第404回 分散投資を検討するときに必要なことは?

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第404回 分散投資を検討するときに必要なことは?

<質問>

資産運用の見直しを検討しています。投資先の分散を検討する際に参考になる基準や情報などがあれば教えてください。

<回答>

投資先の分散を検討する基準についてお話しする前に、まず分散投資の効果について少しご説明したいと思います。分散投資の目的と効果としてよく言われるのが「卵を1つのかごに盛るな」の例です。もしポートフォリオの全ての投資資金100%を1社だけの株式に投資した場合、その1社が破たんするとすべてがゼロになってしまいますが、100社に1%ずつ分散投資をすればたとえ1社が破たんして株式の価値がゼロになったとしてもダメージを受けるのは1%のみで残りの99%は助かる、という話です。実はこの話というのは分散投資の主な効果3つのうちの1つでしかありません。

分散投資には主に3つの効果があり、その3つとは①リスク要因の分散ができる、②リスクを抑えることができる、③リスクとリターンのバランスが良くなる、です。先ほどの卵の話は①の効果について説明したものです。①は投資する銘柄数を増やせばある程度それに比例して分散効果が高まることが期待できますが、②と③の効果についてはやみくもに組み合わせたり、単に投資先の数を増やしても効果は期待できません。

②のリスクを抑えることができる、という効果は例えば日本国債のリスクが2%、日本株式のリスクが18%だったとします(注1)。もしこの2つの資産に半分ずつ投資した場合、リスクは2%と18%の平均の10%になりそうですが、実際にはそうはなりません。この2資産の相関係数(注2)はおおむね-0~-0.5くらいで、2資産は逆方向に動くことが多い傾向があります。このように、相関が低い資産同士を組み合わせた場合、ポートフォリオ全体のリスクは2資産のリスクの加重平均(ここでの例の場合は10%)よりも低くなります。これが分散投資の効果②です。また、単一資産の場合はハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターン、の原則は必ずしも当てはまらず、ハイリスク・ローリターンというものも多く存在しますが、相関の低い資産同士を組み合わせると、リスクとリターンのバランスが良くなり、同じリスク量でより高いリターンを得たり、同じリターンを得るためにより少ないリスク量で投資を行うことができるようになります。これが分散投資の効果③です。

注1:ここでのリスクは「値動き」という意味で、年率リターンのブレ幅を標準偏差で表すものです。
注2:相関係数は2つのグループの数字が同じ方向に動く度合いを1~-1で表し、1に近づくほど同じ方向に動くことが多く、0に近づくほど関連性が低く、-1に近づくほど逆方向に動く可能性が高いことを示します。

つまり、②と③の分散投資の効果を期待するためには、各資産が違う動きをするもの同士、相関係数の低いもの同士、を組み合わせる必要があります。例えば、日本の株式と外国のREITを組み合わせることを考えてみましょう。この2つの資産は日本と外国で投資地域が異なり、株式とREITでアセットクラスも異なります。すると、一見、この2つの資産に分散投資をすると分散効果が期待できるような印象を受けますが、両者の相関係数はおおむね0.6~0.8くらいを示します。つまり両者の動きは非常に似ていて、片方が上がった時にもう一方も上がり、片方が下がった時にもう一方も下がる、ケースが多くお互いを補完し合う関係にありません。これでは、①の分散効果は期待できても、②と③の分散効果は期待できません。

このように、ポートフォリオを見直すタイミングなどで、組み合わせる資産同士の相関係数をチェックしてみるとよいのではないでしょうか。


コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「外資系金融マンがわが子に教えたい「お金」と「投資」の本当の話」、「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

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