第405回 「長期的なリターンを狙いたい・・・」大切な2つのポイント

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第405回 「長期的なリターンを狙いたい・・・」大切な2つのポイント

<質問>

20代男性です。毎月1万円を投資信託で運用しようと考えています。
長期的な利益を狙う為には何年くらいのスパンで考えたらよいでしょうか?
<回答>

いただいたご質問に2つのポイントでご説明しようと思います。

1つ目は、長期的な利益を狙うために、という点です。これは両極端の例で考えるのがわかりやすいと思います。例えば、成長が期待される新興国の株式市場全体に投資する株式ファンドに、1か月だけ投資する場合と、10年投資する場合、ではどのような違いがあるでしょう。EPS(1株当り利益)の成長率は年率15%として考えてみましょう。株価とEPSとPERの間には、

株価=EPS×PER

の関係が成り立ちますので、

株価上昇率=(1+EPS変化率)×(1+PER変化率)-1

ということになります。

年率15%のEPS成長ができるとしても、わずか1か月の間に期待できるのはたった1.17%です。すると、1か月の間にPERが変化しなければ、

(1+1.17%)×(1+0%)-1=1.17%

で、株価は1.17%しか上昇しないことになります。せっかく利益成長率が15%もあるのに、わずか1か月ではその恩恵をほとんど受けることができません。むしろ、利益が全く伸びていなくてもPERが30%上昇すれば株価は30%上がりますので、単に人気が出て資金が集まって割高になっているだけの銘柄に株価上昇率で負けてしまいます。

ところが、年率15%の成長が10年間続くとEPS成長率は304.56%になります。PERがたとえ全く上がらなくても株価は、

(1+304.56%)×(1+0%)-1=304.56%

と300%以上上昇します。ちなみに20年では1,537%、30年ですと6,521%になります。長期的に期待できるリターンというのはこういうもので、配当収益も1か月ではほとんど期待できませんが、10年、20年、30年と積み上げていけば大変大きなリターンとなります。

多くの人は短期間の株価推移を見て、利益成長率が高いにも関わらずPERの上昇率の低い割高になっていない銘柄よりも、利益成長率が低いにも関わらずPERの上昇率が高く割高になっている銘柄のほうが「良い銘柄」だと考えがちです。

もし、こうした長期的なリターンを狙うのであれば、その期間は長ければ長いほど良いということになります。

2つ目は、データの信頼性の話で、過去のデータから将来を予測する場合、長期の過去データで長期の将来を考えることはできても、長期の過去データから短期の将来を考えたり、短期の過去データから長期の将来を考えることはできません。過去10年の平均気温で今後10年の平均気温を考えることはできても、過去10年の平均気温で今後3日の平均気温を考えたり、過去3日の平均気温で今後10年の平均気温を考えることはできないというのと同じです。

期間は可能な限り長く考えるべきだと思います。私自身は、投資を始めて20年近くになりますが、これまでに売却したものはほとんどありません。売却したものは、①資金が必要になった、②投資したときと見立てや考え方が変わった、③他にもっと良い物が見つかった、のいずれかに該当した場合だけです。今後も売却の予定はなく、もし退職後にたくさん年金をいただくことができて、それだけで充分暮らしていけるようなら(そんなことはただの夢物語で、あり得ない話ですが)、売却せずにそのまま子供に相続するつもりです。


コラム執筆:ジョン太郎

金融業界の様々な分野で経験を積んできた現役金融マン。投資・運用・金融・経済など、お金にまつわるトピックをわかりやすく解説しているブログ「ジョン太郎とヴィヴィ子のお金の話」は人気を博し、各種のサイトで紹介されている。著書に「外資系金融マンがわが子に教えたい「お金」と「投資」の本当の話」、「ど素人がはじめる投資信託の本」、「ど素人が読める決算書の本」がある。

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