から16,000円に買い上がれば、PERは15倍から16倍に上がります。短期的な株価変動に一喜一憂するというのはこうした変化に一喜一憂しているということです。

一方、中長期的に企業利益が成長していけば、例えば年率10%の利益成長が10年続けば利益変化率は159%になり、20年続けば573%にもなります。すると、PERが変化せずとも株価は10年で159%上昇、20年で573%上昇することになり、PERが上昇すれば更にプラス、たとえPERが20%低下してもそれぞれ107%、438%の株価上昇となります。更に、短期間ではほとんどリターンを押し上げない配当金も10年、20年とどんどん積み上がっていけば大きくリターンを押し上げます。これが長期投資のリターンの積み上がり方です。

しかし、多くの人は以下の3銘柄のうち、Aが最も魅力的であると考えてしまいます。

【銘柄A】
利益成長率:年率2%

過去1年のEPS変化率:2%

過去1年のPER変化率:40%

過去1年の株価上昇率:43%


【銘柄B】
利益成長率:年率6%

過去1年のEPS変化率:6%

過去1年のPER変化率:20%

過去1年の株価上昇率:27%


【銘柄C】
利益成長率:年率10%

過去1年のEPS変化率:10%

過去1年のPER変化率:0%

過去1年の株価上昇率:10%


先ほどの話を踏まえて考えれば、今後長期投資をするうえで最も魅力的なのは銘柄Cであるはずですが、多くの人は大きく値上がりしてきている銘柄Aが「今後も上がり続ける銘柄」のように思えてしまうのです。Aのような銘柄は、短期的に割高化が進んでいるのですから、当然ながら人気を集めていることが多く、ファンドであれば資金流入上位にランキングされ、「売れている、しかも上がっている」ともてはやされます。しかし、銘柄Aは短期的に大きく割高化が進んだことで、今後PERが下落する可能性をはらんでいます。これが高値掴みをしやすいメカニズムです。

こうしたことを考えてみると、短期的な価格変動に一喜一憂しにくくなるのではないでしょうか。

コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「外資系金融マンがわが子に教えたい「お金」と「投資」の本当の話」、「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

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