第14回 来年以降の制度改正「投資口買入れ消却のメリットとその課題」【J-REIT投資の考え方】

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第14回 来年以降の制度改正「投資口買入れ消却のメリットとその課題」【J-REIT投資の考え方】

J-REITの価格は、前回の連載(11月1日)以降やや弱含みで推移しています。東証REIT指数は11月2日に年初来高値1,065.16ポイントを付けましたが、その後下落に転じ13日には1,023.17ポイントになりました。ただし東証REIT指数は、9月25日から続く1,000ポイント以上の水準は維持していることから底堅い値動きを続けていると見るべきでしょう。

このような市況の中、14日に物流施設に特化して投資するGLP投資法人(証券コード3281、以下GLPJ)が12月21日に新規上場することが公表されました。大和ハウスリート投資法人(証券コード3263、以下DHI)は11月28日に上場予定ですので、2ヶ月連続での新規上場となります。DHIとGLPJの資金調達額はそれぞれ540億円、1,100億円を見込んでいますが、GLPJの調達額は公募だけでもJ-REITの新規上場時としてはユナイテッド・アーバン投資法人(証券コード8960)と合併した日本コマーシャル投資法人に次ぐ規模(図表参照)です。従って当面J-REIT市場は、需給面から見てやや弱含む可能性が高くなっていると考えられます。

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さて今回は、来年以降導入が予定されている制度改正の一つである投資口の買入消却について記載していきます。この制度は、株式市場での自社株買い及び消却という株主に対する利益還元と同様のものです。

この制度導入による最大のメリットは、価格の低迷が続く銘柄であっても価格が上昇する機会となることです。買入消却によって投資口数は減少することになりますので、1口あたり分配金を大幅に増加させることが可能となるためです。いままでのJ-REITですと1口あたり分配金を増加させるためには基本的に、(1)賃貸収益の改善、(2)金融コストの減少、(3)物件取得による賃貸収益の増加、いずれかの実現が必要となります。しかし価格が低迷している銘柄は、このいずれの実現性も低い場合が多くなっています。つまり価格低迷銘柄は、市場全体の価格が上昇する局面とならない限り価格が反転する要素が少ないのです。

来年以降、導入が予定されている制度の中でこの投資口買入消却制度は1口あたり分配金の増加に最も寄与するものと考えられます。しかし原則として内部留保が認められていないJ-REITは、一般企業と異なり投資口買入のための資金が少ないという課題があります。
J-REITの資金的な内部留保は、実質的に会計上の費用である減価償却費で占められています。しかしこの資金的な内部留保ですら保有物件の修繕などの費用や物件取得時の付帯費用(※)に充てられるため、なかなか増加しないという側面があるのです。
従って大幅な投資口の買入消却は難しいという問題は、この制度導入後も残ることになりそうです。この制度がより機能するためには、物件売却益が発生した場合に投資口の買入れ消却に充当することを前提に内部留保が可能となるという追加的な対策が必要と考えられます。

なお次回連載では、来年度導入予定の制度改正のうち「投資主割当増資」及び「海外不動産投資の制限緩和」についてメリットと課題を記載する予定です。

※:物件取得時に発生する仲介料や物件取得諸税(不動産取得税、登録免許税)などの費用のこと。

コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介

<本内容は、筆者の見解でありアイビー総研株式会社及びJAPAN-REIT.COMを代表したものではありません。個別銘柄に関する記載がある場合は、その銘柄の情報提供を目的としており、お取引の推奨及び勧誘を行うものではありません。また執筆時点の情報を基に記載しております。>

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