マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
こんにちは。晋陽FPオフィス代表のカン・チュンドです。
ETFは特定の指数との連動を目指す金融商品です。日経平均株価やS&P500など、ETFの骨格を成す「指数」がなければ、ETFはそもそも存在できません。しかし、指数のほうはETFが登場するずっと前から存在していました。指数は元々、市場全体の動向を示すバロメーターの役割を担っていたのです。
ところで、指数を日々算出し管理しているのは「指数提供会社」というところです。たとえば、日経平均株価(指数)を算出するのは日本経済新聞社、またMSCI指数を提供しているのはモルガンスタンレー・キャピタルインターナショナル社です。株価指数の歴史を紐解くと、1884年にチャールズ・ダウ氏が11の株価を寄せ集め、その平均を算出したのが「指数」の始まりとされています(当時は鉄道株のみだった)。ダウ氏は1896年に指数をDow Jones Industrial Averageと改名し、これが今日の「ダウ平均」の発祥とされています。指数提供会社は長らく、市場平均という名の物差しをマーケットに提供してきたのです。
ところが、ETFという金融ツールが登場し、状況は一変しました。一例を挙げますと、時価総額で世界最大の「スパイダーS&P500ETF」(SPY)は、S&P500という指数を用いて運用を行っていますが、実はこの際、運用会社は指数提供会社に対して「ライセンス料」を支払う必要があります。ETFマーケットの隆盛に伴い、指数は付加価値を持った「商品」となりました。そして、指数提供会社のビジネスも驚異的な発展を遂げたのです。ETF運用会社ブラックロックのレポート「ETP Landscape」によりますと、2011年4月末現在、ETFに指数を提供する指数提供会社「上位7社」は、1. MSCI 25.5%、2. S&P 23.%、3. Barclays Capital 8.1%、4. STOXX 7.2%、5. Russell 6.0%、6. FTSE 4.3%、7. Dow Jones 3.8%となっています(実は今年の7月に、スタンダード&プアーズとダウジョーンズが合併会社「S&Pダウジョーンズ・インディシーズ」を発足させ、現在はETFに指数を提供するもっとも大きな指数提供会社となっています)。ETFマーケットが急成長を遂げ、指数提供ビジネスも拡大の一途を辿った結果、ETFの運用会社と指数提供会社の間に確執も生じ始めています。
今年の10月に、バンガード社がETFを含むインデックス・ファンド22本の使用指数を変更すると発表しました。一例を挙げますと、これまでMSCI社のエマージング・マーケット指数を使用していた「バンガード・MSCIエマージングマーケッツETF」(VWO)が、使用指数をFTSEエマージング指数に変更することになったのです(実際の移行は数ヶ月をかけて行われる模様・・)。バンガード社は「低コスト」のETFがウリなのですが、今回の指数変更はMSCI社のライセンス料が割高になったことが一因と言われています。バンガード社はライセンス料の支払いを安定させるため、FTSE社とは長期契約を結んだ模様です。今後もETF運用会社と指数提供会社の主導権争いが続きそうですね。
コラム執筆:カン・チュンド
晋陽FPオフィス代表
2000年にFP事務所を開業以来、資産運用に特化したセミナー、コンサルティング業務を手がける。
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