マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
株式会社インベストラストの福永博之です。先週から信用取引についてお話をしていますが、前回、「来年の制度改正によって、信用取引を活用した個別株の売買が、保証金の範囲内であれば何度でも行え、現金担保のみの場合、実現利益が出ている場合では、担保に差し入れた保証金の目減りを気にする必要がなくなる」とお話ししましたが、このように制度改正がおこなわれますと、先物取引と信用取引では何がどのように違うのかと考えてしまいますね。また、どちらを選べばよいのかという疑問も湧いてきます。
そこで、今回は保証金とレバレッジに関して、先物取引と信用取引の相違点や、信用取引でどのような戦略を立てればよいかについて考えていきたいと思います。
ではまず信用取引の保証金と先物の証拠金について比較してみましょう。たとえば、50万円で売買可能な金額を見てみますと、信用取引の場合150万円までとなる一方で、先物では11月12日現在の証拠金額が30万円ですので、50万円あれば先物ラージを1枚取引できることになります。
また、11月12日現在の225先物12月限の終値が8,690円ですので、1枚当たりの売買金額は8,690円×1,000倍×1枚=869万円となります。
したがって、50万円で投資した場合、1回あたりの最大売買代金が大きいのが先物ラージ869万円で、次が信用取引の150万円先物の売買代金になるわけですが、実はこの1回あたりの最大売買代金というのがポイントなのです。
これまでは、制限があったために信用取引と先物ラージとの間に売買代金や売買可能な回数に差が生じたわけですが、今回の信用取引の制度改正によって資金拘束の制限がなくなるため、同じ保証金や証拠金額で理論的には信用取引も先物取引も同じ売買代金になってしまうことが起こったり、あるいは信用取引の売買代金が先物取引の売買代金を上回ったりすることも可能になるのです。
では、このような利点を生かしてどのように戦略を組めばよいのでしょうか?そこで、次のポイントに挙げられるのが売買回数を増やすことによる効果です。と言っても、1回あたりに買える株数は決まっているわけですから、先物の売買代金を超えるほどの取引を行おうとした場合、金額によっては売買の回数を相当増やさなければならないかもしれません。
たとえば、先物取引で5万円の利益を上げたとしましょう。この利益額と同じだけの利益を信用取引であげようとした場合、1株1,000円の銘柄を1,000株買って株価が50円上昇するまで待たなければならなかったわけですが、信用取引の制度改正によって理論上、上下10円の値動きが最低5回以上あれば5万円の利益をあげる可能性が出てくると考えられるわけです。(約定できない場合もありますので、5回で利益が出ない可能性もあります)
したがってこの事例のように、株価が値上がりしなくても、値動きがあるだけで、収益チャンスにすることができるようになると考えられるわけです。
これは、決して回転売買を助長したり、推奨したりしようとしているものではありません。制度が変更になったことで、投資家の売買はおのずとこうした方向に流れると思われますし、この動きを理解していなければ、現物株取引への影響も読めないということになってしまうのです。
ですから、信用取引を行うか、また信用取引の制度が変わったあと、回転売買を行うかどうかは別としても、こうした動きを投資家としてしっかり頭に入れておかなければならないと私は考えますが、皆さんはどう思われるでしょうか。
次回はその回転売買についてデイトレードをベースに考えてみたいと思います。
コラム執筆:福永 博之
株式会社インベストラスト代表取締役。IFTA国際検定テクニカルアナリスト。ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ 株式・資産形成講座 講師。勧角証券(現みずほインベスターズ証券)、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)、同証券経済研究所チーフストラテジストを経て、現職。現在、投資教育サイト《アイトラスト》の総監修を務める。ラジオNIKKEI、テレビ東京、TOKYO MXテレビ、CS日テレなどの株式関連番組にレギュラー出演。マネー雑誌の連載のほか、執筆多数。最新刊『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った「株」チャートらくらく航海術』(ダイヤモンド社刊)では、チャート分析の基本中の基本、ローソク足に徹底的にこだわって騰がる株を見つける方法をわかりやすく解説し、好評を博している。
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